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4件
Daddy Long Legs
著者 勝田文(著者)
舞台は昭和初期。身寄りのないいつきに思いがけない援助の話が舞い込んだ。条件は月に一度手紙を書くこと…。「あしながおじさん」を原作にお茶目な恋を描く表題作他3編収録! 【同時収録】天馬/パーラー/シンガポールの月
Daddy Long Legs
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Daddy Long Legs 原作:J・ウェブスター「あしながおじさん」 (クイーンズコミックス)
2006/12/19 21:14
最後には涙がぽろり。爽やかな感動をくれました。
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:朝ぼらけ - この投稿者のレビュー一覧を見る
年末恒例の『このマンガがすごい!』や他所でのランキングの結果がどうであれ、私のなかで今年NO.1は、このマンガです。これだけは誰になんと言われようとも譲れません。
4編の作品が収録されており、それぞれに味がありますが、なんと言ってもダントツに良かったのは表題作です。なんて幸せな気持ちにさせてくれる作品なのでしょうか。読後もしばらく余韻に浸ってしまいました。
タイトルから推測がつく通り、ジーン・ウェブスターの名作『あしながおじさん』を原作とした作品で、舞台設定を昭和初期の日本に変えて描かれています。
孤児院で育った少女”いつき”に思いがけず援助の手が差し伸べられ、女学校に進学できることに。そのための条件は、月に一度手紙を書くこと。顔も分からない謎の親切な賛助員”あしながおじさん”に想いを馳せながら女学校生活を送る少女の物語です。
素直で生き生きとした、いつきの性格をそのまま写し取ったような手紙の可愛らしいこと。いつきの手紙に対する、あしながおじさんの反応も楽しく、時にくすっと笑ってしまうような場面も。シリアスの中に散りばめられたちょっとしたギャグもナイスです。そして、行間ならぬ”コマ間”を楽しめるような作品です。
そして、最後の手紙の最後の追伸の一文が最高なのです。そこで感動も最高潮。心が幸福感でいっぱいになり、名前の付けようの無い感動の涙が思わずぽろりと落ちました。
実は、おおまかなあらすじを知っているだけで、本来の『あしながおじさん』を読んだことがありませんでしたが、このマンガに出会い、何が何でも原作を読んでみたくなったことは言うまでもありません。
絵柄は親しみを持てる素朴な感じで、個性と味があります。羽海野チカの『ハチミツとクローバー』の1巻を初めて開いた時の感覚に似て、どこか懐かしいような雰囲気も漂っています。
どうか、名作をただマンガにしただけでしょ?なんて思わないでほしいです。出会えてよかったと心から思える素晴らしい作品です。
Daddy Long Legs 原作:J・ウェブスター「あしながおじさん」 (クイーンズコミックス)
2006/10/26 00:07
ロマンチック・ノスタルジー
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトウジョン - この投稿者のレビュー一覧を見る
あしながおじさんIN昭和初期日本。
それがこれほどハマるものだとは、一体誰が想像しただろう?
主人公の「樹」は孤児院育ち。
天真爛漫、元気いっぱいな一方で、文学を好み、自ら文章を書く夢ももっている。ふとしたきっかけで彼女の作文を読み、その才能を買った青年実業家「千博」は樹のパトロンとなり、自らの後見で樹を女学校へ進学させる。
交換条件はただひとつ、月に一度自分宛の手紙を出すこと・・・。
「あしながおじさん」とは、これほどロマンチックな物語だっただろうか?
少女から大人の女性へと成長するヒロインの姿や、大人の男として彼女の成長を見守るおじさんのジレンマ。
幼い頃に読んだ時はなんとも思わなかったシチュエーションも、大人になってから読み返すと全く違うもののように感じられた。
それはオリジナルストーリーそのものの力というのは勿論だけれども、作者の「漫画」としての画力との相乗効果にもよるものだと思う。
丁寧に書き込まれた小物やアンティークな着物柄など、上品な愛らしさが全体に散りばめられている。
絵柄も丁寧で端整だし、特徴的なのは一枚のデザインイラストのような表紙絵や口絵。
動きの止まったかのような絵柄もまったり感を醸し出していて、世界観をよりいっそう演出している。
勿論昭和初期という時代設定が全てのポイントだというのは言うまでも無いことだろう。
また作者の笑いのセンスによって、過剰に甘ったるくなりそうな雰囲気が適度に息抜きされているが、これによって男女を問わずに読める作品に仕上がったと思う。
絶妙なバランスで「古典少女小説」かつ「恋愛漫画」の両方たりえている、そんな作品だ。
さらに同時収録は大人の女性を主役にしたオリジナルストーリーで、
どれも一風変わった雰囲気のものばかり。
ほのぼのなだけかと見せかけて、「三十路半ばヒロイン」や「失業ヒロイン」等、設定だけをみれば意外とシュール。
かといって彼女たちは自分を特別不幸だと思っているわけでもなく、のほほんとそれなりに日々を満喫していて・・・というように、
どこか共感できるキャラクターたち。
作者の魅力は、老いも若きも、男も女も平等なスタンスで生きているような独特のキャラクター造形だと思っている。
「Daddy Long Legs」は、それにストーリー性をプラスしてみせた作品だ。現時点での代表作といっていいと思う。
勝田文を読んだことのない人、
昔読んだことはあるけれどいまひとつ乗れなかった人、
どちらの人にもお勧めしたい良作である。
Daddy Long Legs 原作:J・ウェブスター「あしながおじさん」 (クイーンズコミックス)
2015/05/16 23:32
思わず小説も買い直しました。
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:薫 - この投稿者のレビュー一覧を見る
100年前の小説が原作ということで、ネタバレは恐れずに。
ーーーーー
子どもの頃読んだあしながおじさん。
歳月は流れ、お嬢様女子校や寮生活ものが異常に好きな自分をはっきりと自覚した私。
このマンガを読んで、いかに「あしながおじさん」がそうした嗜好の根っこに
なっていたかを思い出させられました。
今も昔も本を読むのが遅く、読み返すということをほとんどしない私が、夢中になって何度も読み返した小説でした。
さて、きらきら大正ロマン風リメイクももちろんこの作品の白眉ですが、
私がときめいたアレンジは「あしながおじさん」こと千博ぼっちゃまの視点も交えてストーリーが進むこと。
じゃりン子だった20ン年前の私は「若いったってジャービィぼっちゃまもおっさんじゃないのよ、フン」と思ったものでしたが、いえいえ全く、勝田文が気づかせてくれた千博ぼっちゃまの大人げのなさといったら!
おじさまただでさえロリコンでいらっしゃるのに!
なんてかわいらしい!
小説「あしながおじさん」と「続…」も買い直し、
さらにそれだけでは口寂しくて勝田文さんの著作を片っ端から購入してしまいました。