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大人のための議論作法
著者 鷲田小弥太 (著)
議論とは言葉のぶつかり合いである。国家間の戦争から企業のビジネス、夫婦の諍いまで、全ては言葉の戦いといえる。では、議論で相手をねじ伏せれば良いのか。そうではない。勝ち負け...
大人のための議論作法
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商品説明
議論とは言葉のぶつかり合いである。国家間の戦争から企業のビジネス、夫婦の諍いまで、全ては言葉の戦いといえる。では、議論で相手をねじ伏せれば良いのか。そうではない。勝ち負けよりも大切な「議論の作法」があるのだ。本書では、議論や論争のあり方を、哲人たちや政治闘争史から学ぼうとする。雄弁とはまことにやっかいなのである。議論に勝てば相手の嫉妬や怨嗟ばかりを受けることになるからだ。ソクラテス、キケロなど古代の哲人たちの最期をみればわかる。その上で、人間通の議論術を具体的にアドバイスする。正しさだけを追求するのが議論ではないのだ。さらに、「政治家になる必須条件は雄弁術であった」「伊藤博文に学ぶ、戦略思考と言葉の力」「マルクス主義はなぜ論争に強かったか」などを論考。田中康夫知事や小泉首相の議論術についても言及している。生きた歴史の中に、単なるノウハウを超えた人間通の智恵が発見できる。賢い大人の知の流儀。
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紙の本
バカほど論争は強い
2003/01/22 23:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ヲナキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「TVタックル」という討論番組での一幕。俎上に上げられた代議士連中を擁護するコメンテーターに反論して、経済アナリストの森永卓郎氏がこんなことを言っていた。「あいつらなんてただ運が良くて声がデカいだけじゃないか!」と。よくぞ言ってくれました。まさしくそのとおりだとは思いませんか。成功なんて所詮、天佑とエゴの大きさで決まるのだ。努力の差が結果を左右するわけではない。偶然のインセンティヴさえあれば誰だって一所懸命頑張るものなのだ。その最初の動機付けを与えるものこそが運なのであって、幻冬舎の某社長さんが同社の一連のビッグヒットについて朝日新聞のインタビューで答えていたように、「これほどの努力を人は運という」なんて言い草はカッコつけすぎだと思う。勝者の結果論は正論になるのだ。それから、声のデカさというのは、(説得力如何にかかわらず)発言の押しの強さであり、まさしくエゴの強さともいえる。自分の論理を信じて疑わない厚かましさ。彼らにとってオルタナティヴなどありえないのだ。思考の選択肢が極めて限られているから持論が磐石なのである。こういうタイプは論争すると手強い相手になる。
こんなことをうだうだと考えていたときにこの本と出会った。決してディベートのためのハウトゥ書ではないので、タイトルに勘違いして購入を検討されている方は誤解のなきよう。ボクの戯言を後押ししてくれるような嬉しい内容の本だった。「勝者の結果論が正論になる」という自説は、「勝てば正しい」とするマルクス主義の系譜を、スターリンや毛沢東による粛清を例に挙げながらレクチャーする最終章に見出すことができる。(ちなみにマルクス主義はなぜ議論に強いのかを解説したこの章はとても平明で面白かった)。声のデカさ云々については、第三章で書かれている「バカを言葉で納得させる方法はない」(p152)という定義どおり。こちらのロジックがどれだけ明快かつ正当であろうとも、相手がそれを理解できない頑固な輩であれば不毛な議論に終わる。また、相手がどんなにバカげた言葉を吐こうと、それが執拗に繰り返されれば真実味を帯びかねないのである。
これまでの人生で出会ったイヤな奴らを頭に思い浮かべながら、怒りにかまけてキーを叩いてきたのでやや脱線気味の書評になってしまったが、ボクに限らず対人関係において辛酸を舐めてきた人はたくさんいるはずだ。当然、「議論」というものにも少なからず興味があると思う。そんな人はこの本を読んで「大人の議論作法」の心得を学んでおきたい。著者がフィーチャーする古今東西の政治家たちの事例を参考にすることで、よりスマートな自分流のディベート術を模索していくことにしよう。