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電子書籍
同日同刻 ――太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日
著者 山田風太郎 (著)
太平洋戦争中、人々は何を考えどう行動していたのか。敵味方の指導者、将軍、兵、民衆の姿を、著者の蒐集した膨大な資料を基に再現。開戦の日、昭和16年12月8日と終戦にいたる昭...
同日同刻 ――太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日
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同日同刻 太平洋戦争開戦の一日と終戦の十五日 (ちくま文庫)
商品説明
太平洋戦争中、人々は何を考えどう行動していたのか。敵味方の指導者、将軍、兵、民衆の姿を、著者の蒐集した膨大な資料を基に再現。開戦の日、昭和16年12月8日と終戦にいたる昭和20年8月1日から15日までの、同日同刻の記録が戦争に翻弄された人間の狂気、悲劇、愚かしさを焙り出す。
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紙の本
真珠湾が戦場となった日、ドイツ軍はモスクワ戦線からの退却を始めた、と並べてみること
2006/12/05 17:16
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年も12月8日が近付いた。あの開戦の日と、広島への原爆投下から天皇の放送があった8月15日までの10日余りは、少なくとも日本人にとっては語っても語りつくせない日々であろう。作者山田風太郎は、その日々を、真実ないし真実と思われる記述を併記することで、できごとをより立体的に浮かび上がらせようとした。
真珠湾が戦場となった日、ドイツ軍はモスクワ戦線からの退却を始めた、と並べてみること、終戦の前後に東京で学生が何を考え、アメリカではどんな言葉が流れていたか、と並べてみることは、確かにできごとをより立体的に見ることを助けてくれる。できる限り様々な記録を知ることは無駄ではないであろう。
それでも、どんな文章を、どこからどれだけ選んできたか、ということに作者の立場が否応なしににじみ出している。引用文を繫いだ言葉の中に、どうしても消せない、山田風太郎自身の「意見」が顔を出している。広島へ落とされた原子爆弾を「それは・・自由の誕生を象徴しているかのようであった」と書いたアメリカ人の文章の後に、「アメリカ人のいう「人間の自由の誕生」の神像の足下に二十万人の日本人の屍体が積まれた。」と書かずにはいられなかった作者。そして、同じ日本人にでも一つの出来事に喜んだり、悲しんだり、さまざまなものがあったことを書かずにはいられなかった作者。記録を集めることで現実感、立体感は高まるが、作者の思い入れで集められたことも忘れてはならないと思う。
アメリカの山田風太郎、ドイツの山田風太郎、中国の山田風太郎がいたならば、少し異なる記録を集めて、少し異なる「同日同刻」をまとめたことであろう。そういったものがあるのならば、是非それらを並べて読みたい。なぜかそんなことまで考えた。できるだけ、思い込みを忘れて読みたい。一人の日本人が集めた資料からだけでも、これだけのいろいろな様相がみえるのだから。