紙の本
そのコーヒー豆は、いつ焙煎したものか
2009/02/10 00:08
9人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:mikimaru - この投稿者のレビュー一覧を見る
珈琲は好きだがもっぱら自宅で飲んでいる。このところ流行りのいわゆるカフェに寄ることもないほどだから、専門店で楽しむことはまったくない。そのため自家焙煎珈琲に御三家がいることも、それら有名店のこともまったく知らずに読んだが、かなり楽しめた。
変人という薄っぺらい言葉で表してしまうには多少の語弊があるかもしれないが、世間的にはその言葉が近い3人の男性が登場。焙煎と抽出にとり憑かれ、ほかのことには目もくれない。
吉祥寺もかの標(しめぎ)氏にいたっては、客が飲み残せばなぜ残したのかと心が落ちつかず、気晴らしのため奥さんが企画した欧州旅行では観光地に目もくれずカフェめぐり。
生豆を適切な温度や湿度で管理し、熟成させる「エイジング」をきわめた銀座ランブルの関口氏。世界的なマーケットでは、新しい(若い)豆と新鮮さこそが命という考え方が現在もまだ主流と思うが、自宅を改装しエイジングルームを作って、何年でも豆を寝かせつづけた。
そして、台東区でかつて山谷と呼ばれていた地域にあるカフェ・バッハの田口氏。焙煎したての新鮮な豆にこだわり、焙煎してから日が経った豆はドリップしても湯でふくらまず逆に陥没すると、現在の珈琲ファンならまだしも当時の一般人が知らないこと、焙煎業者や同業者に嫌われることを声高に言った。彼は自分の言を守るため焙煎の道へと進んでいくことになる。
なぜかつて「アメリカン」が流行ったか。濃いめのヨーロッパ風が隅に追いやられた理由など、ちょっとした雑学や世界経済、流通の話としても楽しめる。
珈琲は、豆が挽きたてかどうかより、焙煎が決め手とのことらしい。これまでは挽いた日時のことしか念頭になかった。注文してから焙煎してくれる店で買うことも多いし、その店は焙煎日時をシールで教えてくれていたが、それには大きな意味があったのだと、いまさらながら気づいた。
これからは豆の買い置きを少し減らし、こまめに買い足していこうかと思う。
紙の本
嶋中労氏によるコーヒーに人生を捧げた愛すべき頑固者を描いた興味深い一冊です!
2020/10/05 09:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、フリージャーナリストとして活躍され、『コーヒーの鬼がゆく―吉祥寺「もか」遺聞』などをはじめ、コーヒーに関する著作を発表されている嶋中労氏の作品です。同書は、第一級の味覚を持つものだけがその価値を認めうる、めくるめく自家焙煎コーヒーの世界を描いたものです。著者によれば、そこには名だたる「御三家」がいるということです。現役最高齢、銀座ランブルの関口、業界きっての論客、南千住バッハの田口、品格あるコーヒーの求道者、吉祥寺もかの標です。コーヒーに人生を捧げた愛すべき頑固者、自家焙煎のカリスマがカップに注ぐ夢と情熱を描いたコーヒー好きにはたまらない一冊です。
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夫が夢中で読んでいたので、読んでみました。
登場人物たちの珈琲への貪欲な探究心や、
多くの時間や情熱を捧げてきたであろう姿が男前です。
そして今まで知らなかった珈琲の知識も少し身に付き、
なかなか面白い本でした。
ただ筆者の文章力が少々稚拙だと感じたことは否めませんが...
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日本人は、書でも花でもお茶でも何でも道を求めていく。
そして書道、華道、茶道などが生まれる。
本書で取り上げられている3人は、独自に珈琲道を求め生きていた人たちではないか。
豆の選び方、焙煎の仕方、ドリップの仕方などに一度、一秒、一グラムでの完璧を求めていく。
珈琲は焙煎だとは何度も聞いていた。しかし、そんなに違いは無いだろうと思っていた。
本書を読んで、今まで飲んでいた珈琲はなんだったのか疑問になった。
本当に美味しい珈琲を飲んでみたいと思う。
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元々珈琲の飲み過ぎで、一旦胃を壊した経験から、
珈琲離れをしてたわけですが、この本で、飲み直してみたら、
段々はまってしまいまいました。
珈琲もトチ狂った「人」の方向から書かれると、新たな興味が湧きます。
残念ながら、この本で紹介されているうちのお一人は鬼籍に入ってしまい、
その方の珈琲を飲むことは出来ませんが、
そういう「伝説」が残ることも良いことだなあと思います。
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コーヒーに人生の全てをかけた男たちのドキュメント。日本独自のコーヒー文化になるほど、なるほどと納得の1冊でした。 でもこの本は決してコーヒーの薀蓄本ではありません!男たちの生き方はストイックな剣豪小説を読んでいるようでありました。 そして、もちろん激しくコーヒー(自家焙煎ネルドリップ限定!)が飲みたくなるのであります。
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コーヒーうんちくを求めて買った本ですが、期待に沿う内容でした。
ブルーマウンテンは、最高級豆ってことになってますが、それは作られたイメージの可能性があって、他にも安くておいしい豆はたくさんあるそうです。
なにより、新鮮な豆で淹れたコーヒーを飲んでみたいと、切に思わされる本。コーヒー好きな人なら読んでみる価値ありかも。
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これは本当に「憑かれた」人たちの話だ。日本人は武士道精神なのか、茶道や華道の歴史があるためか、何事にも「XX道」を目指して徹底的にこだわる、そして極める文化がある。
これが日本の素晴らしさだと思う。
そしてコーヒーに人生を捧げ、そして極めた(ただし本人たちは道半ばと謙遜する)人たちの話だ。
その中でも特に興味深いのは生豆を自宅の一室を改造したエイジングルームで10年以上寝かせてから焙煎するランブルの店主。そしてアメリカのコーヒーチェーンの連中に「どうだ!」とばかり飲ませたら「腐っている」とバッサリ言われた逸話。
私はエイジングしたコーヒーは1回だけ飲んだかもしれない。今思えばあれだ、と思いつく。決して高温ではないお湯でゆっくりと淹れたコーヒーはどろりと香ばしさ甘く、煮詰めたほろにがさだった。
さて、そんなコーヒーはどうも日本だけの文化のようだ。
そして最後に登場する標氏。お湯の温度1度と豆の量1グラムにこだわる。「コーヒーの最後は”品格”のあるなしで決まってしまう」の一言。
日本に芽生えて根ざした特別のコーヒー文化は、スタバを代表とするアメリカのチェーン店が盛況な現在、どこまで絶やさずに残って行くのか注目だ。
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タイトルにある通り、コーヒーに憑かれた、むしろ狂った男たちの半生が書かれた一冊。
戦後から平成までの時代に喫茶店からエスプレッソのチェーンが台頭する時代に生きて亡くなっていったコーヒー狂のしつこすぎるこだわりや、そのよいコーヒーを世の中に知ってもらいたい想いが、感じられます。
コーヒー好きにもオススメですが、本当の仕事人が何人も出てきます。そんな仕事人たちを見てみたい人におすすめです。
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コーヒーを飲み始めたのは、中学生の頃だ。自分の家のすぐそばに、喫茶店があり、そこに通った。父親のコーヒーチケットがあり、それを使っていいと言われて、飲んだ。真っ黒な飲み物を飲み干し、苦いママのブラックで飲むことが、大人になった気がした。そんな背伸びをコーヒーが教えてくれた。
コーヒーを極める 3人の男たち。カフェドランブル 関口一郎。南千住 カフェバッハ 田口護。吉祥寺 もか 標交紀。それぞれが、コーヒーを極める。日本のコーヒーの達人たち。
「絶対音感があれば、絶対味感もあるはずだ。」とコーヒーの味と香りを追求する。
計量化、数値化。勘を言葉に置き換える作業をする。
標交紀は、「それは 言葉や数字の裏に隠されている。努力次第でそれが徐々に明かされる。
その隠された部分も精確に言葉で表現しきってみたい。」という。コーヒーに憑かれ、呑み込まれ、狂うのである。道を極める変人たちによって、コーヒーが豊かになる。
田口護は言う➀よいコーヒーとは「欠点豆」がハンドピックによって取り除かれている。②煎りむらや芯残りのない 適正な焙煎がなされている。③焙煎したての新鮮なもの。とまずは、基本をおさえる。南千住のバッハに行き、田口護にあって、コーヒーについて話を伺った。実に、嬉しそうにコーヒーの話をするのである。私は、雲南で、コーヒーを作ろうとして、田口護の「コーヒー大全」をバイブルにしていた。コーヒー豆の種類と焙煎度について、実に詳しく書いてあり参考になった。
実際コーヒーを作りマーケティングすると、日本人は、酸味が好きだが、中国人は酸味を好まず、苦味を好む。それは、焙煎によって表現できる。
「コーヒーも最後の最後は 品格のあるなしで決まってしまう。」「必ず 匂い立つような気品が感じられる。」「コーヒーのうまいまずいの決め手は 焙煎。」「うまいまずいではなく、良い悪いコーヒーがある。」という。コーヒーを極めながら、人間を磨いていく。日本人である。
辻嘉一は「味覚三昧」で、 「コーヒーは濾すものであり、煮るものではなし。」という。
香りが豊か ボディのしっかりした ガツンと刺激のあるコーヒー。
豊かな香り 豊かな酸味 豊かなボディ。わびさびた風趣を感じさせる渋好みのコーヒー。甘みがほんのりと出てくる温度帯、すなわち人肌のものをなめるように味わい、言い知れぬ余情まで味わう。
香りの高い美味しいコーヒーを飲むことが、至福の時間を過ごすことができる。
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コーヒーを極めようとしている皆さんを尊敬している。その方たちのおかげで少なくない人々の生活に潤いをもたらしているのは間違いない。自分もコーヒーは大好きだ。
その自分が、失礼ながら、ちょっと得るものがないなあ、と思いながら読んでいた。その筋では伝説的な人々だけど、これらの人々の人生や、主義主張、趣味を知ったところで・・・。
でも、タイトルが『コーヒーに憑かれた男たち』なのだから、こうなるのは仕方がない、買った自分に責任がある、と思い直し、我慢して敬意も忘れず最後まで読んだ。そんな本。
この本に出てくる偉人のコーヒーを飲んでみたかった、とは心から思う。
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この本に出会った頃、ほとんどの登場人物が鬼籍に入られ、目では理解するも舌で確かめられなかったのは残念。只々今は現存するお店の味を大事に追認したく思う。