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合意情死(がふいしんぢゆう)
著者 岩井志麻子
あなたの周りにもきっといる――。小学校教員、新聞記者、地方小劇団の座長、看守。偏狭な社会でちっぽけな権力をふりまわす木っ端役人、目立たないくせにどこか鬱陶しい地味女、誠実...
合意情死(がふいしんぢゆう)
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合意情死 (角川ホラー文庫)
商品説明
あなたの周りにもきっといる――。小学校教員、新聞記者、地方小劇団の座長、看守。偏狭な社会でちっぽけな権力をふりまわす木っ端役人、目立たないくせにどこか鬱陶しい地味女、誠実に見えて肝心なところで無神経な好青年……。思惑と欲望がうずまく小市民たちの葛藤を、ユーモアと恐怖のなかに浮き彫りにした、名手による傑作短篇集。「華美粉飾」「合意情死」「自動幻画」「巡行線路」「有情答語」を収録。
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紙の本
それにしてもですね、こういう馬鹿、というか腐ったような男ばかりになっちゃったんですねえ、この世の中。でも、そんな男は戦前にもたくさんいたんですね・・・
2006/01/13 21:43
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「岡山を舞台に、自分の心の内を見ることの出来ない男たちが引き起こす事件の数々」情痴小説集。こう書くと、いかにも古臭い小説の印象ですが、それは決して間違ってはいないでしょう。5編の小説から浮かび上がってくるのは、昔も今も変わることのない泥臭い男と女の物語です。
岡山の新聞社に勤める大橋秀三、彼が追いかける心中事件の意外な行方「はでつくり 華美粉飾」、岡山第一尋常小学校の教員久吉の真面目な悪意が生む悲劇「がふいしんぢゅう 合意情死」、岡山で劇団を主宰する五十嵐正純、劇団内部の女優の対立とそれを捌く正純の心「シネマトグラフ 自動幻画」。
岡山市内を外れた街道沿いの交番に配属された青木巡査、彼のみまわり区域に過ごす一人の美女と、夫の心を知った妻の怒り「みまはり 巡航線路」、岡山県の孤児院に勤める良雄、子供から慕われる男の心の内「いろよきへんじ 有情答語」。
得意の岡山ものですが、今回共通するのは男たちの心の動きです。真実から目をそらし、悲劇を引き起こすことを知りながら、いかにも正義でございますと、下心を隠しながら御中進に及ぶ心の嫌らしさ、寒々しさ。それに比べて、現実を、男の心を見透かす女たちの逞しさ、いや本当の誠実さ。これが見事なばかりに描かれています。これをさらりと読める男がいるとしたら、それこそ救われないでしょう。
しかし、考えればこういった男が如何に多いことでしょう。戦争中、平気で隣人を憲兵に売った町の男。人妻に懸想して、その家族を苛める町長。愛国のことばを振りかざし、小ざかしげな子供をいたぶる教員、そういった男たちの姿は井上ひさしの小説などに詳しいものですが、そういった権力への擦り寄りは、やはり女性ではなく男性でしょう。
そういう、男の持つ心根の卑しさを、これでもかと描いた小説集とでもいったらいいのでしょうか。しかし、この手の主人公はたくさんいます。たとえば佐藤正午『ジャンプ』、東野圭吾『トキオ』、真保裕一『真実の人』。いや、最近の日本の小説は、殆どがこういった男たちの動きで占められているといっていいでしょう。特に男性作家が描く男達の姿の、甘さを通り越した愚かさ。
犯罪を起こすのも、無職の男。復縁を迫り、人を殺すのも、無職の男。事故を隠蔽するのも、一流とよばれる会社の男。それをあざ笑うかのように振舞う、あのアニータのような女性たち。もとより、世には男と女しかいないけれど、男の価値の下落の度合いのなんと大きなことでしょう。バブルはとっくに崩壊したのですが、今起きているのは男性の崩壊かもしれません。
紙の本
岩井さんのもうホームフィールド!?戦前の岡山を舞台にした連作集
2006/08/07 18:48
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:読み人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ココリコの番組で、カメラが切り替わっても
常にカメラ目線のちょっと変わった人としてブレイクしてしまった
岩井志摩子さんの連作短編集です。
小説のほうは、著者の人柄ほど変ではありません。
もう既に、著者のホームフィールドと化した
戦前の岡山を舞台にした連作短編集です。
岡山県在住の方は、岡山の地方トリヴィアで。色々楽しめるのだろうなぁ、と
想像してしまいます。
短編の全ての題が、著者が勝手に作った、4文字熟語になっています。
展開としては、気の小さな想像力のたくましい主人公が
自由奔放に生きる、人々に振り回されたり
悩んだりする様が、人どうしの性格不一致の不和なんかをもとに
丁寧に描いてあります。
こう書くと、不協和音の連続のような感じをもたれるかもしれませんが、
そんなことなくて、小説として、成立しています。
併し、読んでて思ったのは、
人どうしって、本当に上手く理解し合えるってことが、
難しいんだなぁと、いうこと。
「太陽がいっぱい」のパトリシア・ハイスミス
(最近、短編集がハードカヴァーで出ましたね)も、
人どうしは、決して理解しあうことがない、と、いうテーマの下
よく作品を書いていましたが、正にそんな感じでした。
又、日常の中でじわーっと感じられるエロティックなものを
作品の中に取り入れるのも、上手いですね、
人の性行為が人の存在そのものが出す他人にとって嫌な部分
として描かれています。
収録作品「はでつくり」「がふいしんぢゆう」「シネマトグラフ」
「みまはり」「いろよきへんじ」