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電子書籍
中国の知恵(新潮文庫)
著者 吉川幸次郎
著者の吉川博士は、かの論語を貫き流れているものは、まったき人間肯定の精神であるとして「孔子の教えがもし今の世の教えとして不適当な所があるとすれば、それが余りにも厳格な教え...
中国の知恵(新潮文庫)
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商品説明
著者の吉川博士は、かの論語を貫き流れているものは、まったき人間肯定の精神であるとして「孔子の教えがもし今の世の教えとして不適当な所があるとすれば、それが余りにも厳格な教えであるためではなくて、むしろ余りにも人間を肯定した楽観的な教えであることにある」と語っている。数多くの文献を効果的に引き、中国文学の最高権威が詩才をも発揮して描く、自由な孔子伝である。
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縦横無尽の論語解釈
2021/06/01 15:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:719h - この投稿者のレビュー一覧を見る
この、やや安直さを感じさせなくもない書名を
見ただけでは、中に何が書いてあるのか、
想像しづらい本ではないでしょうか。
それだけ余計に中身が気になって、
手にとってみました。
するとそこでは、
「私がはじめて「論語」を読んだのは、
はたちをすぎ、大学へはいって、
中国の学問をおさめるように
なってからのことである」
けれど、執筆時点では
「中国の古書のうち、一ばん私としたしいのは、
杜甫の詩と、この書物である」
と自負するに至った、この分野の碩学が、
論語から自由に抜粋したくだりについて、
卓抜な比喩と、時に大胆な現代語訳を
交えながら、縦横無尽に語っていました。
一つだけ例を引くと、著者は、
思想における孔子と孟子の相違に言及した、
朱子の注釈について、数学的な例えを
持ち出して、以下のように述べます。
「たとえていえば、孟子は、
円周率を3.14として示し、
3.1416として示す。
「論語」は、それをただπとして示す。」
「割れば無限の小数を伴うπが、
円周率の事実である。それをただπとして示す、
それが「論語」のえらいところであると、
朱子はそうしたたとえではいわないけれども、
そうした意味のことをいっている」
このあたりは、解釈の当否を論ずることは
できないながらも、表現としては充分に堪能
しました。
最後に、この書を、著者の注釈にかかる
文庫版の論語と合わせ読めば、
「「論語」をつらぬいて流れるもの、
それは要するに、ふてぶてしいまでの
人間肯定の精神、更にいいかえれば
人間の善意への信頼である」
とした、著者独特の論語に対する解釈が
深まると思います。