嫁にいたずら
著者 深草潤一 (著)
32歳の里美は、再就職でUターンした夫・祐嗣の実家で暮らしている。夫がいない間は、定年で会社を辞めた義父・哲雄と過ごす時間が多い。ある日、義父にいたずらをされるも、拒めな...
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商品説明
32歳の里美は、再就職でUターンした夫・祐嗣の実家で暮らしている。夫がいない間は、定年で会社を辞めた義父・哲雄と過ごす時間が多い。ある日、義父にいたずらをされるも、拒めなかった里美。その後も祐嗣の近くで体をまさぐってきたりする。そのうちどんどんエスカレートし……。生への執着を残しつつ嫁に接近する義父を描く書き下ろしエンターテインメント官能。
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意外にも筋の通った物語
2010/12/27 23:28
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルやあらすじからは、下心ありありの性欲旺盛な義父が嫁(息子の妻)をねちっこく弄ぶ話かと思ったが、これがなかなかどうして筋の通った味のある物語だったりする。実際、主人公たる義父(作中に『還暦』とあることから60歳と思われる)は32歳の嫁に悪戯するのだが、これに驚き、困惑し、抵抗するのは序盤まで。むしろ、失意のリストラから故郷に戻って再起を図ろうとするも上手くいかない夫のことや、幼い頃に母子家庭となったことを要因とするファザコンめいた想いなどを綴る心情描写、あるいは空閨を突かれた義父の思いがけない行動から得も言われぬ興奮を覚えていく官能描写を嫁視点で描くことで耽美な雰囲気が醸される内容である。この意味では、夫と義父との狭間で揺れる心情に重点を置きつつ、夫では得られなかった心と体の充足を義父の手練手管で知らされ、そして変わっていく嫁の話とも言える。
他にも夫の幼馴染み(作中で『四十手前のバツイチ』とあるので39歳か)が出てくるが、これが義父の家族に何かしらの影響を及ぼすスパイスの役目を果たしている。義父と仲良くしているところを見かけて嫁が軽く嫉妬したり、夫と何かしらの関係があったりと陰でフックを利かせる役どころを与えているのは上手いと思った。
そして、夫への諦念と義父との関係における大義名分を得る“事件”を経た終盤に至って官能成分が俄然増すこととなる。それまでも夫の背中を洗っている浴室で背後から弄られたり、寝静まった夫を気にしつつ階下で弄ばれたり、夫の不在時に旅行に出掛けてはさんざんイジり回され、自らも痴態を見せるほどになっているのだが、ある種の悟りにも似た自分の気持ちを晒した嫁が主体的な振る舞いを見せ始めるのである。ここには、ムスコがなかなか思い通りにならなかった義父が次第に「男」を回復していく展開もあって、体だけでない2人の想いが年齢を超えて通じ合っていく良さがあった。
最後まで貞淑な面も失わない嫁と男としてわきまえている義父という人物像が作品世界を品のあるものにしており、確かに不貞かもしれないが、この状況なら致し方無しとも思えてくる、何とも言えない静かな力を持った作品だった。まるで映画を観ているように風景がイメージできる構成や文体も良好である。