電子書籍
ささやく河―彫師伊之助捕物覚え―
著者 藤沢周平 (著)
元は凄腕の岡っ引、今は版木彫り職人の伊之助。定町回り同心石塚宗平の口説きに負けて、何者かに刺殺された島帰りの男の過去を探るはめに。綿密な捜査を進め、二十五年前の三人組押し...
ささやく河―彫師伊之助捕物覚え―
ささやく河 改版 (新潮文庫 彫師伊之助捕物覚え)
商品説明
元は凄腕の岡っ引、今は版木彫り職人の伊之助。定町回り同心石塚宗平の口説きに負けて、何者かに刺殺された島帰りの男の過去を探るはめに。綿密な捜査を進め、二十五年前の三人組押し込み強盗事件に辿りついた時、彼の前に現れたあまりにも意外な犯人と哀切極まりないその動機ー江戸を流れる河に下町の人々の息づかいを鮮やかに映し出す長編時代ミステリー。
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紙の本
シリーズ中最も濃厚な作品。完結編にも関わらず変わりない伊之助の世界が、連綿と続くであろう彫師伊之助捕物覚えの世界に思いを馳せさせる。
2010/05/02 19:00
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:toku - この投稿者のレビュー一覧を見る
元腕利きの岡っ引きで版木彫り師伊之助が活躍する「彫師伊之助捕物覚え」シリーズ第三弾。完結巻。
第二弾「漆黒の霧の中で―彫師伊之助捕物覚え」で、定廻り同心石塚の手練手管に乗せられ、嫌々ながらもかつての岡っ引きの血が騒いで、殺された男・七蔵の素性調査くらいだったらと引き受けた伊之助。
深入りする必要に迫られた七蔵殺しの事件は、大店と寺が行っていた大がかりな詐欺を暴き出す結果となり、伊之助は悪鬼のような剣客と体術で立ち向かうこととなった。
今作では、前回の事件解決で味をしめたのか、再び石塚が伊之助に白羽の矢を立てた。依頼の内容は長六殺しの調査。
実は伊之助は、行き倒れていた長六を島帰りとも知らず居候させていた。それがある日、三十両を懐に残したまま殺された。
三十両もの大金を渡した相手は、かつての奉公仲間で小間物屋の伊豆屋彦三郎。そして殺される直前の長六と会っていた。
しかし殺しの状況と、長六の死に驚いた様子は、彦三郎が犯人ではないことを示し、調べが暗礁に乗り上げていたのだ。
そして今回も石塚に、岡っ引き多三郎を手伝ってとか、仕事の合間にだとか、長六を居候させていた縁もあるだろうと、押し切られて手を貸すことになった。
この作品は、前二作で描かれなかった、事件の発端となる殺しの場面、犯人の視点を描いている。
このことが事件の真相だけでなく、犯人に隠された心の闇も明るみに出し、これまでにないもの悲しさとともに濃厚な物語を創りあげている。
「彫師伊之助捕物覚え」シリーズに共通する、一本の細い糸を丹念に辿り真相に迫っていくというスタイル、おまさとの関係、たびたび抜け出す伊之助に怒る版木屋彫藤の親方・藤蔵など、物語の魅力に変わりはなく、シリーズ中もっとも読み甲斐のある内容となっている。
しかし「彫師伊之助捕物覚え」シリーズの完結編として見た場合、不満が残る人がいると思う。
というのも、伊之助とおまさが所帯を持つとか、伊之助が版木屋藤彫に岡っ引きの過去を打ち明けるとか、読者としては気になることは描かれておらず、これまでと変わらない調子で物語が終わるからだ。
私も初めは少々物足りなく思っていたものの、やがて『伊之助はこれまでと変わりない生活を続けていくのだ』という気持ちが新たに湧いてきた。
そう思うと、『物語は完結し、終わってしまったのだ』という、物語が消え去ったような喪失感を伴う、これまでのシリーズものに感じていた余韻は感じられず、むしろ『伊之助は、まだ生き続けている』という思いが残り、連綿と続くであろう「彫師伊之助捕物覚え」の世界と、まだ見ぬ第四弾、第五弾……に思いを馳せることができた。
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「彫師伊之助捕物覚え」シリーズ
第一弾:消えた女―彫師伊之助捕物覚え
第二弾:漆黒の霧の中で―彫師伊之助捕物覚え
第三弾:ささやく河―彫師伊之助捕物覚え
電子書籍
江戸を舞台にしたハードボイルド
2015/11/30 16:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:春三番 - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本のハードボイルドも良く読みますが、なんとなくしっくりきませんでした。が、舞台が江戸になると、ハードボイルドの持つ乾いた感じが自然に感じられ、また主人公の暗い過去も、嫌みなく受け入れられる。
藤沢作品は、短編も長編もそれぞれ長所があっておもしろいですが、私は連作長編が好きです。次から次へと読みたくなって、あっという間に全シリーズ呼んでしまいました!