- 販売開始日: 2011/10/01
- 出版社: 講談社
- ISBN:978-4-06-334583-4
そらトびタマシイ(1)
著者 五十嵐大介(著)
稀代の表現者・五十嵐大介が解き放つ珠玉のエンターテインメント全6編。他の追随を許さぬ独創世界、人間の体温をも伝える描写力。“漫画”という表現が内包する無限の可能性を鮮やか...
そらトびタマシイ(1)
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商品説明
稀代の表現者・五十嵐大介が解き放つ珠玉のエンターテインメント全6編。他の追随を許さぬ独創世界、人間の体温をも伝える描写力。“漫画”という表現が内包する無限の可能性を鮮やかに提示する! 月刊「アフタヌーン」掲載の読み切り作品4編に加え、週刊「モーニング」にて発表されたオールカラー作品、そしてアフタヌーン四季賞1993年冬のコンテスト応募作品(雑誌未掲載)も収録。眩(まばゆ)き結晶、待望の登場。
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見者のヴィジョン
2003/06/02 07:09
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらねこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
まれに、普通の人には容易に伺うことのできない異界を望む才に恵まれた者がいて、さらにその中のごくごく少数の者が、自分がかいま見たヴィジョンを他者に伝えるなんらかの術をもつことがある。五十嵐大介は間違いなく、そうした、二重の意味で希少な資質に恵まれている。これは、きわめて希有な例であると思うが、そうした資質に恵まれることが果たして幸運といえるかどうかは、かなり微妙な判断が必要となりそうだ。
本書に収録されている「産土」、「熊殺し神殺し太郎の涙」、「未だ冬」、それに、表題作の「そらトびタマシイ」などの作品群は、表層的な部分に注目するのなら、古典的民俗学的世界観から題材をとっているように見える。例えば、「そらトびタマシイ」でいえば、三十五ページの、ルゥキィと合体した美代子の姿や、「熊殺し神殺し太郎の涙」太郎たちが森を彷徨するシーン(八十五ページ)や不死人形の少女が「きれいにおけしょう」するシーン(九十八ページ)などの騙し絵のようなコマなどは、イメージとしてもかなりユニークで、また、作中のストーリーの中でもかなりの比重を持つ。
こうした想像力は、ちょっと類例を思いつかない。ともかく、「想像力の質」が視覚的な要素のほうに多く偏向しており、それを「物語のチカラ」で説明づけたり適当な終始をつけようとした形跡があまり認められないあたり、一種の潔ささえ感じる。例えば、「熊殺し神殺し太郎の涙」の終わり方、などは、「物語」の観点から見たら予測される収束の方に向かわず途中で放り出したような印象が強く、多くの人に居心地の悪さ、座りの悪さを感じさせるものだと思うし、「そらトびタマシイ」、「すなかけ」、「le pain et le chat」などの作品群にしても、もっときちんと盛り上がって結末つけて、いわゆる「成長物」のパターンに嵌めた方がすっきりと読める人のが多数派でありましょう。
しかし、子細に作品をみるうちに、「これはこれで正解かな」と納得させるだけのものを内包しているのにも、気づいていく。それは、場の空気であるとか人物の表情であるとか視覚的な要素が持つチカラや面白さがストーリー的な結構の放棄した上で、なおかつ、有効に機能している、ということなんだけど。
酩酊亭亭主
好みに刺さる
2021/08/31 23:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Cogwheel - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前読んだ同作家の『魔女』と同じくらいお気に入りの作品になった。収録されているどの話も良いが、個人的には『熊殺し神盗み太郎の涙』『すなかけ』が特に好みで刺さった。 今回は電子書籍で購入したが、紙媒体でも手元に置きたい。