読割 50
電子書籍
再婚生活 私のうつ闘病日記
著者 山本文緒
「ほんの少しの起きている時間で、パン一枚だけ食べて、書かなくちゃならない原稿だけ死ぬ思いで書いて、猫の世話だけは何とかやって、あとはとにかく臥せっているしかありませんでし...
再婚生活 私のうつ闘病日記
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再婚生活 私のうつ闘病日記 (角川文庫)
商品説明
「ほんの少しの起きている時間で、パン一枚だけ食べて、書かなくちゃならない原稿だけ死ぬ思いで書いて、猫の世話だけは何とかやって、あとはとにかく臥せっているしかありませんでした」望んだ再婚生活なのに、心と身体がついてゆかない。数回の入院生活と自宅療養、うつ病をわずらった作家が全快するまでの全記録。克明な日記の、2年2ヶ月の空白期。書けない時期に何があったのか──。文庫化にあたり60枚を加え、重症期の闘病を明かす!
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紙の本
向き合う
2023/08/07 00:55
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:イシカミハサミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直「私のうつ闘病日記」のクレジットなしで、
これを読んだ人はかなり面喰ったろうな、と思う。
そして山本文緒という個人への感想が多くあった、
というのも納得の作品ではある。
でも「元気そうに」して、
人に「元気そうだね」と言われて、
それがまた悪いループに組み込まれたりと、
うつとはなんとも厄介なモノ。
持論を悪気なく押し付ける人と、
それを「悪気はないんだから」と容認する人には、
くれぐれも気をつけたい。
電子書籍
普通ってなんだろうを考えさせられる
2015/08/27 21:11
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Neko - この投稿者のレビュー一覧を見る
好きな作家さんなので気軽に手を伸ばしたものの、最終的には色々考えさせられる一冊に。がんばらないっていうことはすごく難しい、がんばってる自覚もないこともあるし。うつじゃない人でも、こういう気持ちになることあるある、と思う部分がたくさんあるし、そういう症状で苦しむ人のことを理解する一助になると思った。健康に毎日を過ごすということが、実はとても難しいことなのかもしれない。
紙の本
あなたが大切なものはなんですか?
2009/10/26 11:40
12人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひさしぶりに山本文緒のエッセイを読んだ。
今回の文庫には、単行本にはない「空白の日々」の書き下ろしが掲載されている。
さて、「再婚生活」のレビューに入る前に、少し長くなるけれど、彼女の以前のエッセイ「かなえられない恋のために」から抜粋させて頂く。
<ひとりの人間が経験できる出来事はとても限られている。世の中には何ヶ国語も操り、世界を飛び回っては偉業を成している人間もいるけれど、それはごく少数の才能と体力と使命感に恵まれた人だけなのだ。
誰だって自分の手の届く範囲でしか生きていない。それは恥ずかしいことでも悲しいことでもなんでもないのだ。短い一生のうちに関わることができる、ほんの少しの人間、ほんの少しの仕事、ほんの少しの本。それをないがしろにして、なにができるというのだろう。自分の目に見えるものしか信じないとか、受け入れないとか、努力をしないと言っているのではない。あれもこれも欲張っているうちに、自分が本当に知りたいことが何であったかわからなくなってしまっていたのだ。人間ひとりが持っているバイタリティーやエネルギーには限りがある。それを漫然と使っていたら結局何も手に入らない。
自分の好奇心に正直になること。持っているものを大切にすること。
そう感じることができて、やっと私は幸せな気分で昼寝をしたり、本を読んだりできるようになった。それが、ただの時間の無駄づかいではないことを知ることができたから。
人は何事かを成すために生きてるんじゃない。何も成さなくてもいいのだ。自分の一生なんて、好きに使えばいいのだ>
もちろん、この文章を書いていたころの山本氏は現在より年齢も若く、立場的にもずいぶん違う。こんな昔の文章を引き合いに出すのは間違っているのかもしれないが、私はこれを読んだ当時この言葉を抱きしめていきたいと思った。それは今も変わらない。
単行本に対しては厳しい反響もあったようだ。「恵まれている人に病気を語ってほしくない」とか、「甘えすぎているのではないか」とか。
社会的に恵まれている立場。作者のように好きな仕事ができてお金もあって周りには優しくサポートしてくれる人間もいる。この「立場」が、人々の反感を買ってしまいやすいのだろう。
なぜ。このような「恵まれた立場」の人間がうつに陥ってしまうのか。
そのあたりの、原因に対しても赤裸々な告白があれば、もっと共感を得られるし、価値のあるものになるのではないかと、ものたりなさを感じたため★はみっつ。
「病気」ひいては「悩み」というのは、その辛さは本人しかわからない。他人と分け合えるものではない。でも、「体験記」というものには、その人自身が体と心の両方を使って得た大事なメッセージが含まれている。
本書は、「なぜ、あの人が」と思うような、身近な人がうつに陥ったときにひらけば、当事者の心理や葛藤を読み解く手ほどきとして非常に有効なのではないだろうか。
この本を読み終えたときに、冒頭の抜粋の言葉がよぎったのだ。
自分にとっての大切なもの。そしてそれに対する態度。距離感。緊張感。
改めて考えさせられたし、もっと大事にしていこうと思った。