紙の本
ノーベル経済学受賞者、ポール・クルーグマンの最新刊。
2012/10/07 17:41
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:龍. - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノーベル経済学受賞者、ポール・クルーグマンの最新刊。
クルーグマン教授の著書はかなり読んでいるのですが、本書の特徴は、その文体。訳者も意識しているようですが、かなりフランクな調子で論が進められています。また、一般向けに書かれているため、専門用語なども少なく平易な表現をとっているため、大変読みやすく、従って理解もしやすい内容です。
本書はアメリカにおけるリーマンショックに端を発する不況への処方箋という位置づけで書かれているのですが、それは大変シンプルなもの。
その解答は、昔ながらのケインズ的な財政出動。
金融緩和策は実施され、既に金利はゼロに近い水準になり、いわゆる流動性の罠にはまり、金利操作では景気対策としての効果が期待できなくなっているのは、アメリカも日本と同じです。アメリカではオバマ政権により財政出動も行われていますが、本書ではそれは景気に刺激を与えるにはあまりに規模が小さいと指摘しているのです。
おもしろいのはFRBのバーナンキ議長に対する批判の部分。バーナンキはかつて日本の日銀の弱腰な対応をけなしていたけれども、結局、自分も同様の対応をしてしまってるというくだり。
たしかに理論的には金融緩和策と大規模な財政出動で景気を刺激するという不景気への処方箋は正しいのですが、いざ実行しようとすると逡巡してしまうことが多いようです。
原因は、政策担当者の過度なインフレの恐れや、政治的な綱引きなど、が考えられます。
本書はアメリカの状況について書かれていますが、これを日本に置き換えてみると、日本こそもっと劇的な対応策がとられるべきだと分かります。
その点、東日本大震災は経済浮揚のひとつのきっかけとなりますが、消費税増税は明らかに経済政策としては間違っていることが理解できるはずです。
龍.
紙の本
経済不況の原因及び脱出法
2013/03/20 13:03
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sskkさかた - この投稿者のレビュー一覧を見る
アベノミクスに影響した理論
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今話題のアベノミクスの掲げる三本柱はクルーグマン氏の主張と重なる部分が多いですね。そういった意味では、日本は実践でこれを証明しようとしていることになるのかもしれません。
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ここの所、続けざまに経済関係の書が出版されており目に付くままに買っているが最初に読み終わったのが Paul Krugmanによる本書。
ノーベル経済学賞受賞者にして最近はNew York Timesでも毎週経済政策に関する皮肉の効いたコラムを執筆している著者の最新作。そのコラムもまあちょっとばかり皮肉が効きすぎる内容(例えば共和党に対してとか)を連発するので最近はちょっとばかり「色物」扱いされることも多々あるのだがそれはご愛嬌。
で、本書はリーマンショックに端を発する不況の原因分析・犯人探しをするよりも不況を早く終わらせる処方箋に焦点を当てるべし、という至極真っ当なもの。端的に言えば米国の不況脱出には政府による大規模かつ継続的な財政出動とFRBによる更なる金融拡大の両輪が必要であるというNew York Timesコラムでもお馴染みの論だ。
しかもお約束の皮肉やユーモアも満載でサービス満点と言える。主義主張が相対する経済学派を淡水派と塩水派(つまり内陸のシカゴ学派(=極端な自由主義派)と東部海岸を中心とするケインズ学派のことだが)とする比喩には思わずニンマリさせられてしまう。
そしてその文体は訳者・山形浩生がいみじくも後書きで述べるように「クルーグマンはいまだに冗談まみれの(そして直情的な私情まみれの)文を書く。特に最近ではリベラル派として、不景気に苦しむ一般のアメリカ国民に対する同情と、その事態改善を阻む一部の富裕層に対する怒りを込めた文章を書く。それを反映した原著の、重厚な学者文とはほど遠いユーモアと怒りの共存した文を、この役所が再現できていることを祈りたい」という狙い通りに、非常に読みやすく仕上がっている。
実はクルーグマンのNYC Timesコラムなどは時どきは原文で読んでいるのだが、口語体かつスラングが多いのでかなり読み難く、多くはブログ「道草」(http://econdays.net/)を読んでいる。このブログは多数のボランティアがクルーグマンの新聞コラムや投稿そして彼自身のブログから記事を訳しているのだが、その訳語口調はまさに本書のものでありその一致加減には多少の驚きを覚えるし、何となくこの共通する訳文こそがクルーグマンの語調だと納得させられる。
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「クルーグマン教授の<ニッポン>経済入門」が金融政策を全面に出した著作だとしたら、本書は財政政策を全面に出している。一応金融政策についても書かれている。
タイトルや内容から現状の緊縮に走る世界各国の政府、それを賛美する経済学者、評論家、金融関係者に対するクルーグマンの怒りを感じる。
日本の政治家や経済学者に愚か者がいるように、どうやらアメリカ、EUにもとんでもない政治家や経済学者はいるようだ。
クルーグマン自身の変化も見れて、結構面白い。
日本、アメリカ、イギリスなどの自国通貨・自国通貨建て国債を発行している国は金融緩和と財政出動をフル活用することによって現在の不況を解決できる。
あまり、専門用語、複雑なモデルを利用せず、経済学を知らない人でも本書を読めば不況下での緊縮財政が経済に悪影響をもたらすことを理解できるだろう。個人的に一人でも多くに人に本書を読んでもらい、それが政治家を動かすことを願う。
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ノーベル経済学賞を受賞しているアメリカの経済学者ポール・クルーグマン氏の一冊
現在の経済状況とこれからの経済がどう進むべきかを理解できる。
その中でも強く関心を引いた内容は、、、
全ては需要が問題
人々は所得を何かに使わざるを得ない
誰かの収入は、誰かの支出なのだ
不景気を終わらせるのは中央銀行によるマネタリーベースのコントロール(増加)⇒しかし日本ではマネタリーベースを増やしても経済回復しなかった=流動性の罠にはまった。
マネタリーベースを増やす(中央銀行が銀行にお金を貸す)⇒銀行の貸出金利が下がる⇒企業資金の流動性が上がる(現金を手配しやすくなる)⇒設備投資等により生産力が増加し売上が増える⇒経済が活発化する。
しかし、不景気により売上が下がり続けると、金利が下がり続けゼロに近くなる。金利が下がらないと企業はお金を借りられなくなり(ゼロ金利でも高くて借りられない)、経済が停滞する=流動性の罠にはまる。
流動性の罠が発動する条件は、ゼロ金利でも、人々が買いたがらない(貯蓄したがってる)とき
一国の首相として最高の選択は、再選に繋がることをすること。しかしグローバル化時代の小国の指導者は自国民に嫌われようとも、国際コミュニティー(欧州委員会やIMF)に気に入られることをやる。
日本の負債は90年代から増え続け、すぐにでも債務危機になり国債金利が上昇するはずだとかけた投資家たちは大損して、日本国債を空売りするのは「死の取引」と言われるようになった。
超債務国の日本は平気なのに、それ以下の債務国であるイタリア、スペイン、ギリシャ、アイルランドはなぜ国債が暴落したか?理由は国債が自国通過建てか否か。
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失業率を下げるためには財政出動が必要。流動性の罠状態においてはハイパーインフレは起こらない。シンプルにはそれだけ。でも世の中こちら側の立場を取る人が少なすぎるのは確か。しかも、ニューディール政策とかって、学校で習ったのにね。巻末の山形浩生の解説に愛があってよい。お金は、国が刷っているもので、フィクションに過ぎない。そこでの些細な(まあ些細じゃあないけど)収支にこだわってどうする?働きたいのに働けない人がいるっておかしくないか?生産性の議論はあるけど、生産の議論がないのはおかしくない?役に立ちたいと思う人がいたらその人にあった役割を割り振れるってのは、社会として重要。あと、ユーロとか馬鹿じゃねえの。ってくらいか。
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クルーグマンは好きだし、山形浩生はもっと好きなので、この本を読まない理由は自分の中にはなかったなと。で、読んでみてやっぱり面白かった。
一応、経済学部を末席ながら卒業した身としては、このデフレ不況下で消費税増税が得策でないことはなんとなくわかっていたけど、本書でその理屈をかなり補完できたのが良かったかな。素人考えだって、好景気になれば税収は増えるんだから、先にやるのは景気対策じゃないの?ってなるはずなのに。
クルーグマンはノーベル経済学賞受賞前から、インフレターゲット論者だったけど、執拗な反対にあってこれを実行した政府は、僕の知る限りいまだない。(それっぽい誘導をした中央銀行はあると思うけど)そういう意味で、彼の意見は未だ正しいかどうかわからない。だからこそ、今一番傾聴すべき経済学者なんじゃないかとも思う。
まぁ、本人も書いているように、正しいかどうか以前に、これを実行できる政治家がいないっていう現実があるんだけどね~。
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一言で言えば、痛快である。
米国をネタにしているが、米国に追随している日本にも当てはまること多し。
やるべきことは、わかってるんだから、
四の五の言わずにやれや~!的な内容です。
妨害してるのは、政治だと、
上位1%が差し向けているロビー活動に丸め込まれてる!
日本でいうならば、
経団連の言うがままじゃないか!ということか。
情熱に任せて書いているらしく、
訳もかなりブロークンで、ホントに溜飲が下がる批判です。
山形浩生さんの訳は素晴らしいね。
訳者あとがきも面白いです。
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今さらだけど読んでみた。
不況の時に財政再建のためといって財政出動しないのは雇用をさらに減らす。
金融緩和も思い切った程度でやらないと効果ない。
そもそも不況のときに財政赤字気にしてバラマキやらなくたって不況が続いて失業が増えるなら損失は減らない。
といったことの理解になった。
(Kindle版)
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要するに、公共支出の大胆かつ継続的な執行による雇用の拡大と有効需要の創出が不況脱出の妙手であるというケインズ理論の導入こそ、今、必要とされている政策であり、デフレ下での増税はもってのほか、ということは理解できた。しかし、日本語はなかなか難解である。
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本書はノーベル経済学賞をも受賞している著名なアメリカの経済学者のものであるが、歯切れの良いわかりやすい経済書として、さすが一流は違うと思った。
著者は、いわゆる「リフレ派」といわれる論客なのだろうが、「流動性の罠」などの概念もわかりやすいし、「すべては需要が問題」「もっと高いインフレを」との主張も説得力がある。
著者は、ドンと思い切った支出で需要を喚起すれば、「おそらくは二年以下で完全雇用に戻れる」と不況に陥ったアメリカ経済への処方箋を書いているが、どうなのだろうか。
本書で著者は、日本には言及していないが、本書の主張は日本にも全て当てはまる。日本も本書の主張の通りに、「思い切った財政出動と大規模な金融緩和」を行えば、立ち直ることができるのだろうか。
日本の不景気・デフレも、もう20年以上も続いていることを思うと、誰もが国政を担当する情けない政治家たちに、本書のテーマのように「さっさと不況を終わらせろ」と怒鳴りたい気分であると思う。
本書はアメリカ経済を扱ってはいるが、デフレ基調の経済状態と高失業率は日本も同様である。アメリカで有効な経済政策はおそらく日本でも有効だろう。
本書は、現在の不況下において、我々がどうすればよいのかを考えさせてくれる良書であると思う。
しかし、日本においては著者のような有名かつ有能、しかも著作は読みやすくわかりやすい、そのような経済学者がはたしているのだろうか。ぜひ、出てきて欲しいものだと思った。
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この本はアメリカなど多くの国が不景気に陥った現在「これからどうする?」と問いかけるもの
クルーグマンの主張は一貫して政府が借金して継続的に財政出動すること
もちろんオバマ政権でも金融緩和策などは何度かあった
でもクルーグマンによれば規模が小さすぎて効果は一時的に過ぎなかった
そして大規模な公共事業
政府がしばらく借金して鉄道トンネルなどの整備をしたりする
こうすれば雇用が生まれ失業からくる民間債務から公的債務に置き換わる
全体では負債の水準が同じでも雇用など経済問題は減るってこと
そして完全雇用が実現するまで政府支出は継続する
経済が停滞したデフレの中で政府がするべきは負債で負債を治す
深刻な不景気にある経済で金融当局が左右できる金利がゼロ近くであっても政府支出は減らすのではなく増やすべきなのだ
残念ながら日本はすべて逆の道を進んでいる
・公共事業を減らす
・無駄をなくす
・財政支出をなくす
・増税
こんな議論が花ざかりでクルーグマンから見たら異様に思えるかもしれない
バブル崩壊後の日本が経済学の標本となったように
これからの日本の進む道も経済学の標本となりそうだ
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著者のポール・クルーグマンを知ったのは以前NHKで放送されていた番組でした。
失われた20年といわれる不況を脱しきれない日本に対しての分析と対処法を分かりやすく語っていました。
なかでも印象的だったのは
「私は天皇陛下に謝らなければならない。」
という言葉です。
90年代の日本はバブルが崩壊して不況のまっただ中にいました。
当時プリンストン大学の教授で現FRB議長であるベン・バーナンキは日銀が採るべき具体的な行動を主張したのです。
同じようにクルーグマン教授も日銀の行動を批判していたわけですが、実際にバーナンキが日銀と同じ立場(FRB議長)に立ってみると当時の日本と同じようなことしかできていない。
だから日本謝れというのです。
第三者の立場から物をいうのと実際に当事者になって行動するのとでは
まったく違うということです。
ただ、だからといって当時の日銀が正しかったというわけではありません。
気持ちは理解できるようになったと言っているのです。
また厳密にいえば、謝るのは天皇陛下ではなく日銀総裁に対してなのですが、
そこは彼なりのユーモアなのでしょう。
文体も経済書独特の専門用語も極力使わず、口語体で書かれているので経済の知識がなくても十分に読んでいけるおもしろい作品になっています。
世界的な不況の原因は?
不況を脱するための方法は?
など今起こっている経済状況に少しでも疑問がある人はぜひおすすめの一冊です。