商品説明
金貸しが趣味のヒモ、おまけに変態プレイじゃなきゃ興奮しない屑。そんなボクが東京から逃げ出したら、本気で人を好きになった。でもまた出て行かなくちゃいけないんだ、だってボクは不愉快な本の続編みたいな奴だから――。嘘つき男は新潟・富山・呉を彷徨う、太陽と時間が溶け合う永遠へ向かって! 21世紀の『異邦人』誕生。
著者紹介
絲山秋子 (著)
- 略歴
- 1966年東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞、「袋小路の男」で川端康成文学賞、「沖で待つ」で芥川賞を受賞。
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紙の本
だめんず・乾に惹かれる。
2012/01/24 09:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:チヒロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヒモで、ウソつきで金貸しの乾くん。
相手をみて、ご無沙汰の理由を「刑務所でパイプ椅子造り」もしくは[フランス留学」のどちらかを使い分ける乾くん。
金貸し相手のイサオにくっついて新潟へ来ちゃった乾くん。
初めて心から好きになった彼女に、実は変態プレイが好き(と言うかそれしかできない)と言えず悩む乾くん。
いいかげんそうで、女の子にはヘンな下心なく優しいのはかなり繊細なハートの持ち主だから?
新潟で傷つき、富山で見切りをつけ、久しぶりに故郷広島へ帰るのだけど・・・
実際、新潟で私は乾くんと同じ感覚に陥った。
「山が南で海が北ということが頭と体でわかっていても、心の底から納得はできないんだ」
そうなの。
南に向かっているのになぜか北上しているような感覚。
海を背にして建っている町は、太平洋側の人間には、すぐに修正できそうもない不思議な違和感がある。
そういう町で結婚しちゃったのです、乾くんは。
主人公・乾くんのモノクロームで語られるお話は、さすがフランス帰りの乾くんらしく、
なぜか外国文学風なたたずまい。
絲山さんのセンスが光りました。
紙の本
講演会と読書会で絲山さんご本人に会いました。
2017/12/27 13:57
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
大変幸運なことに、ご本人による講演会と、抽選に当たって
ご本人同席の読書会に参加できました。嬉しかったです。
今年の運を使い果たしたかもしれませんが。
読書会参加にあたり、まずは自分の考えをまとめました。
この書評の前半です。最後に、この本について絲山さんから
聞いたことを補足します。
まずは本の内容についてです。
二人称の独り語り小説です。読者は聞き役です。
自らを嘘つきと言い、女にしがみついて生きている人間です。
ある女に惚れていっぱしの男ふぜいになったつもりが、半端者に
過ぎなくて粗末に扱われ、大人になりきれなかったクズ男です。
途中でライ麦畑でつかまえてと共通する部分に気がつきました。
だから後日談的なところが、不愉快な本の続編なのかもと
思いました。
巻末には、全六章に紐づけられた参考文献が掲げてあります。
暗にそれらが各章の元になっているようには読めるのですが、
どの本も不愉快な本という感じではないです。
しかもライ麦畑は入っていません。
一気読みするくらい本文に惹きこまれたのですが、参考文献を
一冊しか読んでいなかったので、背景部分はつかみきれて
いません。ちょっと残念ですが。
それでも、第一章「生まれる」に関係するカミュの異邦人は
読んでおり、ちょっと違う視点で読めました。
芋虫がポトリと古井戸の格好をしたこの世に落ち、
それがボクの誕生であって生まれ落ちたこの世は
絶望的に暗かったのです。
自分の常識で理解できない暗さとは、逆に向こうから見れば
異国人のようなわけの分からないやつということです。
第一章はこう結ばれています。
>ほんとはどういう人間なのかと聞かれたら、不愉快な本の
>続編みたいなもんでしたってはぐらかすかもしれないね。
>それでも、芋虫の割にはがんばったんじゃないの。
馴染めない世界での自己中心的なふるまいが、クソ野郎の
生き様のあちこちで出てきます。
たかり、もたれかかり、あまったれた人生。
しかし暴力に訴えるわけではなく、他人との心の距離感が
価値観のずれとなり行動の端々で出てしまっている存在です。
心を通じ合わせる人を見つけようと、どこかで思っている
ふしがあります。ちょっとした仕組みで脅し気味に簡単に
他人に近づけるのに、心が離れていく現実を気がつかずに
生きています。
あるきっかけで心が近づいたと思ったのに、その先にあったのは
思い違いという人間心理の難しさを、滑稽に笑い飛ばそうとする
姿に悲哀を感じます。
情けないです。
幸福とは何か、心のつながりとはどういうことかを訴えかける物語です。
最後の一文だけはどうしても分からなかったのですが、
心につめ跡を残す一冊でした。
講演会・読書会での気づきと、絲山さんにお会いした話を書きます。
講演会では、地方都市で小説を書くということ、どうやって書いているか、
これからどうしていくかなどを話されました。
そして、最後の一文だけはどうしても分からなかった、意図を教えて
ほしいと聞いたら、主人公の言葉がそう聞こえたからという答えでした。
絲山さん自身も分からないとのことでした。
仏師が仏像を彫る時に、木から取り出すだけだと言う表現を
聞いたことがあると思いますが、小説を書くことも同じ感覚だそうです。
だからこそのラストのセリフです。何だか大切なことを聞けた気がします。
紙の本
絲山秋子「不愉快な本の続編」はまたまたラストがとんでもない!
2011/12/01 19:46
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オクー - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやぁ、絲山秋子、スゴいなぁ。いったいどこに向かおうとしてるの
だろう、この人。冒険する作家というか挑戦する作家というか。皆さん、
当然、タイトルにも心ひかれるでしょうが、6つに分かれた各編に付い
ているサブタイトルが意味深だ。「生まれる」「取り立てる」「好きに
なる」「盗む」「佇む」「入る」だって。ううむ。この物語、主人公で
ある乾って男が東京、新潟、富山、そして、故郷の呉へとめぐり行く話
だ。乾は自分のことを「生まれながらのヨソ者」と呼ぶ。フランスに留
学していたらしいのだが、取り立てをやったり、なんだかヘンな男なの
だ。ヘンなヤツだが、けっこうカワイイ。この話、乾の一人称で書かれ
ているが、少々軽みのあるその文体がこの男をさらにつかみどころのな
い人間に仕立て上げている。
「好きになる」は新潟が舞台で、彼はユミコという女と出会い、なん
と結婚までしてしまう。この2人の関係がすこぶるおもしろい。その結
末も愉快だ。舞台を富山に移した「盗む」では、乾が言葉通りの行動に
出ちゃう。それもなんと…。「生まれながらのヨソ者」はいったいどこ
にたどり着くのか?そう思って読み始めたラストの「入る」。あららぁ、
こういうことをしちゃうのね。本当に困った人だなぁ、絲山さん。自分
の小説をどうしようとしてるの??