読割 50
電子書籍
MOONLIGHT MILE 3
著者 太田垣康男
吾郎の登山家時代の相棒、ロストマンは、現在NASAのシャトルパイロットとして、軍の機密を知る立場にいた。そんな彼を、パパラッチたちは執拗に追いかけまわす。
MOONLIGHT MILE 3

Moonlight mile 3 黄金のロシアの秋 (ビッグ コミックス)
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紙の本
めぐまれていること
2004/12/23 22:44
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まさぴゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近の宇宙を描いた近未来モノに面白いテーマが反復することに気づいたんです。この三巻の「夢の代償」という月へのNASAビルディングスペシャリスト訓練候補生の日本人澤村耕介とマレーシア人ルーシー・ウーの話でもそれがあって、おっと思ったのです。
話はこうです。
月面に基地を建設するネクサス計画の候補生として、それに見った援助を出すことができる日本人が当然、筆頭候補に挙がります。耕介とルーシーは、訓練の帰り道に強盗で出くわし、ルーシーは耕介を守るために犯人を射殺します。全米でこの勇気ある行動に賞賛の嵐が吹き荒れ、耕介を差し置いてアジア人枠一名の筆頭候補に躍り出ます。しかし「たとえどんな理由があっても」人を殺すことを容認することのできない耕介は、そのことに悩みぬきます。マレーシア人のルーシーは、貧しい島の出身でそこから激烈な競争社会で勝ち残ってきたスーパーエリートです。そして同時に経済格差が生み出す貧困の凄まじさをじかに体験してきている彼女には、そもそも選択の余地なく「勝ち続けること」が人生の一部になっており、競争に勝ちぬくためには「人を殺したことの動揺」などかまってはいられない。お互いに恋人のような関係であった耕介は、それが受け入れられずに悩みます。その疑問に対してルーシーは、苛立ちます。似たモチーフが、プラネテスにもありました。貧困に苦しむ中東の小国のテロリストが、主人公に「日本人はめぐまれているんだよ」と主張するシーンです。そうか、考えてみると戦後50年以上凄まじい経済成長と一切の戦争体験も内乱も経験していない日本は、世界で一番恵まれている国かもしれません。平和ボケしており、それはすなわち素直にどんな理由があれ「殺人は嫌だ」「争うのはいやだ」「仲良くしよう」という現実の弱肉強食のパワーゲームでは幼稚園児のようなことを真顔で言う大人がひしめいているのです。だから、経済の覇者である日本人が、国際舞台に出てくるときには、そんな純粋培養の人間が出て行くわけなんですよね。そりゃあ現実感覚が違いすぎて、ぶつかるよなー(笑)と思いました。でも、たぶんこれは本当です。僕も学生時代海外の人とあったとき、日本人は幼稚だといわれましたが、それはそういった「殺し合い的な弱肉強食」が前提でない社会で生きているからなんですよね。それも50年以上継続している。なるほど、と思いました。いまだ徴兵制があるのが世界の常識なんですもの。大学時代の友人が韓国からの留学生だったのですが、徴兵で湾岸戦争当時戦争が起きるかとびくびくしたと、酔っていつも言っていて、そのあまりの現実感感覚の違いに驚いたのを覚えています。もちろん、徴兵制がある国の若者の方が、圧倒的に大人だといわれています。たぶん、世界を管理する側のエリートとも、それに反発するテロリストとも、どちらともつかなくて悩むのは日本人が一番悩みやすそう。だって、どちらも競争が前提だが、日本人はそこまで前提ではないからです。これは、今後SFなどで描かれる日本人の典型的スタイルなのかなとも思いました。すなわち、現実からすると現実認識の甘いガキのようなのだが、さりとて「甘い」と捨てることのできない重要な問いだからです。