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たそがれ清兵衛
著者 藤沢周平 (著)
下城の太鼓が鳴ると、いそいそと家路を急ぐ、人呼んで「たそがれ清兵衛」。領内を二分する抗争をよそに、病弱な妻とひっそり暮らしてはきたものの、お家の一大事とあっては、秘めた剣...
たそがれ清兵衛
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たそがれ清兵衛
商品説明
下城の太鼓が鳴ると、いそいそと家路を急ぐ、人呼んで「たそがれ清兵衛」。領内を二分する抗争をよそに、病弱な妻とひっそり暮らしてはきたものの、お家の一大事とあっては、秘めた剣が黙っちゃいない。表題作のほか、「ごますり甚内」「ど忘れ万六」「だんまり弥助」「日和見与次郎」等、その風体性格ゆえに、ふだんは侮られがちな侍たちの意外な活躍を描く、痛快で情味あふれる異色連作全八編。
著者紹介
藤沢周平 (著)
- 略歴
- 1927~97年。山形県生まれ。山形師範学校卒業。71年「溟い海」でオール読物新人賞、73年「暗殺の年輪」で直木賞を受賞。著書に「又蔵の火」「闇の梯子」「市塵」など。
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仕事か家庭か
2021/04/29 22:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
主君への忠誠か家族かの二者択一を迫られる清兵衛は、現代のサラリーマンと変わりありません。いつの時代にも組織の不条理に振り回される、宮仕えの世知辛さを感じてしまいました。
紙の本
もののふ達の帰る場所
2004/10/28 01:06
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「24時間戦えますか」というキャッチコピーがかつて流行した。失業者が多く残業の多い昨今、あまり笑えないコピーである。さて、現在の武士(もののふ)達はといえば、城をオフィスビル、刀をパソコンに置き換えて、24時間とはいかないが、やはり長時間働いている。そして仕事が終わればだんだんと、心の鎧を解いてゆき、家に着いた時にはすっかり緊張を緩める。もちろん戦闘服も脱ぎ捨てる。
ところが江戸時代、家に戻っても働き続けた24時間男がいた。井口清兵衛がその人だ。彼は下城の太鼓が鳴るが早いか、同僚達ともつき合わず、家にまっすぐ帰る。ついた綽名が「たそがれ清兵衛」。しかし彼は、家でのんびりしたいから早く帰るのではない。夫の助けがないと一人で厠にも行けない病身の妻がおり、飯の支度から掃除、洗濯をするのだ。原作で彼を「たそがれ清兵衛」たらしめているこの設定が、映画では幼い子供の世話がいる家族構成に置きかえられ、それによって命令を受ける経緯も違えてある。原作では、午後六時からの上意討ちを最初命じられた時、「受けてしまうと、その時間厠に行きたい妻を待たせてしまう」と、清兵衛は断る。こんな武士が今までいたろうか。私事で殿の心を煩わすなど恥と考え、「ははっ、ありがたき幸せ」と平伏して受けるのが今までの武士なのに。仕事を辞めて介護を選ぶ人達がようやっと受け入れられたのは、最近になってからだ。江戸時代ならばどんな目で見られた事か。それでも清兵衛は運がいい。命じる側が、妻をもっといい医者に見せると請け合い、女房の世話をしてから七時に出向く事を了承してくれたのだから。
藩よりも家庭を優先させた清兵衛を「馬鹿な奴」「武士の風上にもおけぬ奴」と見る向きもあるだろう。でも、藩は一体どこまで清兵衛の面倒を見るつもりだったか。成功すればもちろん清兵衛の望みは叶ったろうが、もし失敗したら、藩側は、全ての責任を清兵衛にかぶせて頬かむりしたのではなかろうか。それに対して彼が成功しようと失敗しようと、家は変わらずそこにあり、無条件の愛と信頼を向けてくれる。時には邪見に扱う事もあっても、おいしい料理を供してくれる。
うらなり、だんまり、ごますり、ど忘れ、かが泣き。短編集に登場する、いずれ劣らぬ奇癖を持つ剣士達は、一刃を振るいここ一番の活躍を見せる。しかし彼等達が最後に戻る場所は、仕える殿の御前ではなく、剣を鍛える道場でもなく、愛する家族と安らぎのある、唯一無二の家なのだ。