とてもにおいの強い作品
2008/11/27 02:03
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:岩澤ちこり - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台は長崎。
新興やくざの一家で暮すことになった幼い兄弟、駿と悠太を取り巻く一家没落の物語。
この「長崎乱楽坂」はとてもにおいの強い作品だ。
男の汗や女の化粧、酒や食卓に並ぶ贅沢な食べ物のにおい、
また時にはシンナーのにおいであったり、サイダーの甘いにおいもする。
読者は兄弟の目を通して、そのむせ返る様な濃いにおいを嗅ぎ続けることで、
作品の世界を自ら体験したかの如く感じることができる。
時に息苦しく、時に懐かしい。
作品の大部分は兄である駿の目線で描かれ、暗く泥臭い斜陽が描かれ続ける。
だが、最終章では弟・悠太の目線に物語は切り替わる。
それまで物語を動かすには幼すぎた弟が、密閉された世界の扉を開け放つべく登場するのだ。
それゆえに物語終盤の開放は清々しい。
明るい気持ちで読める作品ではないけれど、全体を通じて使われる長崎弁のリズムが、
なんとなく心に残って離れない。
読み手を選ぶかな?
2016/03/16 13:14
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投稿者:koji - この投稿者のレビュー一覧を見る
ここで描かれる三村の家の風景を自分の人生の中の風景と重ねることが可能な人ならば、登場人物たちの息遣いや匂いまでも感じられると思います。
その一方、映画や小説の世界としてしか感じられない人にはそんなに入り込めなくて楽しめない作品でしょう。
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●タイトルどおり、長崎を舞台にした小説。後半に行くにつれ面白くなっていくように感じた。長崎は本当に坂が多い町です。
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風呂上りの火照った肌に鮮やかな刺青を躍らせた猛々しい男たちが、下穿き一つで集い、日々酒盛りに明け暮れる三村の家。人面獣心の荒くれどもの棲む大家族に育った幼い駿は、ある日、若い衆が女たちを連れ込んでは淫蕩にふける古びた離れの家の一隅に、幽霊がいるのに気づくのだった。湾の見える町に根を下ろす、昭和後期の地方侠家の栄光と没落のなかに、繊細な心の成長を追う力作長編。
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相変わらず彼の作品は主人公がSO COOL!
うーーーん、せっかくおもしろい内容なんだから
もうちょっとじっくり描写してもいいかなあ?
それともあえて短いのが作者の狙いなのか?
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父が死んで幼い兄弟が引き取られた家は、母の実家である極道が住む家だった―――何十年か前の長崎を舞台に、ある極道の家が最盛期から勢いを失っていくまでを描いた、閉塞感に満ちた息苦しい一冊。男たちの物語ではあるけれど、おそらくこの本の本当の主役は、男たちの臭いの満ちた古い陋屋なのだろうと思う。内容としては違うのだろうけれど、ふと遠い昔に読んだ中上健次の『千年の愉楽』を思い出しました。
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吉田さんの作品は大好きなんですが、これはなかなか読み進められませんでした。面白いのは面白いんだけど、世界観が私には合わなかったようで…。
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~内容(「BOOK」データベースより)~
風呂上りの火照った肌に鮮やかな刺青を躍らせた猛々しい男たちが、下穿き一つで集い、日々酒盛りに明け暮れる三村の家。人面獣心の荒くれどもの棲む大家族に育った幼い駿は、ある日、若い衆が女たちを連れ込んでは淫蕩にふける古びた離れの家の一隅に、幽霊がいるのに気づくのだった。湾の見える町に根を下ろす、昭和後期の地方侠家の栄光と没落のなかに、繊細な心の成長を追う力作長編。
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最近長崎に縁があるので、久々に再読。
最後の「悠太と離れの男たち」は正直ぞっとした。
「威勢のよかった男どもにおいていかれた女と、威勢のいい男になれなかった息子」・・・賑やかな冒頭との落差に切なさより息苦しさを覚えた。
(2009/12/14 更新)
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吉田修一お得意の短編ごとに主人公が成長していく書き方。
長崎にはいったことないけど、長崎の片田舎らしさがでてていいんじゃないか。
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人と町の生々しい描写が吉田修一らしくない。さばさばした世界はいったいどこへいったのやら....
購入 2007/1/30
読了 2007/2/19
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いつからだろう・・・?
さだまさしの『解夏』を読んでから?吉田修一の本と出会ってから??
僕は行ったことのない長崎県にとても魅力を感じるようになりました。
この長崎楽乱坂は、父親が死にヤクザの一家で生活することになった二人の兄弟の話です。
母が二人のもとを去り、大人になっていく姿が描かれています。三人称ながら主人公が変わるとゆう手法もいいです☆
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男たちの勢いのある情景が目に浮かぶようだった。そして、後半の淋しい女子どもの家。余韻の残る作品だった。
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読み始めはなんて温度が高い小説かと驚いた。そして、主人公である瞬が、小1、小5、中1、中3、そして高校2年で中退し、最後には最初は赤ん坊に近かった弟が大学生となり、主人公ではなくなった兄をあきれた目で見るようになるまでの、どんどん温度が低くなっていく過程に悲しくなった。一話一話進むごとに、三村家の人間がいなくなっていき、比例するように確実に温度が下がっていく。悠太が瞬を見る視線に遣る瀬無さがつのった。幼くして父親を亡くし、たくさんの男たちを見てきた瞬は、何も覚えてない悠と違い、ずっと「男」の姿を模索し続けてきた。「なんもせんで生きとるのも、なかなか難しかとぞ」と言う瞬に涙が出そうになった。最後に瞬は解放されたのだと、信じたい。
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昭和の香りがする長崎の一家の物語。時代のそれぞれが短編にまとめられている。
ラストあたりがなんか物悲しい。
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入浴しながら一気に1時間ほどで読了。
話自体は重いが、
家族や周囲の人間とのディテールがすごく精彩に富んで描かれている。
男兄弟の葛藤は私には理解しがたいけれど…。
なんとなく、こういう家族との関係性や葛藤の物語は、
内容は違えどどこにでもあり得る話。
それが設定など複雑で特殊に描かれているだけか。
当時の風俗や街の雰囲気などリアル。
自伝的作品か。