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人間原理と宇宙論
2021/11/28 18:48
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投稿者:福原京だるま - この投稿者のレビュー一覧を見る
宇宙の法則が人間が生まれてくるように都合良くなっているという人間原理を多数の宇宙が存在している中にたまたま人間が生存できる宇宙があったのだと説明する多世界理論が面白かった。
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この宇宙が特別なのかそれとも普通にある宇宙の一つなのか。
物理学と神の関係、そこから派生して「人間原理」と物理学の関係を詳説します。
欧米の物理学者は「この世は神がつくりたもうた」という発想からビッグバン仮説などを考えだした(すくなくとも違和感はないだろう)というのは日本人の誤解。欧米人の物理学者は説明のつかないことを異常に嫌い、物理学は純粋完璧な学問、という位置づけにしたいのだそうです。
人間原理とは、「この宇宙は人間が存在するのに条件が合いすぎている」ということから人間を存在させようとする何かが宇宙の生成に影響している、という考え方を言います。
この本の中でふーん、と思ったのは、ビッグバン後、インフレーションに揺らぎ(むら)があった、という部分。インフレーションは宇宙発生後10のマイナス36乗秒後に始まり同35乗秒後に終了したとされます。もし均一に宇宙が拡大したのなら今の宇宙も均一で銀河や恒星が発生することができず、必然的に人間も存在できません。インフレーションにはごくわずから揺らぎがあったはず、という仮説が出され、その後インフレーションの残渣である宇宙背景放射にごくわずかなむらがあることが立証され、この揺らぎは証明された…と。
別の本で読んだ対称性の破れと同じように興味深い現象です。
この世を神が作った、という話と矛盾するからです。完璧な神が作ったこの宇宙は完璧なはず。それが「対称性の破れ」や「インフレーションの揺らぎ」の結果となると…?
非常に面白い本でした。
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「えー!宇宙って、いまそんなことになってるんや!!」
と思わず言ってしまうような、とても面白く、エキサイティングな本でした。
(宇宙自体は人類誕生のずっと昔からあるのでそんな言い方は本来おかしいのですが)
また文章も非常に良くて、素晴らしかったです。
「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」という問いに対する答えは書きませんが、
インフレーション宇宙論ではインフレーション状態のほうが「普通の」状態であって、
われわれの宇宙のような島宇宙はポコポコできているのではないかということや、
ひも理論でも宇宙はたくさんあるということが主流の考え方であることなど、
とても驚きました。
いやー、宇宙論はそこまできてたんか!
もし、僕らがいるこの大宇宙以外にも、それこそ無限の宇宙が存在しているとしたら、
たとえそれを確認することはできなくても、
そのことを想像するだけで見ている景色が変わって見える。
肩の荷がすっと軽くなって、
周りの自然や生き物が愛おしく思える。
そんな気がするのです。
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多宇宙ヴィジョンについては知っていたし
なぜこのような宇宙になったかを
「たまたま」で説明する理屈であることも
知っていたが
宇宙論の概観と多宇宙ヴィジョンの位置づけを
スリリングに読めた
なにより
サイモン・シンの翻訳者青木薫の初著書(?)なので
期待大だった
ちょっとざっくりだなと思うところもあったけど
アインシュタインのλ項の話とか
佐藤勝彦がインフレーションモデルのオリジナル提唱者とか
やはり
人間原理という怪しい概念と
多宇宙ヴィジョンをつなげた記述とか
(サイモン「ビッグバン宇宙論」にはなかったんじゃないか?)
おもしろいところたくさん
またまた宇宙論熱がぶりかえしそうだ
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まだ手をつけているわけではないのだが、並行して読むことになる「日本人のための世界史入門」では、歴史は偶然だと主張しているのだが、こちらでは人間原理と宇宙論の話が出てくる模様。何だか面白い。
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青木薫さんと言えばサイモン・シンの暗号解読やフェルマーの最終定理、マーシャ・ガッセンの完全なる証明などなど。サイエンスライターの翻訳者としては指名買いして間違いない。そんな青木さんが10年がかりで書き下ろしたのが本書で、テーマは人間原理と言う。
物理学者の言う所の言う所の人間原理とは「我思う故にこの世界はある」とでも言ったところで観測者(人間)のために世界はこのように作られていると言う概念が含まれている。いわば神の摂理でこうなったと言うものだ。物理学者としてはこれは受け入れられない。一方でもっと簡単な説明もある。「たまたま」世界はこうなった、だ。これも物理学者は受け入れられない。宇宙を理論的に解明しようとした結果が神頼みでもたまたまでもそれでは学者の出番が無いのだ。
科学が神様から離れたのは一つはコペルニクスの地動説であり、もう一つはこの本のテーマではないがダーウィンの進化論だ。コペルニクス自身は宇宙は人間のために作られたと考えており神を否定しているわけではなかった様だが。また進化論に関してはインテリジェント・デザインと言う進化論を組み込みながらもそれも含めて偉大なる知性(わざわざ神という言葉をはずしている)が設計したと言う考えも出て来ている。科学者の中にも宗教はそれはそれと両立するひとと、無神論者のいずれもいるようではある。
時代は下がり宇宙のはじまりがビッグ・バンであることが次第にわかってくると神の関与が賦活してくる。「光あれ」だ。しかし、キリスト教圏でビッグ・バン理論が受け入れやすかったかと言うとそうでもなく、物理学者は科学に宗教を持ち込むものとして攻撃した。結局は様々な実験結果からビッグ・バン理論は主流の学説になって来ている。
本書の本来のテーマは例えば光速はなぜこの速度なのかなど様々な物理学の定数や粒子の大きさや質量がどうやって決まったかと言うことである。例えば重力がもう少し強い力であれば宇宙は膨張せずすぐに収縮してしまっていたかもしれない。逆に重力がもう少し弱ければ膨張はするものの星間物質は集まらず、星どころか重い原子すら生まれなかったに違いない。たまたま宇宙がこのように出来たから人類は今ここにいると言うことは言えるわけだ。そこで人間原理(神の摂理とでも言った方がイメージしやすいか?)が出てくるのだが人間原理を拒否し、また「たまたま」でもないとするとビッグ・バンから始まり膨張する宇宙はいくつもあり、違う宇宙では違う定数に支配されているという説(多宇宙ヴィジョン)が支持されて来ているらしい。
「起こりうることはかならず起こる、何度でも起こる。」なんだか宇宙はマーフィーの法則に支配されているような気になる。
科学で証明できないことはまだまだあると言うのは非常に正しい。い不確定性原理自体がそのようなものでミクロな領域では位置と速度は一歩を確定するともう一方は全くわからなくなる。確率的にしかわからないのだ。宇宙のなぞも量子論も理論と実証が協力してもわからないことはまだまだあり、ビッグ・バン仮説もいずれはどこかに追いやられるかもしれない。人間原理はいろんなモデルを考えるときに反証すべき相手として置いとけばいいんじゃないかと思う。
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以前に同じような本を読んだことがあるが、その簡易版。むしろ、人間性原理の歴史的意義の流れに結構、紙面を割いている。マルチバースの考え方と、人間性原理の考え方のつながりが、まだしっくりこない。
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サイモン・シンの「宇宙創成」など多数のサイエンス物を訳している青木薫さん(京大・理論物理学博士号を持つ)だが自ら初めて書き下ろしたのが、まさかの「人間原理」に関する本書だからビックリ。
序で書いているように御本人も人間原理のことを「胡散臭い」を思っていたらしいのだが、何故にして今それを取り上げたのかが興味深い。人間原理、解がほぼ無限に発散するヒモ理論、マルチバース理論などがどう相互に関係するのかコンパクトに纏められている。
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優れた理系本の翻訳家として有名な青木さんが書き下ろした人間原理と多宇宙ビジョンです
下手すればオカルトともトンデモとも取られかねない最新の宇宙論を、丁寧な筆致で、門外漢にも注意深く分かりやすく教えて下さっています
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「宇宙はなぜこのような宇宙なのか」という問いにもがき続けて来た存在、人間。そのもがきによって少しづつその意味を変えていく宇宙。人と宇宙の終わりなき壮大なラブゲームの歴史が描かれています。抜群の面白さです。人は宇宙の謎を解明しようとして「人間はなぜこのような宇宙に生まれたのか」という自分のことを問おうとしているのではないでしょうか?それが人間原理という一見、身も蓋もないようなテーマを呼び寄せ、その意外な奥深さにハマる秘密なのでは?と思いました。
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宇宙は、沢山ある。
コペルニクス的転回・・・地動説を唱えた。
インフレーションービックバン理論が標準理論となっている。
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「人間原理」という分かりそうで分からない考えが出てくる。
この宇宙は人間が存在するように出来ている。
なんか宗教性を帯びているけど、これがホントに主流化してるのかと疑ってしまう。
で最後は素粒子の世界へと話が続く。
そのつながりが分からない。
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紀元前から続く、人類による宇宙の謎解きの歴史を綴った一冊。
アリストテレス、プラトンから、ニュートン、そしてアインシュタインまで、幾人もの知の巨人が宇宙解明に挑み、幾多のパラダイム転換を起こしながら現在の“多宇宙ヴィジョン”に至った宇宙論。奇天烈とされた説が、その時代の主流の説を覆し、新たな定説となって行くさまはとても面白い。
非常に哲学的、かつ物理、数学の専門的な話に溢れて難しい本だが、読み応えがあった。
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Oh, God^^. I wanna be aknowledge. Sometimes I do deep thinking. but I've never have. Why move on time the planets?
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「宇宙は本当にひとつなのか」を読み終え、もうちょっと最近の宇宙論について知識を補充したくて最近出たこの本も読んでみました。
こちらの方は、天文学史を中心とした記述ですが、後半はやはり現代の「多元宇宙論」に関する記述で、合わせて読むことでようやくいわんとすることがちょっとわかってきた気がします。
結局やはり昔からSFではよく出てきてた「パラレルワールド」というものが、現代物理学ではどうやら本当に存在する、そうでないとむしろ現在の宇宙のことをうまく説明できないということになってきているようです。で、今の宇宙というのは、我々が存在しうるような条件の整ったものだから我々が現に存在している、そうでない宇宙には我々は存在し得ないので存在していない、と。
言われてみると当たり前の論理ですが、あとは、それを何らかの観測上の証拠から証明できる可能性があるのかどうか、また、ここから何か有意義な知見の広がりが得られるのかどうか、ということなのでしょう。
ともあれ、現代物理学というのは、かえって宗教に近づいてきているようで、おもしろく思いました。