紙の本
製造革命をもたらした「互換性」、「標準化」の歴史をつぶさに追っていきます!
2020/03/10 10:45
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、「互換性」や「標準化」といったことが現代の製造業に大きな革命をもたらし、一大発展を成し遂げる原動力になったことを分かり易く説き明かしてくれる一冊です。著者によれば、ある生産物の部品の「互換性」はフランスのオノレ・ブランという技術者によって始まったということです。その後、その技術がアメリカに伝わり、テイラーによって「標準化」ということが行われ、アメリカを製造大国にまで発展させたと主張されています。こうした標準技術の形成と受容過程においては、実は、私たちが知らない驚くべきドラマの数々があり、標準化ということによる製造の革命が旧来の体制を破壊し、製造業を新しい時代へと向かわせたのです。本書では、こうした製造業における「標準化」と製造革命の歴史をつぶさに追っていきます。内容も、「プロローグ──水晶宮の鍵と銃」、「第1章 ジェファーソンを驚かせた技術──標準化技術の起源」、「第2章 工場長殺人事件を越えて──アメリカ式製造方式の誕生」、「第3章 工廠から巣立った技術者たち──大量生産への道」、「第4章 ネジの規格を決める──互換性から標準化へ」、「第5章 旋盤とレンガ積みの科学──テイラー主義の出現」、「第6章 標準化の十字軍──国家による標準化とその限界」、「第7章 技術システムの構築と標準──20世紀の交通輸送革命」、「第8章 標準化の経済学──デファクト・スタンダードの功罪」、「エピローグ──スタンダードの行方」という興味深いものとなっています!
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悲しことではあるが、技術の飛躍的進歩は戦争との相関がとても高くなってしまう。極限状態に置かれたとき、人はそれを超越するために科学を発達させ、即物的な結果を生みだす。逆に言えば、究極的な平和状態においても同じことは可能なはずだ。ただ、得られるものはもっと抽象度が高く、概念的なものであるため、受け止める姿勢ができていないと、簡単にすり抜けていってしまうのだろう。
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世の中にあるモノの「互換性」,「標準化」に焦点を当てた本。戦争における兵器の製造・修理の効率化の要請から部品の互換性及びそれを実現するための工作機械の進化,国の垣根を越えた「ネジ」の規格の標準化の歴史,運送業界におけるコンテナによる標準化など,興味深く読むことができた。
Microsoftに代表されるように,デファクト・スタンダードを勝ち取った者が勝ち組たりえるが,それを得られるかどうかというのは偶然の要素も大きいというのは意外だった(この本の中では,QWERTY配列を例に説明)。
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大量生産に必要な標準化が如何に困難な道かを史学的に理解できる.耐空証明の行もあり,MRJの現状に思いを馳せる.
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互換性から標準化へ。そして、標準化と個性。グローバル化が進む中、円滑な交流を行うためには標準化は避けられない。近年の社内英語公用語化も標準化のひとつと考えられる。一方、標準は必ずしも最適とは限らない。標準は奥深いものである。
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標準化や互換性といった考えと技術が、市場経済の中からではなく、軍事技術(と戦争)の中から産み出されてきたのは興味深い。
ただし、ネジの話はヴィトルト・リプチンスキ『ねじとねじ回し』(早川書房)、コンテナの話はマルク・レビンソン『コンテナ物語』(日経BP社)の方が面白いが。
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私は日本のメディアとかで使われている「ものづくり」という言葉があまり好きではなく、それってスタンダードにもレジェンドにもなれない、徒花的で自己憐憫的な言葉だな~という感じがしていたので、この本を最初見たときは、よくある職人賛歌の本かと思っていたら、真逆の内容だったことにビックリ。
この本は、現代の産業を支える「標準」や「規格」といった概念がどこから生まれ、どう発展し、世界に受け入れられたのか……を概説している本。「標準」や「規格」というと、私たちが接する「ものづくり」という言葉から感じる、下町の町工場の職人がオンリーワンのものを作る……みたいなものとは正反対の、味も素っ気もないもののように思えるけれども、その重要性と、この概念が受け入れられ世界を制覇するまでの悪戦苦闘の道のり、そして課題が語られている。
この「標準」や「規格」といった概念は、他の機械技術と同様に、戦争の道具である大砲や銃火気の扱いから生まれた。かつては銃や大砲は設計図もなく、職人たちが自分の腕と経験を頼りに部品を作り、それをヤスリがけして、一つ一つ組み合わせて作られていた。当然、そこに互換性はなく、部品の一つがダメになると、全部がダメになるという仕様だった。これでは、戦争中に迅速な対応ができないというわけで、フランスで互換性を持つ大砲や銃火気の生産が試みられることになる。
それを発展させたのが、資源はあっても人が少なかった19世紀のアメリカで、20世紀の特色となる大量生産へと繋がることになる。でも、現在では当然のことと考えられている「互換性」や「標準」や「規格」は、機械生産の発展なくしては成り立たないものであり、しかもイギリスやフランスでは職人の根強い反発によってアメリカに遅れをとってしまう、というのは面白かった。職人気質が最新設備の導入を妨げるというのは、古今東西で良くあることみたいで。
世紀の移り目になると「互換性」の考え方は、兵器からミシンや自転車に転用され、さらにはフォード社の流れ作業へと進化していく。また、「標準」や「規格」についての考えも、度量衡の統一からはじまって、ネジなどの部品の標準化、材料の標準化、さらには作業の標準化や運用の標準化(操作マニュアルとか)、運送方法の標準化(コンテナの導入)などが図られる。これらの標準化によって生産効率がどんどん上がったことの背景にも、第一次世界大戦や第二次世界大戦といった大戦争があった。
日本は、この標準化を第二次世界大戦中は確立することができず、ようやく朝鮮戦争によってアメリカ軍の要望に応えることで、そのノウハウを蓄積することができた。それまでは飛行機の生産などでもヤスリがけをしないと使えないレベルだったというから、彼我の差は本当に大きかったのだと思う。というか、やはり生産力の絶え間ない効率化というのは、アメリカのような「資源はあるけれど人は少ない」ところでしか生まれ得ない発想だと思う。資源がなければ、日本のように一品一品を綺麗に仕上げることを重視するだろうから。どちらも一長一短あるけれども、���代の戦争ではそれが勝敗を分けた。
現在、ビジネスが世界規模になって、標準や規格を巡る攻防はさらに激しくなっている。こういう世界統一の標準や規格ができて、これまで職人の感覚頼りだった複雑な作業が、機械に代替できるようになると、短期的には失業問題や貧富の差が広がるだろうけれども、長期的には人類文明の発展に繋がる。そこまで話を拡げなくても、マイクロソフトやアップルのように、規格や標準を押さえることができれば、ビジネスでは一人勝ちすることができる……そう言われて久しいけれども、この考え方って日本では無視されがちだよね~と思った。
あと、個人的にはギルブレス夫妻による、レンガ積みの労働の研究が面白かった。ありとあらゆるものが分析され、人間もまた歯車の一つとして効率化されていく……というのは、私の感覚にある「ものづくり」と対極にある生産の姿だなぁと。
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非常におもしろい科学史としても楽しめた。エジソンVSテスラのDCACバトルや、もっと前のねじ規格の話、現在のビジネス視点からみた規格の世界の話。いずれも興味深く、身近な事実として把握できる。
いまだSI単位系を使わない某国もあるが、標準の意義を考えてもらいたいぞ、とか思ったりする。本書を読んで、ますますそう思うようになった。本書には出てこなかったが、電池の世界も標準化が広く浸透している分野と思われる。この話も盛り込んでもらいたいところ。
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「標準化」と「互換性」をキーワードにしてものづくりの歴史を考える。
機械が導入される以前はどの製品もすべて手作りだった。
それが機械化されることで大量生産が可能になった。
機械で作ることによって、一つ一つの部品は均一の仕上がりになり、組み立てにかかる時間はなくなった。
ネジやパイプなどさまざまな製品に使われる部品の基準を作ることで、さらに効率よく製品が作られるようになった。
武器や車など実際の商品を取り上げながら、その効率化される過程を追った本。
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兵器の部品の互換性追及から始まった標準化の歴史を概観。大量生産が職人業にとって代わるのに,技術標準の構築は不可欠だった。現実世界では,純粋に技術として合理的な設計が実現するのではない。社会や政治との関係の中で,偶然や一部の人間の思惑に左右されながらモノは出来上がっていく。
関連団体や国家が制定するデジューレスタンダード,市場で勝ち残ったものがその後の技術を支配するデファクトスタンダード。ねじや旋盤やコンテナやインターネットを例に,物語は進んでいく。
少し残念だったのは,キーボードのqwerty配列の件。デファクトスタンダードの代表格として挙げられているのだが,本書が紹介する「タイプライターのアームが絡まらないようにわざとタイプスピードが遅くなるような配列にした」という話には,根拠の薄い都市伝説だという説がある。文庫化にあたってこの辺りの事情をもう少し整理しておいて欲しかった。
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戦場での応急修理を容易にするために互換性技術は発展した。標準規格が普及することで生産量は飛躍的に大きくなった。
きちんと互換性があり標準にあったものを作る技術は大変なものだ。強度なども含めて水準どおりの品質を持っているかどうかを確認するための測定技術も必要になる。
標準化による大量生産がはじめから存在していた時代に育つと「一品もの」をありがたがってしまうが、逆にそちらの方が昔からあるやり方なのだ。世界のどこでも一定の品質の互換部品で修理できるありがたさ。その影には歴史がある。
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アメリカが、なぜ世界最大の工業国であり、グローバルスタンダードを世界に売りつけているのか、すべての源はアメリカ建国の父ジェファーソンの慧眼にあった!部品製造の標準化が、システムの標準化へと進化し、今にいたる歴史を俯瞰した良書。
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工学系出身の私にはとても面白かったし,これからのモチベーションの向上にもつながった良い本でした.これを読むとなぜアメリカが世界一の工業国になったかが良く分かります.これからは,理論に基づいた標準化を日本が主導して行っていけるように,研究に励みたいと思いました.
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標準を制するものは世界を制するという言葉にひかれて読んでみた。
標準を作るには「偶然」と「原動力」がぽいんとになるのかな。
「偶然」もちろん一定の品質、選ばれる理由をもっていることは前提だが、標準にしようとして作れるものではないのかもしれない
「原動力」それを広める何かしらの原動力が社会で起きてなくてはいけない。その波に乗れるかどうかは企業の努力次第
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産業技術史のなかで「標準化」「互換性」に焦点を当てたユニークな書籍。ネジの規格からインターネットの通信方式まで、様々な標準化と互換性の事例を挙げる。
成熟経済では差別化と独自性が競争力の源泉だが、萌芽段階では如何に爆発的普及をさせ市場を創るか、つまり製品の標準化と互換性が欠かせない。産業革命後は自然発生的に標準化が進んだように思っていたが、個々人の癖や好みの違いを意図的に統合する挑戦者たちの様はなかなか興味深い。いまでこそISOなどの国際規格が普及しているが、近代化初期の過渡期においては、優劣の問題もあり、覇権争いが極めて熾烈であったろうことが容易に想像できる。まずネジのデジュールスタンダードから始まった歴史が、国家の主権が強くなる一方で経済はシームレスになっていくにつれ、意図的もしくは結果的なデファクトスタンダードに移っていく様がよく理解できる。