紙の本
科学の本ではない
2015/06/30 07:19
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投稿者:かねたん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「長~いまえがき」から断定が多く、タイトルにもある「科学する」態度とは異なるのではないかと思いつつ「第1章 音楽と科学」、「第2章 音楽が不可欠な現代社会」まで読み進めたが、やっぱり違和感があって、「第3章 音楽を科学する」を読み始めたところで、読み進めることを放棄した。
そして、「長~いまえがき」でやめておけば良かったと後悔している。
全ての読者にとって無価値だとは思わないが、小生には価値のない本だった。
紙の本
ストレスとホルモン、音楽の関係。
2011/12/15 16:28
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
正直、タイトルまでにはまだ遠い、と感じる内容である。著者もよく分かっているが、「心」すら科学的にはっきりと説明ができている訳でははないのである。本書はこの大きな課題に向かっての、著者の研究の歩みの経過報告というところ。著者の研究に即した副題を考えるとしたら、「ストレスと音楽、ホルモンの関係」だろうか。
「なぜ音楽で感動するのか」は本書を読んでもわからない。おそらく「感動とはなにか」すら科学的な言葉での説明はまだできていないのだから、しかたのないことなのだろう。とりあえずまずはストレスとの関係から著者はとりかかった、と理解した。
ストレスを感じたときに分泌されるホルモン、特にテストステロンについてが著者の研究である。ストレス時のステロイドホルモンの分泌は音楽で抑えられるらしい。
調査データはあまり多くなく、どう考えるかの文章がほとんどなので、研究としての評価は指示されたHPでも見てからしかできないと思うが、音楽とストレス調節との研究が少し進みだした、という現状は良く分かった気がする。
副題の「ホモ・カントゥス」には、著者が音楽の意義を「演奏する」においていることを示している。しかし、現状の研究はまだ「聴く」ことに対してが多い。本書の本題に戻れば、「音楽の感動」というときに「演奏」と「聴くこと」のどちらを意識して使っているのかもあいまいである。本書のタイトルを読んだ時の直観は「聴くことで誘起される感動」だったのだが。これも、これからの課題であろう。
まだまだ先は長いのだろうが、「科学的にみせかけた」諸説にまどわされないように、という著者の態度は評価したい。今後は是非「感動」をまず科学し、さらに音楽との関係を科学して欲しい。
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本書に書かれていることが、仮説が科学的に完全に実証されているかどうかは別として、課題設定と着眼点はおもしろい。音楽と社会と人間の関係に挑む姿勢は、多くの人にとって生活する上でののサプリメントになるだろう。脳科学と音楽の関係も研究途上だということを踏まえて読めばよいと思う。
31頁に「意志の勝利」に関するエピソードがある。ドイツ・ナチスの宣伝相ゲッペルスによる、視覚と聴覚に訴えたナチス思想の宣伝を例に政治と音楽の関係の密接さを紹介している。余談だが、私は、同映画(1934年レニ・リーフェンシュタール監督 ナチ党の全国党大会記録映画)を2009.8.24に渋谷のシアターNで観た。以下のURLは参考。 http://www.youtube.com/watch?v=duRJE_7IB14
当時の社会情勢に鑑みればヒトラーの出現は、必然であったとさえ思える。リーダー・指揮者不在の国家機能、国民を取り巻く幾種の閉塞感、
そしてヒトラーのカリスマ性が、重なりあったから、異常な政策がなされたのだろうか。映画の構成はすばらしかった。普通の市民は簡単に洗脳させられただろう。ヒトラーの演説にも感動させられた。本当に話がうまい。あの間とトーンに聴衆の心は簡単につかまれるはずだと実感した。先行きが暗い当時であればすがりたくなるだろう。
閑話休題。
音楽は、ギリシャ時代から自由七科で数学と同列に研究されていた。それが阻害されたのは、芸術至上主義の時代、すなわち「ロマン派」からである。中世からバロックは音楽は常に科学だったという。科学者が音楽を研究するのは当たり前で、研究者が演奏家・作曲家でもあった。そういえば、学生の頃勉強していた和声、対位法は数学に近いイメージがある。当時はよく理解できずに型どおり「解答」していただけど。
著者は、ドイツ・ロマン派が、ゲーテとシラーに協働して、音楽は、現実から逃避し科学と自然と対峙したと記している。きっとその時代の社会背景からなのだろう。しかし、作曲法・管弦楽法はロマン派期も十分に研究がすすめられているから、それは言い過ぎかと思う。
・音楽でハイになるのはドーパミン系が作動する。
・音楽能力には、最適なホルモン量が影響する。テストステロンの量が変わる。
・音楽は、テストステロンを通じて、攻撃性や愛情をコントロールしている。
・音楽の機能は、人間の社会化を促進する。
以上のことは、本書のみでの検証で十分とは言えないが、頭の片隅に置いておいてもよいはずだ。
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『音楽の感動を科学する―ヒトはなぜ“ホモ・カントゥス”になったのか』(福井一、2010年、化学同人)
本書は、音楽を幅広く取り上げるものである。音楽研究の歴史、音楽と社会とのかかわり、音楽が脳に与える影響、音楽の才能、なぜ音楽が必要なのか、など。
個人的に一番おもしろかったのは、音楽がテストステロンというホルモンの分泌に作用するというもの。男性ではテストステロンが減少し、女性では増えるという。これが歴史的(人間の進化過程)に見た音楽の機能と考えられるということに驚きがあった。
またいつか読み返したいですね。
(2011年1月8日 大学院生)
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音楽の感動を科学する本。音楽を聴いたら、脳がどのような反応をするのかを解説している。
で、脳からホルモンが出ているから情動している、だから感動していると判断しているが…。
個人的にはなんだか納得できない。
また、巻末に音楽の成立に対する著者の考えが出ているが、納得できない。
全体として、自説を補強するもの以外は安易に排除しているが、自説を補強しているものが割と安易に賛成してる点もあまり好きになれない。
なんでも、脳を機構的に判断すれば科学ではないと思う。
私との意見の違いが大きい本でした。
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返却期限が迫って読み飛ばし。
まだほとんどのことがわかっていない段階でかなり薄く上っ面をなでている印象。努力は感じるがタイトル負けは否めない。
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難しいテーマに取り組んでいることは分かるが、
あきらかに根拠のないことを論じていて
「えせ」科学本になってしまっている
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人間社会におけるストレスを癒やすために音楽があるということが書かれていたが、個人的には人間が生き延びるために音楽があるのではないかと思う。でも時々思う、素晴らしい音楽を聴いたらもう死んでもいいとか、安易に思う。
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「音楽と脳の関係」「音楽とホルモンの関係」を、臨床実験などから解き明かす科学書。
・[男性]音楽活動はテストステロンの分泌を抑制する。それがリラックス効果を生む。
・[女性]音楽活動はテストステロンの分泌を増進する。女性にとってテストステロンの増加はリラックス効果をにつながる。
・人間は、自分の属する文化圏の音楽を繰り返し聴き、その時に経験する脳活動の変化を体験し続けることによって、属する文化の音楽に適応するようになる。
・脳は、旋律/和音/フレーズなどを認識、解釈するために左右それぞれの脳を総合的に働かせる。
・音楽活動はホルモン分泌に働きかけ、また脳の多様な分野を刺激することで、情動を生み出す。
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音楽を聞いたり演奏したりした時に、人間の身体にどのような変化が起こるのか、またそもそも音楽は何故必要とされるのかを研究した本。ホルモン分泌や脳の活動領域、神経伝達物質、など、最近の研究内容を概観できる内容でした。高校程度の生物の知識は無いと少し難しいかも知れません。
特にカギとなるのは性ホルモンの一種で、男性化や攻撃性に関連のあるテストステロン。
音楽家の男性はテストステロンが減少することで女性化し、女性は増加することで両性具有化(男性化まではいかない)するというのは周囲を見ても納得です。
音楽を科学的に研究することはまだ始まったばかりのようなので、今後の研究の進展が楽しみです。
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たまたま小沼純一の『サウンド・エシックス』と平行して読んだ。
小沼の本の冒頭は、音楽を場との関わりを取り上げ、いつでもどこでも個人がイヤフォンから音を聞いている聴取環境への疑問を呈していた箇所があった。
翻って本書では、音楽は社会的な機能を持っており、社会のありようと密接に関係がある、という。
おや、響きあう部分か――と思ったのは、ここまで。
あとは全くといいほど重なっていない。
というか、両人が対談したらどうなるのだろうかと思うくらい違う。
本書は、「音楽を科学する」という立場。
従来の音楽学者、評論家、そして教育者に対して、相当批判的な態度をとっている。
音楽的才能は、テストステロンという性ホルモンに左右されるというのが核となる筆者の主張。
したがって、音楽的才能は遺伝である、と。
彼の主張では、人間は社会生活での衝突を避けるために音楽が発達したというのだ。
本書では筆者の行った実験についても説明しているが、専門家向けの論文ではないので、結果だけがかいつまんで説明してある。
もちろんその専門的な論文を紐解き、真偽を確かめる力は自分にはないのだけれど・・・
いや、それゆえに、読者としてのコミットメントが阻まれている気がする。
科学主義を主張する筆者の姿勢が、なにやら非科学的な身振りに見えてしまうというパラドックスを感じるというか。
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音楽の科学的解明は全然進んでいない、と私はいつも嘆いているのだが、本書はどうやら生化学方面から、新たな知識を与えてくれそうだったので、読んでみた。
しかし読み始めてびっくりしたのは、文章の頭の悪さである。いきなり、欧米式「個人主義」を全面的に批判し、戦後の日本はこれの影響を受けたせいでひどいことになった、などと主張している。「個人主義」を十把一絡げに全面非難し去るなどというおよそ幼稚な知性は、読書の上では滅多にお目にかかれない。「個人主義」以外にも、本書前半の文章はひどく、めまいに襲われた。
薄っぺらで安直で破綻した論理、根拠の薄い断言、他者的なるものへのヘイトむきだしの放言。・・・こうした特徴はネトウヨのものである。もしかしたらこの著者は本当にネトウヨかもしれない。
そう思ってうんざりしたが、音楽をめぐる生化学的な知識に出会えるかも知れないという望みを抱いて、我慢して読み進めたところ、後半は専門的な生化学の話になって、面白かった。
リズムと、旋律・ピッチを認知する箇所は脳の別々の部位にある。音楽を聴いて認識的・構造理解的に把捉しようとする部位と、情緒的に反応する部位も、別々の場所にある。こうした指摘は示唆的で、興味深い。
いずれにしても、音楽を経験するということは、脳の特定の箇所ではなく、脳全体を活用したものだということは大切である。
著者はテストステロンという男性ホルモンの一種に着目し、これをめぐる観察と分析が後半のほとんどを占める。
テストステロンは男性ホルモンだが、女性にも男性の1割程度存在しており、これが高まると攻撃性や支配欲が強くなるらしい。
さて、音楽聴取は、一時的にこのテストステロンを、男性では低下させ、女性では上昇させるというのが、面白い。つまり音楽が男性・女性を中性化させるのである。
著者はついでに古今の作曲家にゲイやバイセクシャルが多いことも指摘している。そういう意味で、音楽と「性」の奇妙な関係が記述されている。
しかし、音楽に関与するホルモン・神経伝達物質はこれだけではないのではないかという気がする。情動にも作用しているのだから、かなりの種類の神経伝達物質やニューロンが活性化するはずだ。この本ではそこまで話は進められていない。
なにしろネトウヨレベルの脳の著者なので、この本の内容も半信半疑で受け取っておいた方が良さそうだ。
もっともっと、音楽をめぐる生化学が発展・充実してきたらいいのにと思う。ついでに遺伝子関連で新発見がないか、気になるところだ。
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最後の最後で、やっとこの本の意味が伝えられたというか、そこに至るまでの文章を削れば、もっと良いものになったのではないのでしょうか。いやもう、本当に最終章にたどり着くまでは、読むのも辛かったです。
著者の熱意というのは、どの形態の本であっても必要だと思います。それがわざと俯瞰的にしていようとも、わざと一人の目線にしぼっていようとも。ただそれは、小説の話であって、専門書の話ではないと思います。
この本に限っていえば、これがどの程度の専門書なのかが判断し難いことが、読みにくさに繋がっているのではないでしょうか。音楽を科学だって、へーと軽い気持ちでとったひとにとっては、あまりにも説教くさく聞こえるのではと思いますし、逆に予備知識を多少なりとも持っているひとには、既知の事柄を羅列するのにページ数をかけすぎている。その辺のバランスは、むしろ、著者ではなく編集さんのお仕事だったのではないでしょうか。それとも、編集さんを押し切って載せた文章だったのかしら。
なんにせよ、著者の「認められたい!」が前面に出すぎてしまっていて、折角のコンテキストが追いやられているように感じたところが多々ありました。
本で述べられている説に関しては、まだまだ仮説状態のものもあると思うので、今後、彼とまた他の研究者の成果を待つのみとなりますが、音楽によりテストステロンが下がる(女性の場合は上がる)のは興味深いです。音楽が娯楽以上の価値を持つという考え方には賛成です。これまでにも、様々なケースがあって、音楽に関わるひとたちはこの本の内容を経験を通して「知って」いると思うのですが、いかんせんまだ「証明」されていないので説明するのが難しい。
私が修士課程の論文を書いていた際に、教授に言われた言葉です。「論文というのは、すべてを解明する必要はない。ひとつの事柄のその小さな小さなカケラを、どうにか説明するだけでいい。あとの謎は、これから自分が、もしくは世界中の研究者たちが、一生をかけて研究し、繋げていければいい」。であれば、この本が解明していないことはすなわち、これからの課題として提示されただけに過ぎないので、大事ではないかもしれないですね。
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書店で見かけて、化学同人の双書であり、目次も興味深い内容だったので購入してみたが、オリヴァー・サックスなどの著作などと比較して、ちょっとキビシイ内容。価格的にもつらい。多様なテーマを網羅し、情報も盛り込んであるが、統一感がなく、トリビアの集成になっている。フロイトらをエセ科学として一刀両断にする割には、テストステロンの影響でいろんな現象を説明しすぎたりしている。また筆者の関わった研究として、作曲家の作曲時期とテストステロンの年間変動を比較したデータが紹介されているが(139ページ)、これ、ひょっとしてかなりずさんなデザインではなかろうか。前向き研究を行わないとはっきり結果を出せる代物ではなさそうである。ゲッベルスをゲッ「ペ」ルスと書いたり(31ページ)、校正面でもいろいろ疑問点がある。ローマックスの研究に言及した部分など、トリビア集としては興味深い内容もあった。
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【所在・貸出状況を見る】 https://sistlb.sist.ac.jp/opac/volume/207178