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月光に書を読む
著者 鶴ケ谷真一 (著)
月光に書を読んだ古人に思いを馳せ、近くは類稀なる随筆家であった岩本素白や、慎ましい人柄と博識を愛された柴田宵曲の姿を描き、人間にとっての書物の意味を考える。※この商品は紙...
商品説明
月光に書を読んだ古人に思いを馳せ、近くは類稀なる随筆家であった岩本素白や、慎ましい人柄と博識を愛された柴田宵曲の姿を描き、人間にとっての書物の意味を考える。
※この商品は紙の書籍のページを画像にした電子書籍です。文字だけを拡大することはできませんので、予めご了承ください。試し読みファイルにより、ご購入前にお手持ちの端末での表示をご確認ください。
目次
- 月光に書を読む(月光と灯火
- 比喩としての書物
- 言葉の力
- 鳥の言葉 ほか)
- 素白点描
- 読書人柴田宵曲(幼少年時代(明治三十年‐大正三年)
- 俳席への参加とホトトギス入社(大正四年‐七年)
- 輪講参加から大震災(大正七年‐十二年)
- 子規全集の編纂(大正十三年‐十五年) ほか)
著者紹介
鶴ケ谷真一 (著)
- 略歴
- 1946年東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業。「書を読んで羊を失う」で第48回日本エッセイスト・クラブ賞受賞。他の著書に「猫の目に時間を読む」「古人の風貌」など。
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紙の本
名読書人・鶴ヶ谷真一
2008/05/06 22:54
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:つぶて - この投稿者のレビュー一覧を見る
静謐な文章でつづられた随筆である。読み始めてからほどなくして、はやく書き留めておかないと、どこかに消えてしまいそうな、心に残る一文があった。
<こんな話を読んだことがある。泉鏡花は原稿執筆のおり、ふと忘れた字があって傍らの夫人に訪ねた。夫人が宙に指でその字を書いてみせると、鏡花は「ああ、そうか」と言ってから、真顔で「早く消せ」と言ったそうである。尊い文字をそのまま書きっぱなしにしておいては、霊ある文字は後でどのような祟りをもたらすかもしれない…。鏡花は言葉(この場合は文字だが)に霊力を認め、言葉のほうでもそれに応えてみせたのだろう。P32>
あやしげな空気を帯びた名文ではありますまいか。この一文からも伝わるのだが、著者は紹介する人物の魅力を、自身にまといながら筆をすすめる。
岩本素白を語っては、選りすぐりの引用文をからめ、余韻の残る随筆に仕上げる。柴田宵曲を語っては、生前の柴田宵曲を知る八木福次郎氏から聞いた話を効果的に織り込みつつ、その生涯をくっきりと浮かび上がらせて見せる。
中村幸彦氏がどこかに書いておられたのだが、良い読書人というものは読んだ書物から新たに良い書物を作る人のことだとか。著者は、岩本素白を読み、柴田宵曲を読み、そこから、こうして良い書物を生み出された。まさに名読書人といわねばならない。