名句 歌ごよみ[冬・新年]
著者 著者:大岡 信
日本を代表する詩人・評論家の大岡信による名句・名歌アンソロジー。万葉の時代から現代まで、古今の「冬・新年」の秀作を精選し、詩情あふれる解説で綴る。冬・新年のエッセイ5編も...
名句 歌ごよみ[冬・新年]
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商品説明
日本を代表する詩人・評論家の大岡信による名句・名歌アンソロジー。万葉の時代から現代まで、古今の「冬・新年」の秀作を精選し、詩情あふれる解説で綴る。冬・新年のエッセイ5編も収録。
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歌を「読む」楽しみを知ることができる本
2001/01/10 23:01
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投稿者:碧氷 - この投稿者のレビュー一覧を見る
角川文庫 「名句 歌ごよみ」は、「春」、「夏」、「秋」、「冬・新年」、「恋」の5シリーズで構成されている。筆者(および歌の選者)は、朝日新聞の「折々のうた」などでお馴染みの大岡信氏。4つの季節と「恋」というテーマに沿って、日本の名句・名歌が古典から近代まで、幅広く紹介されている。歌のジャンルも、短歌、俳句はもちろんのこと、俳諧付句、連歌、漢文詩、地方の歌謡など多岐にわたっており、まさに「名句 歌ごよみ」のタイトルにふさわしい。
近年、俳句や短歌がちょっとしたブームになっているが、歌というのは「詠む」よりも、「読む」ことの方が難しいように思われる。歌を「詠む」ための程良い教本は多々あるが、この「名句 歌ごよみ」シリーズは、歌を「読む」楽しみを自然体で教えてくれるものだと感じた。各シリーズ共、大岡氏の膨大かつ強固な知識に基づいて選ばれた名句が並んでおり、また歌に付された1ページの解説は、平易かつ的確な内容と、歌を「読む」楽しさのエッセンスが凝縮されている。歌の現代語訳が書いてあるわけでもなく、短い解説になるとほんの6行ほどで終わっているのだが、各歌の魅力が存分に引き出されているのは、まさに見事というよりほかにない。私は短歌や俳句に強い興味はあるが、「詠んだり」、「読んだり」する事に関しては、まったくの素人である。それでも各歌について必要な理解が得られ、歌や句を「読む」ということのコツと奥深さを十分に知り、楽しむことができた。また「読む」ことを知ることによって、歌を「詠む」際のヒントにもなり得るものである。
「冬・新年」というシリーズでは、「冬・新年」という季節から、「時雨」、「雪」、「氷」、「正月」、「鴨」という季題がピックアップされ、各季題ごとに章分けがされている。1つの章ごとに完結された内容になっているので、読んでいる時の季節や気分に合った章を選んで読むという楽しみ方もできる。1つの章は、6ページ前後の概要で始まり、その後、各季題にちなんだ(必ずしも季題と同じではない)歌や句が40ほど、1ページに一つずつ紹介されている。この構成については、他の季節のシリーズでもほぼ同様である。一例をあげると、「雪」という章の「更くる夜や炭もて炭を砕く音」という句は、「夜更け、火鉢に火をつぐため、炭を炭でたたいて折る。高く響く音に、冬の夜のひきしまった寒さがある。」といった解説がついている。それぞれの歌・句に込められた詠み手の心情や、詠み出された風景、その色・音・香りの美しさなどが簡明な言葉でつづられている。意味を解説しているだけでなく、詠み手や出典された歌集の解説、時代背景などについても書かれており、日本の歌の入門書としても適当だと思われる。
全体を通して、特定のジャンルや時代にとらわれることなく、与えられる情報量も適当で非常に読みやすい。肩肘張らずに、素人でも歌や句を楽しむことのできる良書であると思う。