読割 50
電子書籍
丸山真男 ――ある時代の肖像
著者 水谷三公 (著)
「進歩」が輝いた戦後の一時代は、丸山真男の時代でもある。「超国家主義者」、「日本ファシズム」批判に始まる論考と発言は、進歩的論壇の流れをつくり、今も広く読者を集める。講和...
丸山真男 ――ある時代の肖像
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
商品説明
「進歩」が輝いた戦後の一時代は、丸山真男の時代でもある。「超国家主義者」、「日本ファシズム」批判に始まる論考と発言は、進歩的論壇の流れをつくり、今も広く読者を集める。講和問題や朝鮮戦争、ベトナム反戦や憲法九条、天皇問題などに現われる軌跡をたどり、戦後日本の夢と悔恨をふりかえる。
関連キーワード
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
忘れられた丸山真男
2004/09/15 14:03
13人中、9人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今、丸山真男と聞いてピンと来る人は少ないのではないか。
知っているとしても恐らく40代以上に限定されるのでは
ないか。「知識人」の寿命なんて案外短いものなのだ。
しかし本書を読んでその丸山真男は1997年あたりまで
生きていたと知って私はほとんど驚倒した。とっくの昔、
おそらく1970年代の末あたりに死んでいたと思って
いたのに怪しや丸山は生きていたのだ。しかも90年代に
入っても評論活動もほそぼそとながら続けていた。
「満つれば欠ける」という。全盛時代を経験したらあとは
下るだけとは全盛時代を経験したことのない私には嬉しい
言葉だが、この言葉ほど丸山に相応しいものは恐らくある
まい。文芸春秋を下品な三流雑誌と馬鹿にし、岩波書店発行
の雑誌「世界」を根城に国内政治、国際政治はもちろん社会
情勢一般を含む森羅万象を語り続けた丸山。日本の知性の
代表として東京大学法学部という象牙の塔の要塞から日本
国民に進むべき進路を示し続けた丸山。岩波新書の「日本の
思想」は受験問題によく出るという風説を伴って、ある時代
まで受験生の必読書として指定され続けていた。しかしその
丸山にある日突然試練が訪れる。「栄華の巷を低く見る」
ハイカラな山の手貴族の代表だった丸山が、下町庶民派
知識人の代表吉本隆明から執拗な攻撃にさらされることに
なったからだ(このあたりの経緯は竹内洋「学歴貴族の
栄光と挫折」中央公論社に詳しい)。そして最後は全学連
に罵声を浴びせられ小突きまわされて東大を追われるように
さってしまう丸山。しかしそれから20年以上も丸山は
生きていたのだ。
今改めて読み返すと丸山の一体何処があれほど日本の
学生にアピールしたのか全く理解できない感じがする。
やたらと難解な漢語と外来語を乱用し、文章は難解にして
意味不明。福澤諭吉言うところの「サルでも分る文章」
とはおよそ正反対。「こんなものをどうしてありがた
がったのか」が不思議なくらい。そして「どうしてそこまで」
というくらいに「反米・親ソ・親北朝鮮」。情報が限られ
知らなかったから北朝鮮を支持したのかと思いきや
冷戦が崩壊しロシア・中国でさえ「朝鮮戦争を始めたのは
北朝鮮」と公式見解を発表している1990年代になって
もなお本書によれば丸山は「北朝鮮は悪くない」と主張し
続けていたらしい。
水谷三公さんは左翼全盛時代に一人その左翼の横暴に
異を唱え続けた稀有の知性の人である。時代に流され
ない透徹した目で捉えた時代の寵児「丸山真男」は
現代に生きる全ての知識人必読の書といえよう。