読割 50
電子書籍
東京ヴァンパイア・ファイナンス
著者 著者:真藤 順丈 , イラスト:佐々木少年
真夜中に出没し、超低金利で高額融資をする『090金融』ヴァンパイア・ファイナンスを営む万城小夜。今夜も獲物=融資客を求めて蠢く。 デート終わりの送りオオカミをめざす日野健...
東京ヴァンパイア・ファイナンス
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東京ヴァンパイア・ファイナンス (電撃文庫)
商品説明
真夜中に出没し、超低金利で高額融資をする『090金融』ヴァンパイア・ファイナンスを営む万城小夜。今夜も獲物=融資客を求めて蠢く。 デート終わりの送りオオカミをめざす日野健壱。 性転換手術をしようとしている大田美佐季。 振り込め詐欺グループに復讐を目論む『やえざくらの会』の老人たち。 ドラッグ・デザイナーを辞めたがっている濱田しずか。 都会のアンダーグラウンドで息する彼らは小夜に出会い、融資をうけるかわりに自身の問題に首を突っ込まれまくる。そして、債務者それぞれ衝動や欲望をフルスロットルにし、ひしめきあって無限に増殖するのだった──!!
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紙の本
闇にうごめく者どもの遠吠え
2010/03/05 18:31
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かげろう - この投稿者のレビュー一覧を見る
都会のアンダーグラウンド/夜の闇に現れ、人生に不完全燃焼している輩に、半ば無理やり金を貸してその人生に介入――首を突っ込むモンスター、万丈小夜。
闇金融としては、超低金利(10日で0.1割)で貸付けをするヴァンパイア・ファイナンスの目的は、果たして。
現代の怪物、闇に蠢く者どもの遠吠えが、今夜も彼女を呼び寄せる!
/*/
この作品に含まれていないもの。
・ライトノベル成分(不足気味)
・ラブコメ(ラブがあってもコメがない)
・萌え萌えサービスシーン(サービスシーン自体はありますが、萌え……とかはないな)
・ファンタジー(吸血鬼モノではありません)
この作品の主成分は、現代社会で完全燃焼して生きることが出来ずに鬱屈している、それ故に「怪物」じみた一般人。そしてそれを引っ掻き回して夜を跋扈する、傍若無人な金貸しの少女の嵐のような行動力。おまけに、それらを包含する都市の夜の闇。
オムニバス形式で進められていく「怪物」達と小夜とのやり取りの中で生まれていく、義理でも人情でもなく、金利(トレイチ=10日で0.1割)による謎の絆は、きっとそこらのファンタジーやラブコメでは到底表現し得ないだろう。
現代社会の闇を、跳梁跋扈する怪物じみた債権者たちと、その闇も怪物も引っ掻き回す万丈小夜の掛け合いが面白くてたまらない。
それでいて、なおかつ人間の闇をハードコアに描くのではなく、あくまでもコミカルに描かれているこの作品に、今までにない不思議な魅力を感じずに入られない(作中でおそらく一番可愛い女の子が、ドラッグデザイナーってどういうことだ?)。
はっきり言って荒削りな作品だし、恐らく執筆中の作者の頭の中も、作中で描かれる夜の闇のように混沌としていたと思われる。この圧倒的な夜の質量をまとめ切れていません。結末も尻すぼみだと思う方が多いだろう。
けれど、作中の言葉を借りるならば、夜の闇というのは、
「限りなく実態の不定形な、誰もがその存在を実感できない存在」
ではなかろうか。
美文を並べ連ねるのではなく、ただただ混沌とした巨大な存在を、原稿用紙の上にぶちまけようとしたような、そんな作品である。まさにこの作品が描こうとしている、夜の闇そのもののような展開と文体。
思わずページをめくらずにはいられない怒涛の展開、広がり続ける夜の謎、万丈小夜の正体――
この風呂敷は、もともと畳む事を想定されていない。
否、夜闇を畳むなんておこがましいと、作者は思ったんじゃないだろうか。
さぁ、あなたも夜の闇のページを開いてみないか?
紙の本
金利の代わりに得るもの
2009/02/08 20:21
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くまくま - この投稿者のレビュー一覧を見る
片方の犬歯は金歯。全身黒ずくめ。万城小夜はタクシーに乗って深夜の街を徘徊する。求める客は融資の相手。ほとんど信用度がないような連中にも、トレイチ(十日で0.1割の略らしい)という闇金の常識では考えられない低金利で、数百万から数千万の現金をポンと貸し付ける。貸付の条件は金の使用目的を話すことのみ。
今回のお客さんは、送り狼を目指して貢ぐ派遣労働者、振り込め詐欺グループに復讐を誓う高齢者たち、抜群のスタイルを捨てて性転換しようとする人などそれぞれ何かをするために金が必要な人たち。彼らの間をタクシーで渡り歩き、万城小夜は彼らの人生に介入する。一体彼女の目的は、その資金源はどこなのか。
人と人とをつなぐものは普通、血だったり、情だったり、義理だったりすると思うのだが、ここでは低金利の融資というのが人と人とをつなぐツールになっている気がする。本来なら受け取れるはずの利息を捨てる代償として、万城小夜は債務者の人生に積極的に介入していき、絆をつくる。本来なら一匹狼の情報屋たちも、スイーツを食べると言うことを名目に深夜の情報交換会を行う。そういった特殊な絆の結び方もあるのかもしれないと思った。
ただ、広げた風呂敷の畳み方があまり好みではなく、最後の1章分で一気に評価が下がってしまった。あと、闇金の業界にそんなに共感できないと言うのもそれを助長している。トレイチというけれど、年利に直すと43%にもなってしまうんですよね…