紙の本
芥川賞作品「ひとり日和」の青山七恵氏によるもう一つの傑作です!
2020/06/27 09:40
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、「窓の灯」(文藝賞)、「ひとり日和」(芥川賞)、「かけら」(川端賞)と次々に傑作を発表しておられる青山七恵氏の作品です。同書の内容は、社会人5年目で友人もなく、恋人とは3ヶ月前に分かれたばかりという風采の上がらない「私」を主人公とした物語です。そのような「私」の前に4年間行方知れずだった弟の風太がリーゼント頭をした緑君と共に現れます。突然始まった弟との奇妙な共同生活の中で、弟はなぜか毎晩、私の「観察日記」を書き始めます。一体、どういうことなのでしょうか?弟・風太は何が目的なのでしょうか?続きは、ぜひ、同書をお読みください。
紙の本
そうやって生きる私たち、なのです。
2018/01/23 11:22
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投稿者:kaoriction - この投稿者のレビュー一覧を見る
2017年、ラストに読んだ本。
私の今日までのこの1年間も、明日からのまた1年間も、まどか の毎日とそう変わらない とるに足らない、日記にしてしまえば べつだん面白くもなく起伏のある日常ではないと思う。
たぶん。
でもね。
日記にしてみればほんの2〜3行の毎日であったとしても、その人の1日、内面の1日は 悶々としたり、一喜一憂したり、実はたくさんのことが凝縮されている。
表面上は、つまらない人生。
それでも。
そんなものでしょう、私の日常は。
そんなものよ、私たちの 続く毎日は。
「人間たちは自分のことで手一杯」
「自分たちの人生のほうを深く考え」、
そうやって生きている。
そうやって生きてゆく。
年末で時間もなく心身共に疲弊してますが、少し自分と向き合う時間、新たなる年に向けて…だったかも。
風太みたいな弟がいたら…いいよなぁ。
面倒くさそうだけど、まどか ほどではない。
まどかはほんと、自分で自分の人生をややこしくしている。弟にまで嘘の日常を語って。メンドーな人間。
でも、そういう まどか みたいな人間が世のほとんど、な気もしてしまう。
ウダウダ、グダグダ、悶々と。
そうやって生きる 私たち、なのです。
*
併録「松かさ拾い」も青山ワールドに浸れる佳品。
巻末には磯崎憲一郎との対談「これから小説を書く人たちへ」を収録。面白かったですよ、この対談。
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投稿者:nap - この投稿者のレビュー一覧を見る
必ずしも読まなくてもいいかな。
特にこれといったところがあるわけでもなく。
落ち着いた文章を読みたいときにはいいかも。
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今の若い人には支持されやすい本なのかなぁとは思うけれど、肝心なことは言わなくて、重量軽くすべてを処理しようとするところが私には合わない。
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単調で平坦なモノクロの毎日に、少しだけ彩りが加えられるお話。
全体的に水彩絵の具で描かれたような、ぼんやりとした優しくて柔らかい雰囲気で描かれていて好きでした。
ただどの登場人物にも感情移入できなかったのと、あまりに出来事が起こらな過ぎて(多分そこも魅力なのかもしれませんが)個人的には少し苦手かな。
もう一遍も「松かさ拾い」も同じくとてもやわらかい雰囲気で描かれていました。このラストシーンの映画館の描写がお気に入り。
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小説のコツをわかってる人が、「こうすればいいんでしょ?」って書いた感じ。
でもセンスがいいから、それでどうにかなっちゃってるっていう。
キャラクターが鮮やかで、セリフがおもしろく、見栄えのする設定もあって。
『ひとり日和』のおばあさんとの生活しかり、『やさしいため息」の弟の観察日記的ノートしかり。
肌触りがいいんだよね。
でも、空疎。
煮詰まってないイチゴジャム。
女の子っぽくて、かわいくて、それだけ。
綿矢りさみたいに過剰ではない孤立感に、共感はできる。とても。
陰湿じゃないんだな。ねじれてない。
OLの「わたし」がお昼をひとりで食べるところも、会社の飲み会に憂鬱になるところも。
島本理生もそうだけど、若い女は恋愛を描くのがすきだなぁ。
でも島本理生のように少女趣味ではない。大人の恋愛。
ストーリーもご都合主義じゃなく、抑制されていた。
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*引用*
「でも、ひさびさにあっても、ちゃんと自分から人生をややこしくして面倒なふうに考えてるまどかは、なんか感動的だよ」
「でもあたし、いろいろ考えるの疲れた。あたし、ずるしてもいいから、楽したいよ」
―― 『やさしいため息』 p.126
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毎日同じようなことの繰り返し、代わり映えのしない起伏のない日々。日常生活の手ごたえのなさや、とりたてて希望の持てない明日にふと寂しさをおぼえたり、不安を感じたりするなんてことは、多かれ少なかれ誰にでもあることでしょうネ。そんな感情の微妙な揺らぎが、ごくありふれた言葉で、巧みに表現されています。
併録されている短篇「松かさ拾い」は、とても静かな物語でした。作家がひとつの物語を書くとき、その動機はいったいどこにあるのだろう?と、ふと気になるような小説でした。磯崎憲一郎氏との特別対談も、すごく興味深い内容でした。
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青山氏の本を読むのは『ひとり日和』に続いて2冊目。
全体的な雰囲気はどちらの本もかなり似ていると思う。
観察日記はアイディアとして面白いけど、展開はややご都合的で現実味が乏しい。
締め方も、なんだか唐突だ。
自分を認めたくなくて、つかなくていい嘘を思わずついてしまう。
主人公のように「自分から人生をややこしくして面倒なふうに考えてる」人はたくさんいると思う。
不器用で、一生懸命に考えてしまう人は本当に損な生き方をしているのだろうか。
青山氏の文章は、おぼろげな、人に馴染めない孤独な心をよく表現していると思う。
自分はけっこう好きだ。
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今日一日のできごとがたった数行の走り書きで済んでしまう、そしてその数行のコピペが繰り返される日々の まどかさん。
「これから起こるかもしれないいろいろのことについて、どれだけ考えをめぐらせても起こるべきことは起こるし、起こらないことは起こらない。その場その場でどうにかなるものだ、きっと。それに、うまくいかなかったっていい。」 と、いっときの気持ちの高ぶりをもったものの・・・。
一人はやはり寂しい。 誰かに語ってもらいたい。 数行の一日であっても。
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友人や親しく言葉を交わす同僚のいない夕飯にはまじりっけなしの素うどんを食べる姉としばらく行方不明だったが突然部屋に転がり込んで姉の観察日記をつけ始めた弟。そして弟の友人で他人と関係しようなどとはまったく望んでいない緑くんの物語。さらっとしつつも癖のある人物が語られているが淡々と判で押したような日常を描いている。だがうっかり引き込まれて一気読みした。ディテールはともかくどこにでも転がっていそうな日常だがそれがいい。
ただ、本筋とは関係ないが学食の素うどんでもほうれん草とかまぼこは入ってたような気がする。寂しい夕飯は心配なほどでそれが気になった。いや、これこそがこの姉の人物像をよく表しているところなのかもしれない。
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青山さんの小説かなり好きかもしれない。
読むのは『ひとり日和』に続き2冊目。ひさびさに小説が切れるところで「まだ読んでいたい」という感覚になった。
びっくりするような表現はないが、文と文のつなぎ方や言葉の選び方など、かなり練っているのではないかなという気がする。さりげないふりをしているように見せられるほどに、ほうぼうに手入れがいきとどいている。小説の中の人物に共感する、というよりは造形の手つきに惹かれる感じ。
と言いつつも「よくできた小説」というシステマチックな印象にもならない。ふとすると都会の女性の不安感や孤独について描かれたもののようだが、一つの意味に収まってしまうのを丁寧に避けている小説だとも思う。そこに、青山さんの日常の多様性を見い出す視野の広さと、多様なものを受け止める強い意志が反映されているようで、そういった感覚が自分好みなのではないかと思った。ヘンな言い方をすると、青山さんはかなりしぶとい、というかたくましい方なんではないかと思う。そこに惹かれている自分がいる気がする。
『ひとり日和』の時も何かを言おうとすると難しかったが、これも結局そうなった。
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人との距離感。
とか、空気。
とか、意味の分かんない気遣いと気づかれ。
とか、誰かと一緒にいる時間を持て余す感じ。
とか。
すごくリアルに、じんわり伝わってくる。
無関心で執着心のない風に装っているけど、ほんとはすごく気になるのだ。
こんな風に思ってるのって、私だけじゃないかも。。
じゃあどうして、私はみんなと同じように、恋愛したり、結婚したり、子育てしたり、できないんだろう。
無言の何とも言えない空気の間に流れてくる生活音に存在意義があってすごく良い描写だなって思った。
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代わり映えのしない毎日。なんの盛り上がりもないけれど少しずつ確実に物事が前進。そんな毎日だけど、寂しかったり、孤独だったり、喜び、驚きだったり。心はおsれなりに動いている。小さな日記の嘘の真意。勇気を出して一歩踏み出すヒロイン。何を考えているのか今ひとつ分からない弟。なんでもない日常の断片に光をあてながら、そこから広がる世界を静かに見つめる。
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「今日はどんな一日だった?」
そうたずねてくる弟・風太は
姉・まどかの「日記」をつけている。
なかなか前へ、感情を表へ、中へ入っていくことが
ニガテなまどか。
いつも両親やまどかを振り回して、
突然行方知れずになったかと思ったら
4年ぶりの姿を現した
型破りな風太。
淡々と描かれている
風太の書いた「日記」のなかのまどか。
まどかが少しずつ
自分の日常の輪郭をふちどって
自分自身を見つめ始めたとき、
風太には
誰とも溶け合えない孤独をみる。
自由を感じれなくても
自由だと思っていても
やっぱりどこかでため息。