ファム・ファタル(宿命の女)の強烈なオーラを感じたサスペンス小説
2004/10/21 19:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:風(kaze) - この投稿者のレビュー一覧を見る
大手出版社の文芸誌編集長を務める三村に宛てて、一本の短編小説の原稿が送られてきた。作品のタイトルは『緑色の猿』、作家のペンネームは来生恭子(きすぎ きょうこ)。かつて三村と面識のあった前途有望な作家の卵で、三年前に失踪したままになっている女性だ。しかし、この作品は、まだあの部屋に眠っているはずなのだ。それがどうして自分の許に送られてきたのか? 送り主は誰で、その目的は何なのか? 原稿は、来生恭子の作品を盗作したものではないのか? いくつもの疑問を抱えて、三村は送り主の女性と会うことになるのだが……。
と、こんな感じで、話が滑り出していきます。本来ありえないことが、現に目の前で起きている不可解な怖さ。ミステリアスな事件に端を発する話の序盤から、失踪した女性の姿が徐々に浮かび上がってくる中盤にかけての展開は、息詰まるようなサスペンスで読ませてくれます。
なかでも印象的だったのが、来生恭子という女性のキャラクターでした。
ブルーのスカートに、白いレースのカーディガンを着た女性。
格別に美しい手をしていた女性。
心の中に一匹の怪物を棲まわせ、それに喰い尽くされるように作品をワープロで叩いていった女性。
編集者を前にして、千枚からの原稿の束を、机の上にドサッと置いた女性。
いつの日か作家として立つことを願いつつ、自己実現あるいは自己解放のために、ひたすら作品を生み出していくよりほかなかった来生恭子。そんな彼女の鬼気迫る姿が、複数の登場人物の視点を通して、次第に形を整えて浮かび上がってくるところ。そこに、本書の一番の魅力を感じました。
ただ、話の方向として、私はそっちのほうには行って欲しくなかった。もうひとひねりあって、すっきりとした読後感が味わえたらもっと良かったのになと、それがちと残念でした。最後のエピローグもどうなんだろう。私はないほうがいいと思ったんだけど。ま、この辺は好みの問題ということになるのでしょう。
いずれにせよ、ハードな読みごたえのあったサスペンス小説でした。
事件を追っていくフリーのジャーナリスト、木部美智子が活躍する作品として、すでに第二作『殺人者』と第三作『呪い人形』が同じ集英社文庫から出ているんですね。作者の並々ならぬ筆力を堪能させてくれた本書だったので、そちらにも期待したいと思います。
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1500枚という途方もない枚数の小説は読んでみたいが途中で飽きそう。ストーリーは長めでちょっと先は読めてしまった。だが、「緑の猿」は想像してしまっただけに気持ち悪く、自分の部屋の隅に座っていないか視線を巡らせてしまった。才能は上手く咲くことが出来なければ良いように使われてしまうというのは、やっぱり悔しい物だと思う。
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失踪した小説家志望の女性をめぐる謎。
これが第1作で、電子出版で出され大ヒットになった作品ってことだ。
確かに面白い。後半に向ってぐんぐんひきつけてくる吸引力がものすごい。全てのカギを握る小説家志望の女性像がまたいい。なんというか、書く事にとりつかれいわゆる「日常」を失っていく、そういった閉塞感が不思議と透明に感じられる。まるで、薄い透き通る布を幾重にもかぶせているかのようだ。そして、物語の謎もその布を引き裂くのではなく、剥ぎ取るように顕わになってくる。
ただ、読み手にはちょっと不親切かな。主人公が木部で、主要人物が三村、広瀬、高岡…その上、視点も文中でころころ変わる。ついていくのがしんどかった。
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なかなか読めなかった
どうしてかというと難しいけど
どこに焦点を持って行っていいのかわからなかったからかも
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かなり先まで読み進めてから、ようやくこの本はミステリであることを認識した。かように仕込みがややこしい。もう少しまとめられても良さそう。
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電子書籍で大ヒットしたというデビュー作。
突然姿を消した作家志望の女性と、彼女が書いたと思われる作品を巡る話。
ストーリーは面白いのだが、とにかく読みにくい。
誰が主役で、誰を中心に話がまわっているのか、探偵役すらもわからなかった。登場人物にこれといった個性がないからなのかも。なかなか読み進めなかった。
(図書館)
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久しぶりに硬質な文章を読んだように思う。
午前中はゆっくりこの本を通読2回した。
ミステリーとしてはちょっと完成度を感じる部分があるが純文学風なところがよっちん的にははまった。
三流女性作家の盗作〜幼児失踪事件〜小説家志望女性の失踪が絡みあうミステリーが純文学テイストに書かれている。
「神の手」を持ち小説を生産し続け失踪した美貌の女性来生恭子=「小説を書くということは意識と無意識の留め金を外し、漂う言葉を拾うこと。
小説を書くとは心のなかに怪物を一匹飼うこと。その存在により書き続け
、そしてそれに喰い尽くされ自殺する。」といいながら創作活動続け一作も世に出ないまま失踪。
編集者の三村、医師の広瀬、フリージャーナリストの木部美智子、来生恭子に憑依され小説を書く高岡真紀
「言葉が存在するのは錯覚、相互理解は幻影」
「記号化ー表層ー接続ー宇宙ー闇ーコンタクト
生まれ出ずる者ども。肉体を持たず産声だけを上げる。
真夜中にあなたを見る目
あなたは言語というものが存在すると思っているでしょ。
でも本当はそんなものはないのよ
あれは幻想ーあれは幻覚」
「あたしが死んでも誰も悲しまない。あたしはどこにも帰属していない。
社会的にも愛情的にも。
だから死んでしまっても大丈夫なのだ。
「長く生きれば苦しみ、すなわち死は判断でしかない」
「なぜ人は死を負というのか」
「絶望の中で意識と無意識の間を漂い、存在の意味を問、言葉の無力ーすなわち理解とは錯覚であるという人間の永遠の孤独に突き当たりながら、それでも
内なる力に突き動かされた彼女」
「食べて寝て性欲を満たしてやがて死ぬ。それに不安や不満を感じていても、結局そうして生を費やすしか能がないのが私たち人間です。
それを否定したいから文学が生まれる。生存と生殖、いわば自衛的本能だけが自分たちの姿ではないと言ってくれるものがほしい。
しかしそれは同時に人であることを否定することでもあった。」
うっとりするほど蠱惑的な呪いの言葉。
ミステリーとして書かれてはいるけれどもかぎりなく純文学。
思わずこの「神の手」テイストでおのれの生涯を省みてみた。
「吾は世にエロスとカオスを持たらさんが為に母の胎より生まれ出づ」
中二病の極みだが高校時代からオリジナルのバンドで使用していたキャッチコピー…。
最近では新しい音楽をインプットすることもなく気がつくと昔作ったオリジナルが頭の中を流れてたり…。
「存在苦」それが己れの中で解決できないテーマかもしれない。
産みひりだされ、生まれ損ないとして生を受け、おそらく自己肯定されることが少ない日々を本と音楽で紛らわせていた病床の日々。
長ずるつれ自己肯定してもらう手段として道化と化すことを覚えた十代…。
大学受験に失敗し故郷を捨てた気で来阪。
ギター、バンドという活動で「自分ではない」虚構へのメタモルフォシスの快感と現実逃避を覚えた二十代。
際限なく垂れ流す自慰のようなギターに比べ
美しい旋律と精緻に計��されたリズムセクションの喜びを教えてくれたJUDY AND MARY…。
電気屋→バンド活動をメインにパチンコ屋・コンビニ・書店店員→某大手キャリア代理店→コールセンター→大学常駐→今に至る…。
今を持って自己の所在の在り方を肯定出来ずエヴァではないが「ここにいていいんだ」とする明確な根拠が見出せず居たたまれなさと焦燥感と虚無感をしばしば襲われる。
自己燃焼の美学と偽り、時間と労力で目先の虚しさを誤魔化す日々。
自己表現欲を
何かにすり替えて生をつなぎとめている。
道化ることでかろうじて社会と繋がっている。
自己を無条件で欲してこの存在を肯定してくれ...そんな思いに日夜かられている。
まぁ、ペダンティックだね。
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2月-3。2.5点。
ある編集者の前に、失踪した女流作家と同じ文章の原稿を見せる、謎の女が。
謎の女は、兵庫県の病院にかかっていた。主治医に話を聞き、謎を調べるが。
デビュー作。心理描写が細かすぎ、かつ難解な言葉が多くて時間がかかった。次作に期待。
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デビュー前に失踪した天才小説家をめぐる話。違う人間がその小説家の記憶を持っていたり、これはホラー?ミステリー?とどっちとも取れるギリギリのラインで話が進んでいって面白かった。失踪してもなお登場人物に影響を与え続ける存在感。そしてこの話の中で誰がキーパーソンになるんだ?っていうのも揺らいでいてよかった。何より文章の描写、表現の仕方が良かったわ。「こんな表現の仕方があるのね!」って感じで、とても新鮮だった。
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どの登場人物に感情移入して読めばいいんだ……?と混乱したが来生素子の人となりが判明するにつれ面白くなっていった。
文章力があるなという感想
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うーーーーん。
前回読んだ大絵画展が結構読めたから読んでみたけど。重苦しいミステリで、真剣に肩肘張って頑張って読まないと楽しめないミステリ。
関係性や、それぞれの思惑を読み解いてめちゃくちゃ楽しめるのかなー?
なんか眠いなー時間余ったなーなんて空き時間にちょこちょこ読んでる程度じゃ、入り込めない感じ。笑笑
どーなんだろ?とは思うけど、あれなんでこれこんなんなったんだっけか?まいいや、先進もう。みたいなね。笑笑
ちゃーんと集中してバババババと読まないと、なんとも繋がりが途切れてね。わたしにはちょっと肩こりました。
あと、立ち登るようなリアルな情景っていうのがあんまりなかったのと、引き込まれるような筆力もないなぁ。
2ページくらいであくび。早く終わらないかなぁ。って思うくらいの勢いだった、、、
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本屋で蟻の棲み家が平積みされていて面白そうだったので、同じ作者の作品を図書館で予約。
最初に届いたのがこの本でした。
誰がメインキャラクターなのかが、かなり後半になってやっと理解できた。続編もあるらしい。
ずっとメインだと思っていた人も隠していることが多くあったりして、数回読むと伏線とかを発見できるのかも。
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とにかく読みにくい。
主観がコロコロ変わるからか?
小説がテーマだからか、
自分の文章に陶酔し過ぎでは。
特に会話パート。
恭子のディテールに拘り過ぎていて
途中ストーリー展開が雑な気が。
うーん。
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正直、かなり読みにくかった。相性なのかどうかは分からないが、内容が入りにくかった。結局登場人物の心情や動機がよく分からず、哲学的というか純文学的というか、そういう説明で済まされた気がして理解出来なかった。
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望月諒子のデビュー作品にして、後のライフワーク的キャラクターとなるフリーライター木部美智子シリーズの一作目。
失踪した作家志望の来生恭子が物語のキー。彼女を担当していた文芸編集者誌の編集長、彼女の書いた小説を自分が書いたとと語る謎の女性、その主治医。そして別な事件を追うフリーライターの木部美智子。
サスペンスホラーの様相を呈した感もありながらのミステリー。
複数の登場人物の視点から語られるストーリーは絡まりまくって、どこに向かっているのか見通しが立たず、中々ストーリーに入り辛いし、荒削りな感はある。
ただ著者の作品の特徴は一度ギヤが入るとそのままラストまでのスピードが落ちないところはこの作品でも味わえた。