電子書籍
情事
著者 森 瑤子
【第2回(1978年)すばる文学賞受賞作】「自分が、若さを奪い取られつつあると感じるようになると、反対に、性愛に対する欲望と飢えが強まっていった。セックスを反吐が出るまで...
商品説明
【第2回(1978年)すばる文学賞受賞作】「自分が、若さを奪い取られつつあると感じるようになると、反対に、性愛に対する欲望と飢えが強まっていった。セックスを反吐が出るまでやりぬいてみたいという、剥き出しの欲望から一瞬たりとも心を外らすことができない期間があった」夏の終わり――夕暮が突然輝きを失い、若さへの不安が私を奔放な性に駆りたてる。情事をひたすら追求して、“すばる文学賞”を受賞した話題作。「誘惑」も併載。
著者紹介
森 瑤子
- 略歴
- 1940~93年。静岡県生まれ。東京芸術大学器楽科卒業。広告会社勤務、英国人コピーライターとの結婚を経て、78年「情事」で第2回すばる文学賞受賞。著書に「TOKYO発千夜一夜」他。
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この時彼女はまだ帽子をかぶっていなかった
2019/06/12 15:17
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第2回すばる文学賞受賞作。(1978年)
人はいつ青春のおわりに気づくのだろう。
あるいは、人はいつ自分の老いの予感に恐れるのだろう。
「夏が、終わろうとしていた。」という一行から始まる、このデビュー作を書いた時、作者である森瑤子は37歳の専業主婦だった。
そして、この物語の主人公ヨーコは35歳の主婦。英国人の夫と娘が一人。
「三十三歳を過ぎた頃から、自分はもう、若くはないのだ」という考えに捉われ始めた。
彼女を脅かしたのは肉体の衰えでなく、「精神の緊張感を失う」ことだった。
そして、「セックスを、反吐が出るまでやりぬいてみたい」と、数人の男たちと関係を持ち、この夏また新しい男と知り合う。
それがレイン。
関係を持つ最初から不安な感情に持ちながらもヨーコはレインに魅かれていく。
しかし、たった一つの嘘、結婚していないという嘘が、彼女を苦しめていく。
これは愛情なのか、それとも単なる情事なのか。
森瑤子はこの作品をきっかけにして人気作家の道を駆けのぼっていくのだが、おそらく彼女を支持したのもまた彼女が作品の中で描いたような女性たちだったのではないだろうか。
正確にいうならば、小説の主人公のような行動はとれないまでもそこに至る感情を共有した女性たちといっていいかもしれない。
本名伊藤雅代は「森瑤子」という名前とともに、たくさんの「ヨーコ」を読者にしたのだ。
そして、またちがった夏が、彼女に始まるのだが、それはもう本当の夏ではなかったにちがいない。