- 販売開始日: 2014/08/01
- 出版社: 朝日新聞出版
- ISBN:978-4-02-330377-5
狼少年のパラドクス ウチダ式教育再生論
著者 内田樹
独特の発想と軽妙な文章でファンの多い著者の教育論をまとめた一冊。学力低下から教育格差、大学の倒産、私立小学校まで、ニッポンの教育の現状を独自の感性で鋭くえぐる。学力低下は...
狼少年のパラドクス ウチダ式教育再生論
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商品説明
独特の発想と軽妙な文章でファンの多い著者の教育論をまとめた一冊。学力低下から教育格差、大学の倒産、私立小学校まで、ニッポンの教育の現状を独自の感性で鋭くえぐる。学力低下は日本人全員が同罪、路頭に迷う高学歴失職者たち、上野千鶴子って誰ですか、石原慎太郎の粗雑な文章、早稲田の受験生をなめたパブリシティ、いまの二十歳は半世紀前の十五歳、1966年の日比谷高校生など。
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気軽に読める教育論集、でも内容は濃い
2007/12/08 21:29
6人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:げん - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本の筆者である内田樹は、とある私大の教壇に立ってはいるものの、教育学の専門家ではない。言ってみれば、体験的な現代教育評論と言ってもよいエッセイ集なのであるが、その提言は実に示唆に富む。例えば冒頭(12頁)で、教育の荒廃には「被害者だけで、加害者がいない」、だから犯人探しは無駄だという指摘や、「教育に関しては何を言っても誰からも効果的な反撃がなされない」という意見はその通りだと思う。言うなれば、今交わされている教育改革論議は右も左も全て善意から出ているのであり、それだけに不毛な結論になるのだと私も思う。
それにしても内田の観察は的確で、その舌鋒は鋭い。例えば、若者の堕落や学力低下は、教育の失敗ではなく、むしろより多くの没個性的日本人を作り出そうとしてきた明治以来の教育政策が成功しすぎた結果だ、という指摘(32頁)は逆説的ながら極めて興味深い。今まで誰もそのようなことを言った人はいないのに、そうだ、その通りだよと思わず膝を叩いてしまう。
しかし、欠点がないでもない。第一、このタイトルでは内容が類推できない。その二、エッセイ集の宿命と言ってしまえばそれまでだが、もともとがブログ日記をまとめたものなので、体系的に整理されていないのがかなり惜しまれる。第三、筆者自身の勤務校に関する章は、関係者以外には退屈に感じられるだろう。第四、学生運動に関する回想録風の章には、同時代の人間以外にはいささか独りよがりと感じられる記述も目立つ。
第五、教育論についても、おそらく筆者の目指すのは「文部省解体、大学の自治の回復」という学生運動経験者風の単純な図式なのだろうが、現実的な解決策としてはその中間的な行き方があるはずで、この分野の専門家としては疑義なしとしない。ただ、エッセイ集として割り切って読めば、それはそれで楽しい。例えば、第5章の「石原都知事の粗雑な文章」や第8章の「トミタくんのお父さん」など、わくわくするような内容が詰まっており、哲学者特有の、かつ現代ではかなり廃れた難解な言い回しなどを気にせず、気楽に読むのが個人的にはお勧めである。