商品説明
オレゴンの老婦人が禁断の愛を語る「リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い」。彼に恋人が出来た、ほろ苦い思いを描いた「ラフレシアナ」。先に逝った妻がレシピ帳に残した言葉が、夫婦の記憶の扉を開く「妻が椎茸だったころ」。卒業旅行で訪れた温泉宿で出会った奇妙な男「蔵篠猿宿パラサイト」。一人暮らしで亡くなった伯母の家を訪ねてきた男が語る意外な話「ハクビシンを飼う」。五つの『偏愛』を収録した短篇集。
目次
- リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い
- ラフレシアナ
- 妻が椎茸だったころ
- 蔵篠猿宿パラサイト
- ハクビシンを飼う
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紙の本
虚実の間の揺らめきに味わいを醸し出すストーリーテラーの技
2014/11/20 20:53
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
いつの頃からか耳にする名前ではあるものの、
この作家のことはよく知らない。
はっきり意識したのは、黒木華がベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞したときで、
その映画『小さいおうち』の原作者がこの作家だという。
そちらは未読だがちょっと興味を惹かれたところへ、
短編集があってそれも評判がいいというので、
本書の方を読んでみた。
作者は何やら新聞の、けっこう純文学系の鼎談のようなものにも参加していたから
もしかしてそういう作家なのかもしれないにしても、
少なくともこの短編集は、どちらかというと娯楽小説だろうと思った。
驚くのは読みやすさ。
文章もそうだが、話の展開も興味をそそるもので、
あっという間に引き込まれてしまう。
これは相当なストーリテラーなのではないか。
表題作は題(これはインパクトがある)のわりにリアルな話だと言っていいと思うし、
ほかにもそういうのもあるものの、
いずれも本当なのか幻なのか、
現実と幻想の淡い境界線上で微妙に揺らめくのが特徴ではないかと思った。
結局どちらとも決めかねる曖昧なまま、あるいは不思議なままの話もある。
そうした奇妙な揺らめきの中に、
ときに怖さを、ときに笑いを、ときに優しい情感を醸しだしてみせる。
植物をはじめとして、何か博物学的な?とでもいえる細かさがあるのも個性だろうか。
とにかく読ませるからこの手の小説が好きな読者ならかなり楽しめると思う。
紙の本
かなり変わった雰囲気に満ちている。
2015/09/11 09:58
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者の作品の中でも群を抜いて奇抜なタイトルだと思う。そして内容もかなりキテレツである。妄想ギリギリラインだったり、ブラックユーモアを通り越した歪み系のオチだったり。あまり好きな雰囲気ではないが、インパクトはある。
例えばある話では、主人公が知り合いになった男を変だと思っていて、そのうちラフレシアと付き合っている姿を見始める。ところがそれは主人公のほうの妄想なのだ。妄想の主客が転倒する感覚に、ぞっとする気持ち悪さがあった。
表題作はそれに比べればまだまともで、椎茸はあくまで料理していたらその素材だった頃の記憶が甦ってくるという、非常に観念的な話。わけがわからないようでいて、この感覚はありかなとも思う。