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溺れる人魚
著者 島田荘司
ポルトガル・リスボン。ミュンヘン五輪で4つの金メダルを獲得した稀代の女性スウィマーがピストル自殺を遂げた。ほぼ同時刻、2キロ離れた自宅でリスボン大学名誉教授リカルド・コス...
溺れる人魚
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溺れる人魚 (文春文庫 御手洗潔シリーズ)
商品説明
ポルトガル・リスボン。ミュンヘン五輪で4つの金メダルを獲得した稀代の女性スウィマーがピストル自殺を遂げた。ほぼ同時刻、2キロ離れた自宅でリスボン大学名誉教授リカルド・コスタが射殺され、2つの命を奪ったのは同じピストルから発射された銃弾だと判明した!? 精神外科手術の恐怖を描いた表題作ほか、ナチの非人道的実験やモンゴル帝国の盛衰が現代にもたらした不思議など、最新科学の成果を盛り込んだ、“21世紀本格”へのプレリュードともいうべき短篇集。
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人魚をモチーフとした短編集
2016/08/17 15:20
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
短編3作品が収録されています。
短編なのでお話自体は複雑でもなく、あっさり読めます。
しかし…御手洗さんが海外に行き海外が舞台になって、正直いって読みにくくなったように感じます…生活習慣や考え方など、自分とはかけ離れてるので、お話がすんなり飲み込めません。
御手洗さんも歳をとり、初期のようなトリッキーさや傍若無人ぶりも無くなり、ただの頭の良い人になってしまった気がします。
もうシリーズものを読んでるように感じられません。
電子書籍
悪くはないけど
2019/01/28 00:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:美佳子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
御手洗潔シリーズの22冊目である『溺れる人魚』(2006、文庫は2011年発行)、は表題作の他『人魚兵器』、『耳の光る児』、『海と毒薬』を収録した短編集です。この中で「本格ミステリー」と言えるのは表題作のみですが、その語り口は典型的なパターンからは外れており、最初は何が謎なのか謎で、本来の事件、すなわちミュンヘン五輪で4つの金メダルを獲得した稀代の女性スウィマーがリスボンの自宅でピストル自殺を遂げ、そのほぼ同時刻、2キロ離れた自宅で彼女を無理に外科手術したリスボン大学名誉教授リカルド・コスタが射殺され、2つの命を奪ったのは同じピストルから発射された銃弾だと判明した、というミステリーに到達するまでに女性スウィマーの病状や精神外科手術の恐怖、術後の彼女の廃人ぶりなどにかなりのページ数が費やされるので、これが実は「本格ミステリー」であることに気づくのに時間がかかります。作者の自作解説を読むと、「ロボトミー殺人事件」の当事者で、チングレクトミー手術を施された桜庭章司に着想を得て、精神外科手術の問題点を作品を通して世に問うことに主眼が置かれているようです。
『人魚兵器』と『耳の光る児』は、『名車交遊録』の上下二冊の完全版を作るにあたって、原書房から刊行の条件として書き下した短編だそうです。『人魚兵器』ではこのため、ハインリッヒがスウェーデンのマルメ市からオーレスンド大橋を通ってデンマークのコペンハーゲン市に向けてポルシェの356をかっ飛ばしていきます。作者の自作解説によると、ポルシェには強制収容所のガス室を連想させるような特有の毒気があるのだそうで、その連想から話はベルリンのテンペルホフ空港の下に広がる巨大地下施設で行われたナチスによる生体実験・キメラ(人魚)製造実験に繋がっていきます。
『耳の光る児』は、紫外線を当てると耳が緑色に光る子供がクリミアやタタルスタンやウズベキスタンなどの4か所に1人ずつ生まれたというミステリーを解く話で、その過程で母親たちの背後にかつての大モンゴル帝国の栄光が浮かび上がってきます。
最後の『海と毒薬』は石岡和己が御手洗潔に宛てた手紙で、『異邦の騎士』事件で受けたトラウマを20年の時を経て克服できたことを当時行き着けていた喫茶店などを巡ることで確認できた旨の報告と、この『異邦の騎士』に救われたという読者の女性からの手紙の紹介が主な内容です。
それぞれに味わいがありますが、「御手洗潔シリーズ」と言っていいのかもう分らない感じがしないでもないです。御手洗の魅力の一つであったエキセントリックな傍若無人さは見る影もないですね。