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  3. 美佳子さんのレビュー一覧

美佳子さんのレビュー一覧

投稿者:美佳子

478 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

図書館戦争LOVE&WAR(花とゆめCOMICS) 15巻セット

原作より面白いかも?!

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

有川浩の「図書館戦争」シリーズを原作とする少女マンガは、原作よりも恋愛・人間関係のほうに重点を置いている。漫画と小説の見せ所は違うので、もちろん原作にはない創作部分もたくさんあるが、原作のイメージを維持しつつうまくLaLa読者層の好みを取り入れることに成功していると思う。登場人物を生き生きと描く弓きいろの画力はすばらしい!特に「堂上教官」が男前に描かれていて、私はすっかりファンになってしまった。

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電子書籍

かがみの孤城

電子書籍かがみの孤城

2018/01/21 23:37

名作!

11人中、10人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「言えない。だけど助けてほしい・・生きにくさを感じるすべての人に贈る辻村深月の最新刊。涙が止まらない、感動溢れる一冊です!」と商品紹介にあるように、きめ細やかな愛情をもって描かれたこの小説には癒しと勇気づける力が溢れています。

主人公・こころおよび主要人物たちが中学生なので、最初は感情移入がどれほどできるかちょっと疑問だったのですが、あっという間にストーリーに引き込まれました。
この不思議な城は何なのか、なぜこの7人が選ばれたのか、本当に鍵があって願い事が叶うのか。という謎解きの枠組みの中で、7人それぞれの事情が徐々に明かされて行きます。

たとえば、こころが「心の教室」とかいう不登校の子供たちのためのスクールに通い、そこの仲間たちとだんだん親しくなって、また理解のあるスクールの先生に癒され、母親の理解と援護を得ながら立ち直っていくという筋書きでも十分ドラマは成立すると思うのですが、それはリアルである一方、もしかしたら平凡で味気なかったかもしれません。けれど、こころはそのスクールにすら足がすくんで行けなかったのです。

そこに「鏡の城」というファンタジーの異空間を最後の逃げ場のように出現させ、そこに集められたの子たちの意外な繋がりが(最後に)明かされる仕掛けが加えられることで、こころの成長物語にぐっと面白味が増しているように思います。

その構成力の秀逸さもさることながら、言葉の通じない同級生や無理解な担任の先生等から受けるこころの衝撃や恐怖や憤懣がきめ細やかな愛情をもって描写されているところも素晴らしいです。是非とも「生きにくい」と感じている人ばかりでなく、10代の子供を持つ親御さんたちや学校の先生や学校教育にかかわるすべての大人たちに読んでもらいたい一冊ですね。そのメッセージが果たして通じるのか、やっぱりかなり疑問ではあるのですが。

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電子書籍

花嫁選びの儀、獣王の黄金愛

電子書籍花嫁選びの儀、獣王の黄金愛

2016/06/19 20:37

姫と獅子の純愛物語

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

表題の通り、お姫様と獅子の純愛物語なのかと思いきや、もうひとつの一途な愛が隠されていて、二度美味しい作品でした。不覚にもちょっと涙ぐんでしまった。

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紙の本

架空通貨

紙の本架空通貨

2014/04/12 23:31

破滅の群像

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

池井戸潤の江戸川乱歩賞受賞作品“架空通貨“、読後感はあまり良くないですね。破滅の群像みたいで。ストーリーはある女子校生の父の会社が破綻し、娘が何か打開策はないか試行錯誤する過程でクラスの副担任をしている社会の先生に相談することで始まる。この先生は実は元商社マンで、信用調査をしていたので、その当時のコネを生かして真相を確かめ、できれば彼女の父の会社を救おうと努力する、というのが主線。所有している社債を期限前に償還してもらおうと発行元の会社に交渉に行ったら、その会社は企業城下町の頂点をなす企業で、自社の資金調達のために社債以外にも振興券なるものを発行しており、それが地元で闇金として流通して地元経済を狂わせ始めていた、というのがサブ舞台。かなり読み応えあるけど、ハッピーにはなれない (・へ・)
しかし、文学としての完成度は非常に高いと思う。

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電子書籍

言いにくいことの上手な伝え方

電子書籍言いにくいことの上手な伝え方

2016/06/16 18:34

お役立ち情報満載

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「言いにくいことの上手な伝え方」は期待以上のお役立ち情報が満載でした。
たとえば「雑談力」の基本は聞く(質問する)力として、上司や同僚、男女別に適したネタの例が具体的に挙げられていたり。
また、『困った』人の分類・分析そしてそれぞれの対処法も常に具体例が挙げられているので抽象的にならず、分かりやすく参考にしやすいです。
オブラートに包んだ言い回しの例もたくさんあって、すぐに使えそう。

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電子書籍

漫画家 アリスンセット vol.2

電子書籍漫画家 アリスンセット vol.2

2016/05/23 08:19

いいセレクション

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アリスンの作画の素晴らしさもさることながら、収録作品のストーリーもどれも素敵なお話。私的には「不公平な恋の神様」一番きました。

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電子書籍

チェルノブイリの祈り-未来の物語

普通の人たちの言葉がぎっしり

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

チェルノブイリ原発事故から約10年経って、被災者や、リクイダートル、その妻たち、「チェルノブイリの子ども」たち、などの言葉が集められたこの本はデータや情報としてのチェルノブイリではなく、普通の人たちにとってのチェルノブイリ、放射能なんて聞いたこともない、危険性など理解できないあるいは理解できなかった人たちにとってのチェルノブイリ原発事故の側面を見せてくれます。分からないでもがく人たち、または分かり過ぎているがゆえに政府や党の方針とぶつかりもがく人たち、自分が死ぬことを理解している子どもたちなどなど、決して読んで気持ちのいい話ではありません。でも、貴重な体験談や感想です。

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電子書籍

身代わりの薔薇は褐色の狼に愛でられる: 3

不穏な展開

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

贅沢三昧をし続け、なおもヴァンから金をせびろうとする継母の突然の訪問を受け、深く傷つくローゼ。罵る継母の言動からついにローゼの正体が執事にばれてしまう。しかし彼はローゼを責め立てることなく、彼女の自白を待つ。彼女は悩んだ末に執事にもヴァンにも真実を伝えて、ヴァンのもとを去ろうと決意。まずは執事に告白し、人身売買組織討伐に出ていたヴァンには帰宅後に告白しようと決意していたローゼだったが。。。「その裏切りまじっすか?!」という不穏な展開となり、執事は刺され、ヴァンとローゼは本人たちの意思に反して引き裂かれることに。
ちょっと、どうなちゃうの?と期待を持たせつつこの巻は終了。

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紙の本

空の中

紙の本空の中

2016/03/26 09:34

素晴らしい読み応え

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ストーリー展開は2方向。謎の空港機事故に端を発して、謎の生命体にファーストコンタクトしたメーカーの担当者春名高巳と事故にあった機と一緒に演習参加していた自衛隊パイロット武田光稀のコンビと、事故死した自衛隊パイロットの息子であり、事故当日に謎の生き物を見つけた斎木舜とその幼馴染の天野佳江。その大人と子供のカップルが謎の生命体マターで交錯していく。
その主要4人の個性もさることながら、その他の登場人物も実に生き生きとして魅力にあふれていたり、素敵に狡猾だったり。未知の生命体を巡るSF的研究的要素もあれば、政治的な駆け引きもあり、多感で傷ついた少年・少女の成長物語でもあり、大人なのに微妙にもどかしい進展しかしない恋愛物語でもあり、と、様々な要素が満載の贅沢でエンタメ性の高い小説です。

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紙の本

日米開戦の正体 なぜ真珠湾攻撃という道を歩んだのか

日米開戦の発端は既に日露戦争終結時にあった

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ポーツマス条約を言葉通りに取れば、日本がロシアから得たのは南満州鉄道の経営権のみ。満州は清国が主権を有するということが明記されています。これを陸軍の一部が満州で特殊な利権を得たと(わざと?)勘違いし、その利権を守るために満州支配を画策します。条約を文言通りにとって、国際協調を唱えていた伊藤博文は暗殺されてしまいます。実行犯は朝鮮人の安重根でしたが、陸軍関係者がそそのかした疑いあり。

本来権利のないところで軍隊が駐屯し、現地支配をすれば、当然国際的に非難を浴びます。満州支配は特に英米との関係を悪化させます。中国で台頭していた民族主義・反帝国主義も日本にはマイナスに働きます。こうしたことを予見していて、満州支配や中国への戦線拡大に反対を唱えていた要人たちが次々に暗殺(2.26事件はその一端)、左遷などで葬られていき、中国や米国への理解の足らない陸軍が政局を支配していったため、政治家も外務省も引いては昭和天皇まで、明確な反発を避け、日米開戦への道にずるずると引きずり込まれていったことが克明に描かれています。
陸軍側の読みは実にご都合主義で、アメリカが適当なところで妥協して、停戦の運びになるものと考えていたというから呆れるばかりです。当時の日米の国力(生産力)の差は10対1。まともに戦える筈などなかったのに、一度得たと思われた満州利権を守るため、またそのために既になされた多大なる犠牲を無駄にしないために日米開戦に突っ走り、さらなる犠牲をもたらしてしまった、とのことですが、これは株で大損して、それを更なる投資で補填しようと深みに嵌るあほなケースとそっくりですね。
勝つ見込みがないことは真珠湾攻撃作戦の中心を担っていた山本五十六連合艦隊司令長官もはなから分かっていたようです。彼は「それは是非やれといわれれば、はじめ半年や一年の間はずいぶんあばれてごらんに入れる。しかしながら年三年となれば全く確信はもてぬ」と1940年9月に近衛首相に対して発言しています。

また陸軍軍人でありながら石原莞爾は日米の国力差が分かっていました:「負けますな。(略)アメリカは一万円の現金を以て一万円の買い物をするわけですが、日本は百円しかないのに一万円の買い物をしようとするんですから。」(p49)
彼は東条英機と対立して敗れ、閑職に追いやられてしまいました。

「政党の有力者または有能な官僚の一部は、あるいは故意に、あるいは心ならず、軍部に協力を示し、よって権勢の地位につくことに心がけた」と第47代首相で元外交官の芦田均が振り返ってますが(p459)、この状況、現在も同じですよね。
マスメディアもまさに「軍部に協力を示し、よって権勢の地位につくことに心がけた」という態度そのもので、読売新聞戦争責証委員会『検証 戦争責任』が、「関東軍が、満州国に国民の支持を得ようと、新聞を徹底的に利用したのも確かだ。しかし、軍の力がそれほど強くなかった満州事変の時点で、メディアが結束して批判していれば、その後の暴走を押しとどめる可能性はあった」と指摘しています。この反省が現在に活かされているようには思えません。
そういう意味で、(安倍独裁政権の)今、真珠湾攻撃というアチソン国務長官(当時)をして「これ以上の愚策は想像もできなかった」(p58)と言わしめた愚行を振り返る意味は大きいと思います。
集団的自衛権、原発再稼働、TPPなど、指導者が嘘や詭弁で誤魔化し、マスコミは検証もせずにその嘘や詭弁を拡散し、国民がそれを無批判に鵜呑みにし、一定の方向へ誘導される図式は真珠湾攻撃へ至る道と驚くほど似ています。

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電子書籍

その女アレックス

電子書籍その女アレックス

2015/12/27 05:02

読みだしたら止まらない!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ストーリーは3部に分かれていて、アレックスの誘拐・監禁を扱った第1部(アレックスの様子と誘拐事件を捜査する刑事ヴェルーヴェン)、独自脱出後のアレックスの行動と誘拐事件から一転「正体不明の女(=アレックス)」を追うことになったヴェルーヴェン警部を描写する第2部、そしてその裏にある事実や一連のアレックスの行動の動機を解明していく第3部という構成ですが、第3部の3分の一くらいまで読者(少なくとも私)は?????でいっぱいのまま。一度読み出したら、いっぱいの???が解き明かされないままにはしておけないストーリー展開。ミステリー・サスペンスファンには堪らない話なのではないかと思います。いろんな賞を受賞しているだけはあります。

そして日本語訳も完成度が高いですね。ウン十年前の新潮文庫辺りのフランス文学とか哲学とかの翻訳本なんて読みづらくてどうしようもなかったという印象が残ってますが、『その女アレックス』は日本語作品としてもレベルが高いと思います。ダジャレ的なものは説明的になってしまっているので、ちょっと残念な感じですが、ほんの2・3か所のことですので、「何が何でも原文を」と思ってしまうことはありません。

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紙の本

闇の末裔 12 (花とゆめCOMICS)

待ちに待った新刊!

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

正直、続刊は諦めてました。なので、欲求不満がたまらないように、既刊11巻は本棚の奥に隠しておいたのですが、8年ぶりのまさかの12巻発行。嬉しいですね。クオリティーの高い絵も相変わらずですばらしい。ただ、作中の描写のいくつかには、「少女マンガにこれってありなんだろうか」とびっくりするものがあった。
続きにまた長いことまたされないことを祈ります。

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紙の本

明日の子供たち

紙の本明日の子供たち

2018/06/12 02:12

繊細な気持ちの機微をやさしい視線で描写

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『明日の子供たち』は児童養護施設をテーマにしたお話です。実際に児童養護施設に入ってた当時高校生の女の子が著者に、施設のことをより多くの人に正しく知ってもらいたいので、施設をテーマにした小説を書いて欲しいと手紙を書いたことがきっかけで、著者が取材して作品化したとのことです。文庫のあとがきはこのリクエストをした当事者の方が書いています。

元ソフトウエア関係の営業職だった三田村慎平が児童養護施設に転職するところから話が始まります。彼の施設の子どもたちに対する勝手な思い込みが指導担当の先輩や施設の子供たち、特にしっかりした高校生の谷村奏子に初っ端から打ち砕かれ、少しずつ施設の在り方と子どもたちに対する理解を深めて行きます。本編は5章ですが、章と章の間に子どもたち目線及び他の慎平の同僚たちの目線で書かれた番外編が挿入されています。

基本的に慎平目線で書かれていますが、目線は必ずしも固定されておらず、施設に入所している当事者と施設関係者たちのそれぞれの思いや人生を踏まえた上で、互いにぶつかり、悩み、迷い、歩み寄り、関係を築き上げていく群像劇のような印象を受けます。繊細な気持ちの機微がやさしい視線で描写されており、読者をぐいぐいとカナちゃんや慎平ちゃんや和泉ちゃんや猪俣さんなどの世界へ引っ張り込んでいきます。解説込みで522ページは文庫にしては分厚いですが、読み出したら止まらず、一気読みしました。

私も児童福祉問題に関してはくわしくはないので、この小説を通していろいろと勉強させていただきました。児童福祉は社会の投資であり、「負担」ではないというのは私からすれば当たり前の考え方ですが、「施設の子どもたちはいずれ大人になる【未来の票田】」という見方は目から鱗が落ちるほど斬新に感じました。考えてみればそれも道理なのですが、その道理が児童福祉をもっと重視するように政治家に訴える際にとっさに出て来るかといえば、決してそうではない視点だと思います。

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紙の本

スカラムーシュ・ムーン

紙の本スカラムーシュ・ムーン

2018/04/01 19:06

壮大なドラマの完結

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この作品では『ナニワ・モンスター』で散りばめられた伏線が回収されるので、その内容がきちんと頭に入ってないと不明な点がかなり出てきてしまい、単独作としては読めません。

また時間軸としては桜宮市に建設された東城大付属のAiセンターが炎上してしまういきさつを描いた『ケルベロスの肖像』と重なり、『スカラムーシュ・ムーン』の主役である彦根新吾がその事件で打撃を受けたことが言及されるため、そちらも読んでおいた方がピンと来ると思いますが、知らなくても「そんな事件があった」くらいの言及なので内容理解に支障が出るわけではありません。同様に『ブレイズメス 1990』で登場した天才外科医・天城雪彦のモナコの遺産が彦根の戦略に重要な役割を果たしますが、そちらも知らなくても内容理解に支障はありません。

その他、「桜宮サーガ」と呼ばれる作品群の登場人物たち、たとえば『極北クレーマー』および『ブレイズメス 1990』の世良と、『ジェネラルルージュの凱旋』および『極北ラプソディ』の速水、田口・白鳥シリーズで【電子猟犬】とあだ名される加納警視正もほんのちょい役で登場します。「桜宮サーガの集大成」という位置づけらしいのですが、それなら田口・白鳥コンビもちょい役で登場させてほしかったですね。

肝心の粗筋ですが、『ナニワ・モンスター』で仕掛けた「キャメル・インフルエンザ」による浪速攻撃に失敗した警察庁が新たに吹っ掛ける「ワクチン戦争」の攻防がメインです。彦根はワクチンで攻められることを早くに予見して、ワクチン製造に必要な鶏卵を求めて加賀へ飛び、また「日本三分の計」の第一歩である西日本連合・浪速共和国独立のための資金調達のためにヨーロッパへ旅立ちます。クライマックスはAiセンター潰しでずっと敵対してきた斑鳩の部下で、今回の警察側の軍師である原田雨竜と彦根の対決となります。サイドストーリーとして加賀の養鶏所ナナミエッグの跡取り娘・まどかがワクチン製造のために有精卵製造・納品プロジェクトのためにプチエッグ・ナナミを立ち上げ、幼馴染たちの協力を得て試行錯誤する様が詳細に語られます。こちらの加賀ドラマは微笑ましい若者の成長物語でもあるので、物騒な医療界の大ぼら吹き・彦根新吾と霞が関が繰り広げる浪速攻防戦のスリルと対を成し、独特の味わいを醸し出しています。

『ナニワ・モンスター』単独だといまいちな感じでしたが、この『スカラムーシュ・ムーン』で完成する大きなドラマの前段としての重要性が両作品を読んだ後に分かります。というわけで、セットで読むことをお勧めします。

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電子書籍

ツナグ(新潮文庫)

電子書籍ツナグ(新潮文庫)

2018/01/22 09:54

心が震えて、癒される

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」のお話。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員。

もし一生に一度だけ死者に会えるとしたら、誰に会いたいか、まずはそこからして重い問いです。それができるという前提で進行する物語ですが、依頼者にはそこに至るまでのそれぞれの事情と葛藤があり、それを描写する筆致が素晴らしいです。「アイドルの心得」と「長男の心得」はどちらかというと「ほっこり」する展開ですが、「親友の心得」はどちらかというと心をえぐられるような痛みのある展開、「待ち人の心得」は切なく、そのすべてのエピソードの裏側を描く「使者の心得」で諸々の事情に合点が行き、また仲介者としてその邂逅の前後を目の当たりにする17歳の少年・歩美の感じ、考えたことは何かが語られますが、彼の出した結論は祖母に対する思いやりに溢れていて「ほっこり」できます。

辻村深月の作品を読んだのはこれで3作目ですが、この方は人と人の関りとその関係の中で生まれるあらゆる感情を細かな心の襞まで言語化できる鋭い観察眼と筆力を持っているのだと思います。そして彼女の言葉から感じられるのは包み込むような優しさで、今回もまた泣かされました (´;ω;`)

娯楽性やエンタメ性が極めて低く重いテーマですが、心が震えて、癒される作品です。

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