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美佳子さんのレビュー一覧

投稿者:美佳子

745 件中 1 件~ 15 件を表示

電子書籍

電子書籍かがみの孤城

2018/01/21 23:37

名作!

16人中、15人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「言えない。だけど助けてほしい・・生きにくさを感じるすべての人に贈る辻村深月の最新刊。涙が止まらない、感動溢れる一冊です!」と商品紹介にあるように、きめ細やかな愛情をもって描かれたこの小説には癒しと勇気づける力が溢れています。

主人公・こころおよび主要人物たちが中学生なので、最初は感情移入がどれほどできるかちょっと疑問だったのですが、あっという間にストーリーに引き込まれました。
この不思議な城は何なのか、なぜこの7人が選ばれたのか、本当に鍵があって願い事が叶うのか。という謎解きの枠組みの中で、7人それぞれの事情が徐々に明かされて行きます。

たとえば、こころが「心の教室」とかいう不登校の子供たちのためのスクールに通い、そこの仲間たちとだんだん親しくなって、また理解のあるスクールの先生に癒され、母親の理解と援護を得ながら立ち直っていくという筋書きでも十分ドラマは成立すると思うのですが、それはリアルである一方、もしかしたら平凡で味気なかったかもしれません。けれど、こころはそのスクールにすら足がすくんで行けなかったのです。

そこに「鏡の城」というファンタジーの異空間を最後の逃げ場のように出現させ、そこに集められたの子たちの意外な繋がりが(最後に)明かされる仕掛けが加えられることで、こころの成長物語にぐっと面白味が増しているように思います。

その構成力の秀逸さもさることながら、言葉の通じない同級生や無理解な担任の先生等から受けるこころの衝撃や恐怖や憤懣がきめ細やかな愛情をもって描写されているところも素晴らしいです。是非とも「生きにくい」と感じている人ばかりでなく、10代の子供を持つ親御さんたちや学校の先生や学校教育にかかわるすべての大人たちに読んでもらいたい一冊ですね。そのメッセージが果たして通じるのか、やっぱりかなり疑問ではあるのですが。

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紙の本

原作より面白いかも?!

11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

有川浩の「図書館戦争」シリーズを原作とする少女マンガは、原作よりも恋愛・人間関係のほうに重点を置いている。漫画と小説の見せ所は違うので、もちろん原作にはない創作部分もたくさんあるが、原作のイメージを維持しつつうまくLaLa読者層の好みを取り入れることに成功していると思う。登場人物を生き生きと描く弓きいろの画力はすばらしい!特に「堂上教官」が男前に描かれていて、私はすっかりファンになってしまった。

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紙の本

紙の本明日の子供たち

2018/06/12 02:12

繊細な気持ちの機微をやさしい視線で描写

8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

『明日の子供たち』は児童養護施設をテーマにしたお話です。実際に児童養護施設に入ってた当時高校生の女の子が著者に、施設のことをより多くの人に正しく知ってもらいたいので、施設をテーマにした小説を書いて欲しいと手紙を書いたことがきっかけで、著者が取材して作品化したとのことです。文庫のあとがきはこのリクエストをした当事者の方が書いています。

元ソフトウエア関係の営業職だった三田村慎平が児童養護施設に転職するところから話が始まります。彼の施設の子どもたちに対する勝手な思い込みが指導担当の先輩や施設の子供たち、特にしっかりした高校生の谷村奏子に初っ端から打ち砕かれ、少しずつ施設の在り方と子どもたちに対する理解を深めて行きます。本編は5章ですが、章と章の間に子どもたち目線及び他の慎平の同僚たちの目線で書かれた番外編が挿入されています。

基本的に慎平目線で書かれていますが、目線は必ずしも固定されておらず、施設に入所している当事者と施設関係者たちのそれぞれの思いや人生を踏まえた上で、互いにぶつかり、悩み、迷い、歩み寄り、関係を築き上げていく群像劇のような印象を受けます。繊細な気持ちの機微がやさしい視線で描写されており、読者をぐいぐいとカナちゃんや慎平ちゃんや和泉ちゃんや猪俣さんなどの世界へ引っ張り込んでいきます。解説込みで522ページは文庫にしては分厚いですが、読み出したら止まらず、一気読みしました。

私も児童福祉問題に関してはくわしくはないので、この小説を通していろいろと勉強させていただきました。児童福祉は社会の投資であり、「負担」ではないというのは私からすれば当たり前の考え方ですが、「施設の子どもたちはいずれ大人になる【未来の票田】」という見方は目から鱗が落ちるほど斬新に感じました。考えてみればそれも道理なのですが、その道理が児童福祉をもっと重視するように政治家に訴える際にとっさに出て来るかといえば、決してそうではない視点だと思います。

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電子書籍

電子書籍花嫁選びの儀、獣王の黄金愛

2016/06/19 20:37

姫と獅子の純愛物語

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

表題の通り、お姫様と獅子の純愛物語なのかと思いきや、もうひとつの一途な愛が隠されていて、二度美味しい作品でした。不覚にもちょっと涙ぐんでしまった。

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電子書籍

普通の人たちの言葉がぎっしり

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

チェルノブイリ原発事故から約10年経って、被災者や、リクイダートル、その妻たち、「チェルノブイリの子ども」たち、などの言葉が集められたこの本はデータや情報としてのチェルノブイリではなく、普通の人たちにとってのチェルノブイリ、放射能なんて聞いたこともない、危険性など理解できないあるいは理解できなかった人たちにとってのチェルノブイリ原発事故の側面を見せてくれます。分からないでもがく人たち、または分かり過ぎているがゆえに政府や党の方針とぶつかりもがく人たち、自分が死ぬことを理解している子どもたちなどなど、決して読んで気持ちのいい話ではありません。でも、貴重な体験談や感想です。

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紙の本

紙の本架空通貨

2014/04/12 23:31

破滅の群像

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

池井戸潤の江戸川乱歩賞受賞作品“架空通貨“、読後感はあまり良くないですね。破滅の群像みたいで。ストーリーはある女子校生の父の会社が破綻し、娘が何か打開策はないか試行錯誤する過程でクラスの副担任をしている社会の先生に相談することで始まる。この先生は実は元商社マンで、信用調査をしていたので、その当時のコネを生かして真相を確かめ、できれば彼女の父の会社を救おうと努力する、というのが主線。所有している社債を期限前に償還してもらおうと発行元の会社に交渉に行ったら、その会社は企業城下町の頂点をなす企業で、自社の資金調達のために社債以外にも振興券なるものを発行しており、それが地元で闇金として流通して地元経済を狂わせ始めていた、というのがサブ舞台。かなり読み応えあるけど、ハッピーにはなれない (・へ・)
しかし、文学としての完成度は非常に高いと思う。

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紙の本

紙の本空飛ぶ広報室

2016/05/22 22:49

自衛隊ラブコメシリーズとはまた一味違った自衛隊作品

4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

この作品は実際のエピソードや人物をモデルにしているそうで、非常にリアリティーに富んだ物語となっています。P免になった空井大祐の葛藤と広報官として立ち直る過程、そして記者からTVディレクターに不本意に転身させらえた稲葉リカの苦悩。日本で職業を持つ女性の悩みも、往々にして理不尽な批判・言いがかりを受ける自衛官の悔しさなど、リアルな人間ドラマが盛りだくさんです。
311後に加筆された「あの日の松島」では、松島基地がどのような被害にあい、自衛官たちがどのように被災者救援活動をしたか、またその時どんな思いを抱えていたのかが、描かれています。思わずもらい泣きしました。

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紙の本

紙の本赤松小三郎ともう一つの明治維新 テロに葬られた立憲主義の夢

2018/03/26 20:12

目から鱗

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

本書の目的は、明治維新→大日本帝国憲法制定を日本の立憲主義の原点とする見方を「長州史観」として断罪し、赤松小三郎という優れた兵法学者で政治思想家にスポットを当てることで、幕末期に既に現行の日本国憲法の理念と比べて遜色のない内容の憲法草案「御改正口上書」が存在したことを示し、明治政府(長州レジーム)による大日本帝国憲法が幕末期の憲法草案に比べて、いかに内容的に後退した、専制体制と軍の暴走を可能にするとんでもないものであったかを明らかにし、現在安倍政権が改憲の根拠としている押しつけ憲法論議が長州レジームを踏襲するもので、それがいかに危ういものであるかを批判することにあります。
関良基氏は、政治的な目的を遂げるためには手段を選ばず、人の命を犠牲にすることもなんとも思わないという思想の起源の一つとして吉田松陰と松下村塾を挙げており、玉砕しても良いと精神論で戦争したがるのが松蔭主義者の特質であると喝破しています(p179)。あとがきでも吉田松陰を尊敬する安倍晋三首相の危うさを再三指摘し、だからこそ今「明治維新」を見直し、長州レジームから脱却することが現在日本の喫緊の課題だと訴えておられます。

ここまでくっきりと歴史と現代が繋がっていることが記された歴史関係の本は珍しいのではないでしょうか。非常に興味深く、目から鱗が落ちる体験をしながら読ませていただきました。

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電子書籍

電子書籍言いにくいことの上手な伝え方

2016/06/16 18:34

お役立ち情報満載

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

「言いにくいことの上手な伝え方」は期待以上のお役立ち情報が満載でした。
たとえば「雑談力」の基本は聞く(質問する)力として、上司や同僚、男女別に適したネタの例が具体的に挙げられていたり。
また、『困った』人の分類・分析そしてそれぞれの対処法も常に具体例が挙げられているので抽象的にならず、分かりやすく参考にしやすいです。
オブラートに包んだ言い回しの例もたくさんあって、すぐに使えそう。

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電子書籍

電子書籍漫画家 アリスンセット vol.2

2016/05/23 08:19

いいセレクション

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

アリスンの作画の素晴らしさもさることながら、収録作品のストーリーもどれも素敵なお話。私的には「不公平な恋の神様」一番きました。

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紙の本

日米開戦の発端は既に日露戦争終結時にあった

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ポーツマス条約を言葉通りに取れば、日本がロシアから得たのは南満州鉄道の経営権のみ。満州は清国が主権を有するということが明記されています。これを陸軍の一部が満州で特殊な利権を得たと(わざと?)勘違いし、その利権を守るために満州支配を画策します。条約を文言通りにとって、国際協調を唱えていた伊藤博文は暗殺されてしまいます。実行犯は朝鮮人の安重根でしたが、陸軍関係者がそそのかした疑いあり。

本来権利のないところで軍隊が駐屯し、現地支配をすれば、当然国際的に非難を浴びます。満州支配は特に英米との関係を悪化させます。中国で台頭していた民族主義・反帝国主義も日本にはマイナスに働きます。こうしたことを予見していて、満州支配や中国への戦線拡大に反対を唱えていた要人たちが次々に暗殺(2.26事件はその一端)、左遷などで葬られていき、中国や米国への理解の足らない陸軍が政局を支配していったため、政治家も外務省も引いては昭和天皇まで、明確な反発を避け、日米開戦への道にずるずると引きずり込まれていったことが克明に描かれています。
陸軍側の読みは実にご都合主義で、アメリカが適当なところで妥協して、停戦の運びになるものと考えていたというから呆れるばかりです。当時の日米の国力(生産力)の差は10対1。まともに戦える筈などなかったのに、一度得たと思われた満州利権を守るため、またそのために既になされた多大なる犠牲を無駄にしないために日米開戦に突っ走り、さらなる犠牲をもたらしてしまった、とのことですが、これは株で大損して、それを更なる投資で補填しようと深みに嵌るあほなケースとそっくりですね。
勝つ見込みがないことは真珠湾攻撃作戦の中心を担っていた山本五十六連合艦隊司令長官もはなから分かっていたようです。彼は「それは是非やれといわれれば、はじめ半年や一年の間はずいぶんあばれてごらんに入れる。しかしながら年三年となれば全く確信はもてぬ」と1940年9月に近衛首相に対して発言しています。

また陸軍軍人でありながら石原莞爾は日米の国力差が分かっていました:「負けますな。(略)アメリカは一万円の現金を以て一万円の買い物をするわけですが、日本は百円しかないのに一万円の買い物をしようとするんですから。」(p49)
彼は東条英機と対立して敗れ、閑職に追いやられてしまいました。

「政党の有力者または有能な官僚の一部は、あるいは故意に、あるいは心ならず、軍部に協力を示し、よって権勢の地位につくことに心がけた」と第47代首相で元外交官の芦田均が振り返ってますが(p459)、この状況、現在も同じですよね。
マスメディアもまさに「軍部に協力を示し、よって権勢の地位につくことに心がけた」という態度そのもので、読売新聞戦争責証委員会『検証 戦争責任』が、「関東軍が、満州国に国民の支持を得ようと、新聞を徹底的に利用したのも確かだ。しかし、軍の力がそれほど強くなかった満州事変の時点で、メディアが結束して批判していれば、その後の暴走を押しとどめる可能性はあった」と指摘しています。この反省が現在に活かされているようには思えません。
そういう意味で、(安倍独裁政権の)今、真珠湾攻撃というアチソン国務長官(当時)をして「これ以上の愚策は想像もできなかった」(p58)と言わしめた愚行を振り返る意味は大きいと思います。
集団的自衛権、原発再稼働、TPPなど、指導者が嘘や詭弁で誤魔化し、マスコミは検証もせずにその嘘や詭弁を拡散し、国民がそれを無批判に鵜呑みにし、一定の方向へ誘導される図式は真珠湾攻撃へ至る道と驚くほど似ています。

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電子書籍

電子書籍紅霞後宮物語 第十幕

2019/06/14 23:59

新たな展開で緊張感が増した

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

第二部の2冊目となったこの第十幕はこれまで皇族と管理の橋渡し役をしていた尚書が引退するため、茹王という皇族を宮廷に迎えることになり、彼の立場を確かなものにするために彼の娘を後宮入りさせることになります。本当は姉の嫡女が形式的に後宮入りする筈でしたが、彼女は元々体が弱く、後宮入りする前に風邪をこじらせてなくなってしまい、彼女の代わりに庶子の妹・仙娥が後宮入りすることになります。この茹仙娥が率直に後宮の役割は皇統を残すことであるとして皇帝のお渡りを要求したため、後宮での台風の目となり、皇后・関小玉を悩ますことになります。

皇帝・文林はこの「一応」皇族であるとはいえ庶出ある茹仙娥のところに通うと、れっきとした皇族で妃としての位も皇后に告ぐ貴妃紅燕のもとにはなぜ通わないと不満が出る羽目になるので行かないと断言したにもかかわらず、小玉たちが静養のために後宮を出る前日に茹仙娥が懐妊したことが明るみに出ます。

その他裏でい隣国でもろいろな陰謀が渦巻いており、いよいよ緊張が高まってきました。次巻が楽しみです。

これまで小玉の武官としての活躍や彼女に心酔する取り巻きに話の焦点があったのに対して、第2部はより大きな視点から見た小玉の描写が多くなってくるため、彼女の拙さが際立ってくるきらいがありますが、彼女の40過ぎの悩みとねじくれた文林に対する情、そして皇后としての責務を果たそうとする義務感との狭間で揺れる彼女は実に人間らしいと言えます。

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電子書籍

電子書籍下町ロケット ヤタガラス

2018/10/04 00:40

池井戸潤的カタルシス

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

ロケット計画で付き合いの長い財前がヤタガラスの打ち上げを最後に異動になり、そこで立ち上げた衛星ヤタガラスによって可能になった精確な位置情報を利用した無人農耕機プロジェクトに佃製作所が参加することになってしましたが、財前の属する派閥と対立する的場がプロジェクトの総責任者となり、佃製作所が供給する筈だったエンジンとトランスミッションを内製化することを決定し、佃製作所はまたしてもピンチに陥りますが、プロジェクトのキーテクノロジーであるヴィークル・ロボティクスを供給する北大教授の試作機に協力することで、農耕機用のエンジンおよびトランスミッションの独自開発を進めます。

『下町ロケット ゴースト』で佃製作所に助けられたのにもかかわらず、「ギアゴースト」社長・伊丹大は帝国重工の特に取締役的場俊一に復讐するために佃製作所のライバル社「ダイダロス」と手を組み、無人農耕機のプロジェクト「ダーウィン」で帝国重工の無人農耕機のプロジェクトに対立します。

いくつもの対立関係が絡み合い、緊迫感溢れるストーリー展開で目が離せません。最後に「日本の農業を救おう」という理念が貫かれるところが素晴らしいですね。改めて見直される下町の人情、使う人のことを考えるものづくりの姿勢が現実に取り戻されればどんなにいいかと、変に捻じれた日本経済を余計憂えてしまうことになるかもしれませんが、ひとまずは池井戸潤的カタルシスを存分に味わえる作品です。

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電子書籍

電子書籍ツナグ(新潮文庫)

2018/01/22 09:54

心が震えて、癒される

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

一生に一度だけ、死者との再会を叶えてくれるという「使者(ツナグ)」のお話。突然死したアイドルが心の支えだったOL、年老いた母に癌告知出来なかった頑固な息子、親友に抱いた嫉妬心に苛まれる女子高生、失踪した婚約者を待ち続ける会社員。

もし一生に一度だけ死者に会えるとしたら、誰に会いたいか、まずはそこからして重い問いです。それができるという前提で進行する物語ですが、依頼者にはそこに至るまでのそれぞれの事情と葛藤があり、それを描写する筆致が素晴らしいです。「アイドルの心得」と「長男の心得」はどちらかというと「ほっこり」する展開ですが、「親友の心得」はどちらかというと心をえぐられるような痛みのある展開、「待ち人の心得」は切なく、そのすべてのエピソードの裏側を描く「使者の心得」で諸々の事情に合点が行き、また仲介者としてその邂逅の前後を目の当たりにする17歳の少年・歩美の感じ、考えたことは何かが語られますが、彼の出した結論は祖母に対する思いやりに溢れていて「ほっこり」できます。

辻村深月の作品を読んだのはこれで3作目ですが、この方は人と人の関りとその関係の中で生まれるあらゆる感情を細かな心の襞まで言語化できる鋭い観察眼と筆力を持っているのだと思います。そして彼女の言葉から感じられるのは包み込むような優しさで、今回もまた泣かされました (´;ω;`)

娯楽性やエンタメ性が極めて低く重いテーマですが、心が震えて、癒される作品です。

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紙の本

紙の本県庁おもてなし課

2016/05/22 02:20

素晴らしい高知県PR

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

高知県の観光スポットがかなり紹介されてて、下手な観光案内よりも面白味があるかも。それに、おもてなし課の活動を有意義なものにするために、「民間意識」と「女性視点」を取り入れるべきという吉門のアドバイスは本当に日本のお役所の盲点をどすっと突いていると思います。「女が取れたら、男は勝手についてくるよ。カレシとか旦那とか。ファミリー層なら子供までね。家庭でも財部の紐握ってるの奥さんが多いだろ」というわけですが、「確かに!」と納得してしまいました。その他にもかなり具体的な女性視点を取り入れた観光事業振興構想が提示されていて、それに対して役所内外でどういう横やりが入って、どこに着地するか、それだけでも読み物としてわくわくする感じなのに、登場人物たちの恋愛も2組織り込んであって、やっかんだり、僻んだり、管を巻いたり、というリアルな人間ドラマも見せてくれます。

恋愛の方は2組ともハッピーエンド(?)というかハッピーエンドの予感といったところで終わっていて、「おもてなし課」の活動も軌道に乗りだしてこれからという希望に満ちたところで話が収束しています。そこらへんがストーリーテラーとしての引き際、なのかもしれません。

巻末には、「鼎談 物語が地方を元気にする!?~「おもてなし課」と観光を”発見”~有川浩 x 金丸弘美 x 高知県庁おもてなし課」が掲載されています。小説『県庁おもてなし課』の裏話として実に興味深い対談です。

この作品は有川浩としては結構異色な部類ではないかと思うのですが、もっとも全作品網羅しているわけではないので、断言はできませんけど、彼女の郷土愛がベースになっているお話なんだな、ということがよく分かります。地元民が持っているものを当たり前に受け止めすぎて、その価値を分かっていない、というのもよく分かる話です。「灯台下暗し」という言葉は伊達ではないということでしょう。

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