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踊る黄金像
著者 ドナルド・E・ウェストレイク , 木村 仁良
南米から密輸されてきた百万ドルの黄金像がちょっとした手違いから十五体の模造品にまぎれこみ、ニューヨーク中にばらまかれてしまった。一獲千金をめざす悪党たちが次から次へと登場...
踊る黄金像
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踊る黄金像 (ミステリアス・プレス文庫 ハヤカワ文庫)
商品説明
南米から密輸されてきた百万ドルの黄金像がちょっとした手違いから十五体の模造品にまぎれこみ、ニューヨーク中にばらまかれてしまった。一獲千金をめざす悪党たちが次から次へと登場し、一大争奪戦が始まるが――マルクス兄弟のパワーを凌ぐ究極のスラップスティック大作。
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紙の本
「活気溢れるニューヨーク」に出会いたいなら、コレしかない!
2001/07/03 01:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:US - この投稿者のレビュー一覧を見る
ニューヨークって、ハテ? 実際にはどんなところなんでしょか?
この本読むと、いろんな映画で見覚えのある「あの」ニューヨークが、次々浮かんで来るんです。
見返しのページを開けたその次の最初の「献辞」の7行からノリノリのこの本読むと、ニール・サイモンのニューヨークとか、植草甚一のニューヨークとか、ノラ・エフロンのニューヨークとか…いろんなひとが書いてきた「ニューヨークの空気」が、てんこ盛りの感じです。
南米のとあるクニから盗まれた黄金像がこの街に持ちこまれ、ところが偶然にも複製品が十五体もあったもんだから、ハナシはしっちゃかめっちゃかになる。本物の像を探して誰も彼もがニューヨーク中を走り回る。錯綜した争奪戦を通じてこの都市の「全体像」をきゃははと笑いながら見てください、って趣向でス。
インチキ航空貨物会社の青年がいて、離婚の瀬戸際にあるハープ奏者の女性がいて、へんな市民運動の活動家がいて、個人宅用プールのセールスマンがいて、ハーレムのボスがいたりして、あやしげな投資家がいたりして、まだまだ一杯いて、ダウンタウンからロングアイアランドの高級住宅地から空港から図書館まで、ありとらゆる場所が出てくる!
無数の人物を配した上で、おフザケの中に、男と女、ジェンダーの問題から貧富の格差から、性的嗜好や人種偏見のハナシまで、さりげなく入ってる。それがぜんぶ、かなり粋に茶化されてます。字で読んで、しかも翻訳モノの文体でこれだけおかしい「小説のカタチの都市論」も、あんまりないという気がする。
解説によると、書かれたのが1976年らしいけど、70年代の猥雑な「生きたニューヨーク」を生鮮保存した感じ。
笑わせて、わくわくさせて、ほいでときどきじーんとさせる。読み終えると、眼に栄養をもらった気分の一冊です。
紙の本
GET
2001/03/24 00:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ころび - この投稿者のレビュー一覧を見る
どたばた喜劇....? GET A HUSTLE いそがなくっちゃ!!!どたどた.....ばたばた......。実に実にめまぐるしい(^^;) 像は確かに踊っている黄金の僧侶像なのだが、その周りをどたどたばたばた駆け回る人々の騒々しさといったら!! 有り体に言えば、お宝争奪戦。分刻み秒刻みでのすれ違い。
1シーンごとが短くころころ場面転換してくれる、時間軸も先に行ったり後戻りしたり、少しもじっとしていない。当然「数多くの」登場人物達も一カ所にじっとしてはいない。それなのに状況がちゃんと理解できる。う〜ん。うまい。
この作者はずいぶんと沢山の筆名を持っている。話題の『悪党パーカー』もその別名義作品のうちのひとつ。未訳作品も多い。発表数も多いようだけど、絶版品も多いようですねぇ。ミステリアスプレスって、はずしが少なそうで、嬉しい。でも、置いてある冊数って、どこも少なくって寂しいな。と言うときのためのオンライン書店か(^^;)
紙の本
黄金像の奪い合い
2002/03/20 14:21
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:真 - この投稿者のレビュー一覧を見る
多彩な登場人物たちが、黄金像の争奪戦を繰り広げる話。ホントにそれだけ。黄金像の奪い合いが、600ページにわたって延々とつづく。とにかく最後までハイテンションで、場面転換が速い速い。このテのドタバタコメディが好きな人にはたまらないでしょう。さすがに僕は、すこし疲れましたが……。
紙の本
これを書いたのが、ハメットの後継者だって?
2002/02/27 22:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
コロンブス以前の貴重な美術品であり、アメリカ大陸に存在するというデスカルソ国が誇る象徴でもある《踊る黄金像》が奪われ、アメリカに空輸された。100万ドルともそれ以上とも評価される高価な美術品は、その身をそっくりな15体の模造品の中に隠しているらしい。
お宝の情報を得た何人もの人間たちが、必死の追跡を繰り返すのだが、発見されるのは彼らをあざ笑うかのように踊っている偽の黄金像。いったいどれが本物なのか?
いくつかのペンネームを使い分け、様々なジャンルの作品を手がけているアメリカの作家ドナルド・E・ウェストレイク。元々は正統なハードボイルドを書く作家としてデビューし、ハメットの系譜を受け継ぐとして期待されていたというが、突如としてユーモア溢れる作風に転換してしまった彼。以降はコミカルな作品を多く手がけ、本領を発揮している。
が、その一方、スターク名義では、《悪党パーカー》という暴力的で極悪非道な犯罪者を主人公とした、ハードな犯罪小説シリーズを発表しており、ユーモアを書ける作家としてのみではなく、暴力までも書くことができる作家としての活躍を見せている。
全三章に別れたこの作品では、繰り返すことによって笑いを誘う技法がふんだんに使用されている。各賞の冒頭には、あるルールに則った文章が必ず書かれており、二度目があったのだから三度目もきっとあるのだろうとわかっていても、笑わずにはいられない。さらに、この文章自体も短い文の繰り返しで、しつこいと思うほどに笑いを誘っている。
同じことを繰り返すことによって笑いを誘うという、笑いにおける方法は、使用するのに勇気がいるらしい。センスのないことを繰り返したとしても、ただ不興を買うだけで、まったくつまらないこととなってしまう恐れがあるからだ。その点、ウェストレイクの繰り返しは、しつこくて上手い。
本作で繰り返されることは、章の冒頭に書かれた文章だけではない。この小説は、連続する出来事をさらに連続させて成立している小説だと言っても過言ではないだろう。踊る黄金像は16体もあり、それぞれが同じように踊っている。彼らは、ホームズ譚の『六つのナポレオン像』に登場する石膏の胸像よりも、10体も多く連続し、宝探しに興ずる人間たちを翻弄し続ける。
16体でも相当だが、出版される際にページ数の関係から、6体の黄金像が登場する箇所を削っているらしい。もしも、全部で22体もの黄金像が踊り続けていたら……、そのしつこさにぞっとしてしまうが、どうせなら22体が揃った状態で読みたかったと思う。いったいどうなっていたんだろうか。
1体だけの本物を求めて、像のまわりで踊っている人間たちも大勢でドタバタと立ち回っている。彼らは、入れ替わり立ち替わりで同一の黄金像の真贋を確かめるために、哀れな持ち主の部屋に闖入し、せっかく修理したばかりだというのに偽の像の手足を折ってしまう。ここにも連続がある。
宝探しの過程で、繰り返し逮捕される人間もいれば、繰り返し素朴な感想を述べる人間、おかしな性癖や思考を繰り返す人間も登場する。差別を笑いにした箇所も繰り返され、豪華な葬式のシーンでは、偽物の有名人が行列をつくり、それを見ているチンピラが偽スターたちの本当の姿を繰り返し言い当てる。ナット・キング・コールが中年の女性、ダイアナ・ロスが若い男だという記述には、濃さを感じながらも吹き出してしまった。
本物の黄金像はどれなのか、そのために繰り返される贋作の破壊も連続している。この連続の中に、一見ミステリーだとは思えない本作の、唯一ミステリー的な仕掛けが施されている。トリックの点からも、作品全体の構成からも、連続が最も重要な小説なのだ。だから、『六つのナポレオン像』を彷彿とさせる宝探しということもできるだろうか。