神は沈黙せず(下)
著者 著者:山本 弘
遺伝的アルゴリズムを研究するうち、「神」の意図に理論的に到達してしまった人工生命進化の研究者・和久良輔。「サールの悪魔」という言葉を残し失踪した良輔を追う妹・優歌。彼女が...
神は沈黙せず(下)
05/08まで通常638円
税込 319 円 2ptワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
商品説明
遺伝的アルゴリズムを研究するうち、「神」の意図に理論的に到達してしまった人工生命進化の研究者・和久良輔。「サールの悪魔」という言葉を残し失踪した良輔を追う妹・優歌。彼女がたどり着いた「神」の正体とは!
※本書は二〇〇三年十月、小社より刊行された単行本を分冊し、文庫化したものです。
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
「神」に作られた世界の像に宿る哲学的な洞察
2008/04/19 19:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:消息子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
文庫版上巻で、この世界が「神」によってシミュレートされた仮想現実だと「論証」してみせてしまったからには、その先どのように物語が続くのだろうかと心配になってしまう。それを上回るアイディアが隠されているのか、それとも話は別の方向に進展していくのか。
下巻では、神がその存在を人類に示すという出来事が生じる。そして、主人公の兄が「サールの悪魔」という言葉を残して行方をくらます。これは上巻冒頭の一文に予告されていることである。そして、物語はネット社会がどのように変貌するのか、ひとつの思考実験を示していく。もしかすると、現在のこの社会がこのような道筋を辿ってもおかしくないのではないかと納得させられる近未来予測ではある。しかしそれと「神」とどう関係があるのか。「この世は神のシミュレート」論を凌駕するアイディアへの伏線なのか、次なるアイディアの導入なのか、それは読んでいただくとして……
主人公は、表面的には語り手である和久優歌であるが、実はこの小説は、この地球、あるいは世界が主人公なのである。シミュレーションである「この世界」という主人公の行状を描く「大きな物語」。「サールの悪魔」の謎が解かれていくと、「おお」という仕掛けが明らかになっていく。作者はオートポイエーシスに言及もせずに、このアイディアに到達したのかと驚く。
グレッグ・イーガンに比肩される大ボラ話であるが、イーガンとは大分異なる肌合いが本作の魅力である。本作での「神」は「世界」をシミュレートする存在であるからして、およそ既成宗教の描く神とは異なっているのだが、山本弘の提示する「神」に作られた世界の像には哲学的な洞察さえ仄見えてくるのである。その後味の違い。