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エクソダス症候群
著者 宮内悠介
すべての精神疾患が管理下に置かれた近未来、それでも人々は死を求めた――10棟からなるその病院は、火星の丘の斜面に、カバラの“生命の樹”を模した配置で建てられていた。ゾネン...
エクソダス症候群
エクソダス症候群 (創元日本SF叢書)
商品説明
すべての精神疾患が管理下に置かれた近未来、それでも人々は死を求めた――10棟からなるその病院は、火星の丘の斜面に、カバラの“生命の樹”を模した配置で建てられていた。ゾネンシュタイン病院――亡くなった父親がかつて勤務した、火星で唯一の精神病院。地球の大学病院を追われ、生まれ故郷へ帰ってきた青年医師カズキは、この過酷な開拓地の、薬もベッドもスタッフも不足した病院へ着任する。そして彼の帰郷と同時に、隠されていた不穏な歯車が動きはじめた。25年前に、この場所で何があったのか――。舞台は火星開拓地、テーマは精神医療史。第1作『盤上の夜』、第二作『ヨハネスブルグの天使たち』がともに直木賞候補となり、それぞれ日本SF大賞、同特別賞を受賞した新鋭が新たな地平を拓く、初の書下し長編。
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紙の本
精神医療史を越えていると思う
2016/10/15 21:49
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投稿者:十楽水 - この投稿者のレビュー一覧を見る
よくこれだけのことを書きまとめたな、と感嘆。ラストの腰砕け的な所は、小説としてはまずいのかもしれないけど気にならなかった。
正常と異常の間に境界を作ることだけではなく、境界を取り除くことにも副作用はある。善良な動機が単純に肯定される話ではない。結局、何を選択しても、未来からは野蛮だ未開だと批判されるだけなのかもしれない。「精神医学の歴史とは、つまるところ、光と闇、科学と迷信の強迫的なまでの反復」だとして、矛盾は無くすべきか、不快であっても共存するのか。
ホッヘにヴァイツゼッカーにマズロー、トランスパーソナル心理学、霊性、ラスタファリアン、文化結合症候群-。著者の筆は縦横無尽。個人的には、ヴァイツゼッカーの「魂は不死であると信じ、生物学的な命を犠牲にして社会の相互連帯性を維持する」が恐ろしく、でも形を変えて現在でも息づいていると感じている。だから、どんなスピリチュアルな言説にも警戒を解けないでいる。警告の書としても読めた一冊である。