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津波の墓標
著者 石井光太
大雪の中、野ざらしの遺体を一人見守る自衛官。娘の生死を巡って激しく口論する夫婦。幽霊が出ると噂のある川原に駆けつける遺族。娘の遺体に遺品の携帯電話を供えて祈る夫婦。土葬し...
津波の墓標
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津波の墓標 (徳間文庫カレッジ)
商品説明
大雪の中、野ざらしの遺体を一人見守る自衛官。娘の生死を巡って激しく口論する夫婦。幽霊が出ると噂のある川原に駆けつける遺族。娘の遺体に遺品の携帯電話を供えて祈る夫婦。土葬した遺体を掘り起こして火葬し、供養する僧侶……。釜石市の遺体安置所に焦点をあて、絶大な評価を得たドキュメンタリー『遺体』の著者が、同作では描けなかった小さな物語をすくいとったノンフィクションが本書です。マスコミが報道してこなかった震災の真実を、つぶさに取材してきた石井光太が、震災の果てに見出した希望とは……。
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紙の本
真実の光と影
2016/03/12 09:07
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
悲しみは同じではない。
東日本大震災の被災時の状況などを耳にするたび、そう思う。
死者15894人、行方不明2561人。この数の、きっと数倍の悲しみがあの日とあの日に続く日々にはある。
しかも、震災から5年経っても今なお避難生活をおくっている人が17万人以上いる。
この作品は2011年3月11日に起こった東日本大震災のあと、ほぼ2カ月半を被災地で過ごした著者が現場で見聞きしたいくつかの話を記している。
著者には被災地での取材活動の中ですでに『遺体―震災、津波の果てに』という良質の記録作品がある。その中で書き記されなかった多くの人たち、悲しみを、この作品で掬い取る形になっている。
著者はいう。「一つひとつがまったくちがう意味と重みを持つものになるだろう」と。
東日本大震災の報道で海外メディアは口々に東北の人たちがまじめでおとなしく淡々と避難生活を送っていたかのように報じた。
しかし、実際にはそうではない負の面もあったことを、この作品では取り上げている。
それは商店や住居からの強奪だけではない。ATMからなくなった現金は6億を超えると記されている。
被災地だから善ばかりが語られることはない。真実を知ることと、悪を過大に解釈することは違う。
まして、なくなったお金にしろ被災者が盗んだものとは限らない。
あの混乱の中、被災地にもぐりこんだ多くの人たちがいただろう。
たくさんの遺体をカメラにおさめて記念撮影する人たちの様子も、ここには書かれている。
人の行為のすべてが善なのではない。
大きな厄災は時に人間の本質をさらけ出す。
それは報道する側も同じだ。被災から数カ月もすれば復興の明るいニュースが目立ってきた。視聴者や読者がそれを欲していることもある。それもまた事実だろうが、報道する側に選ばれた事実である。
震災から5年経った報道も同じだ。明るいニュースの影でいまだに歯を噛みしめている人たちがいることを、忘れてはいけない。
真実とはなんと空しいことか。
もはや数字だけが信頼できる、そんな殺伐としたものを感じる。
紙の本
震災報道とは
2015/07/19 21:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:弥生丸 - この投稿者のレビュー一覧を見る
マスメディアとは異なる視点から捉えられた、東日本大震災被災者・被災地の負の部分。
被災した家屋の金庫を工具でこじ開けようとした若者たち。被災者から痴漢行為を受けた女性ボランティア。Vサインで被災地の記念写真を撮ろうとし、被災者の怒りを買ったボランティア。ブルーシートをめくって遺体の顔を撮影するカメラマン。震災によって家庭崩壊の危機に陥った被災者。
このドキュメントを読むと、マスメディアが伝える被災者・被災地は、表面的な綺麗事ばかりと思える。異常な事態に直面した時、自己防衛本能から、人は負の部分を剥き出しにする。震災報道のあり方を強く考えさせられる書。