紙の本
種々の発達障害を感覚の特性と捉えて考えてみては如何でしょうか?
2020/02/12 14:05
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、自閉症やADHD、さらにディスレクシア、ウィリアムズ症候群、アスペルガー症候群などを含む発達障害と呼ばれているものを、感覚の特性として捉えることで新しい治療と対応の可能性を見い出そうとした画期的な一冊です。他者とのコミュニケーションが苦手とか、人の顔や目を見て話ができないといった症状は、誰にでもあることです。実は、これらの症状は脳が発達する過程でうまく視覚が形成されなかったりすると、そのほかの感覚器の形成に影響が現れるのです。そこで、現在知られている種々の発達障害と呼ばれるものを、感覚の特性として考え直してみることで、新たな視界が開けないかを模索したのが同書です。発達障害をもったお子さんや家族をお持ちの方々にはぜひ、読んでいただきたい一冊です!
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多かれ少なかれみんながもっている、
だから「スペクトラム」とよばれているのです。
・コミュニケーションが苦手
・人の顔や目を見て話ができない
・読み書きが苦手
だれにだってある、ちょっとした性格のひとつ。
じつは、脳が発達する過程で、
うまく視覚が形成されなかったりすると、
そのほかの感覚器の形成に影響が現れるというのです。
人より視力や聴力が極端によすぎるために
同じものを見たり、聞いたりしていても
まったく違う世界として受け止めているかもしれない、
それが発達障害の素顔なのです。
自閉症、ADHD、ディスレクシア、ウィリアムズ症候群、アスペルガー症候群など、
感覚の特性としてとらえることで新しい治療と対応の可能性が見えてくる!
少しのあいだかれらの世界に寄り添ってみませんか。
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発達障害、具体的には自閉症スペクトラム、ADHD、LDの特性が起こるメカニズムを、
脳科学、特に視覚の発達を軸に解釈した論である、という解釈をした本だ。
と、いう言い方をしたのも、乳児期の視覚の得手不得手が発達障害の原因だ、という論は、果たしてそうなのだろうか?という素人ながらの疑問を持ったわけで。
原因ではなくて、その裏に潜む原因があって、その結果の表出の一つに過ぎないのではないか、と、思った次第。
しかし、発達障害の特性と脳みその部分的な得手不得手の関連付けというのは、関心を誘われるところではある。
わたしのあの苦手な部分は、脳みそのこの辺によることなのか。
ってことが分かったところで、脳みそを叩いたり揉んだりしごいたりできるわけではないのだけれど、単純に興味深い。
放射線や重量子線とは真逆の事象を起こすことができて、特定の部分の細胞を増やしたり、特定の機関の働きを賦活化することが出来たら、ハッタツも改善出来たり、アトピーが治ったり、免疫機構で対応できるたいていの病気は治ったりするのかしら。
わからんけど。
発達界隈の人々が生きやすくなるヒント、的なものは特にないような気がするのでそれを期待して読むのは無しですが、40億年の生物史の結果つくられた摩訶不思議なメカニズムの一つが、手のひらで包むことが出来る頭蓋骨の中で繰り広げられている、ということに思いを巡らさせてくれる一冊でございました。
ぎゃふん。
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赤ちゃんや顔のことを研究している著者による本。赤ちゃんや自閉症の人がどのように世界を捉えているのか、といったことはよく分かったが、発達障害の人に日常的に接しているわけではないだけに、自分の知りたかったこととは違っていた。面白かったけども。
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高校生のとき、グラウンドから見た体育館が豚の顔に見えると言って楽しんでいた。卒業アルバムの個人写真も、その体育館をバックに撮った。ある種の発達障害を持った人は、あるはずもないところにいろいろと顔を見つけてしまうのだそうだ。さっき会ったばかりの人の顔を見分けることができず、なんか愛想の悪い人だなあと思われてしまうことがある。発達性相貌失認というそうだ。俳優のブラッド・ピットがそうだとか。池谷裕二先生も自分にそういうところがあると言っていた。私自身にも同じような傾向がある。名前と顔がなかなか一致しない。何人かが同じような顔に見えてしまい、とっさの判断がつかない。双子などは最後まで(3年間)区別が付けられない。私の場合は名前の言い間違いも非常に多い。思っていた言葉と、口から出た言葉が違うことに気が付いて、とても恥ずかしい思いをすることがある。昨日も、30秒前に自分がいた教室にもどる際、別の教室のドアを開いて恥ずかしい思いをした。これは、歳をとったからということでもなさそうだ。昔からそういう傾向はある。これは、障害か。まあ、大して人に迷惑をかけるわけでもなければ、気にする必要もないか。50歳過ぎてからそういう傾向が出てきたならば、認知症の可能性もあるのかもしれないが、前から同じようなことをくり返しているから、そうでもないのだろう。ということで、本書で紹介されているのは、障害というほどのものなのだろうか。と思う。と同時に、障害だと思えば、その人に対して何らかの特別な対応ができる。それで、生活の質が向上するならば、障害と判断してもいいのかもしれない。とも思う。サッチャー錯視には驚愕した。
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よくある発達障害の関連本と違って、脳科学の発達に関する実験から、発達障害の脳が健常者とどう違っているかや、
更に乳幼児期にどういう違いとして現れるのかまでが書かれている一冊。
新しい切り口なので、興味深いだけでなく、当事者や周りの人にも、新しいヒントになる本だと思う。
もっとこのような脳科学的な研究が(できれば治療法になるくらいに)もっと進んでほしいと思う。
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”個々の違いを余裕をもって受け入れられる社会ができたら”最終的にはこれかな。「変わってるな、あいつ」がいまは発達障害?脳など科学的に解明され、障害や病気としてとらえてしまう。そして、レッテルをはり悪ければ排除してしまう…そんな傾向がなきにしもあらずかな?私自身も…
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脳の機能から具体的な発達障害の症状を説明していて分かりやすい。視覚、聴覚が敏感過ぎるという事でどういう事が起こるのか。発達障害のほんの一部の症状だとしても想像してみる事ができる。
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サイエンス好きな文系なので読売書評で興味持った。Xメンではないが、発達障害と言っていいのかさえ思い直してしまう。視聴覚機能や想像力が優れすぎてたり、発達障害の人がどんな世界で混乱に陥ってるのかが理解できる。一緒に暮らしていく人たちのことを少しでも知ることは大切だと思う。
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発達障害を脳の解剖学的研究から解説。
「自閉症は超男性がもつ特徴だとする説はアスペルガーが示した古典的考え」ホルモンシャワー説。完全に否定されているわけではないのか。
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発達障害についての概略本。
”発達障害”と言われるようなことが、脳のどういう部分・機能と関連して起きているのか、という観点で書いている一冊。
昔とは違い、論理的に心理を話せる時代になっているんだな、というのが個人的な印象。昔の心理学はともすれば「気の持ちよう」で、それをどう変えるか、みたいな記述が多かった印象がある。
今は、脳の活動領域含め、「どのような刺激が、脳のどういう場所で処理され、どういう行動になるのか?」が解明されつつあって、それが個性であったり、場合によってはなんらかの問題を生む、と説明できるらしい。そういう時代の変化を感じられた。
もっとも、読み手である自分の読み方も変わったな〜、とは思った。昔であれば、こういう本を読むと「どう役立てるか、どう自分と関係するか」という姿勢が強かったように感じる。
今だってそういう視点がないわけではないのですが…おそらくはいい意味で、一般化して話を理解できているようにも思う。
そのへんも含め…人の発達とか個性とか、難しいな〜、と改めて感じた一冊でした。
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◆昔から認知心理学研究の核は視覚である。それを軸に、教育・療育、あるいは社会における包摂の論議が進みつつある自閉性スペクトラム障碍の特徴と要因につき、地道に、科学的にアプローチする◆
2016年刊。
著者は中央大学文学部教授。
自閉性スペクトラム障碍については、10数年前の主関心領域だが、レーベルが科学新書の雄・ブルーバックスという点もあり、新奇ネタは如何と考えて読了。幾つか発見あり。
まず自閉性スペクトラム障碍の要因論。「心の理論」喪失仮説につき、誤信念課題の正解率の低さだけを根拠にした説明は困難になっている。
つまり「方便の嘘」解釈問題など、その正解・不正解に関わらず、多数派とは異質な視点で課題を説明する傾向性の高さが露呈しているとのこと。
つまり、単純な心の理論の欠如仮説では説明できず、その特異性こそが重要だということのようだ。
次にコントラスト握持力の点で障碍者の視覚は、実は乳児期ですら優れものである事実。
それは小さい領域を見る視力が備わっていて、本来乳児において発達していない錐体細胞(乳児の場合、大人の周辺視野と同程度にぼんやりとしか見えないはず)が優れていた可能性を指摘する。
顔認知自体、ヒトは特定の神経機序で行うが、その際も小さな断片を見て、全体を見ない(全体は情報利用が多すぎて見えない・処理しきれない?)ので、顔を合わせない。
さらに、動いているモノを見るための背側経路(頭頂葉・後部頭頂皮質に連絡)の欠損ないし機能不全は、空間認知力を弱める。視線を追えない、自ら指差しせず、指差しに呼応せず、共同注意に至らずということに関わってくる要素だ。
また、コミュニケーションにおいて、通例良く見られる発達過程を辿り得ない。ただし、背側経路ではなく、動きを伝達する外側膝状体・大細胞の機能不全の可能性も示唆している。
そして、広汎性発達障害とも、自閉性スペクトラム障碍とも言われる症例で、最も顕著なのは社会性の乏しさ。その社会性は多様な神経機序を基盤にしている。
具体的に上げると、偏桃体ネットワーク(恐怖やそれに基づく人的嫌悪や回避に関連)、メンタライジング・ネットワーク(他者の心のありようを高い確度で推定可能)、共感ネットワーク(他者の痛みを自らの痛みと同値できる)、ミラーニューロン・ネットワーク(模倣する能力から、他者の感情や痛みを自分のものとしうる)といった様々な機縁が、複雑に連関し、また領域毎で、個々人各々で得手不得手があるというもの。
非常に多因的で、雲をつかむようなだなという印象は、今回も晴れないままである。
ところで、著者は、認知心理学、さらには実験心理学を主フィールドにし、視覚、その中でも顔認知を研究テーマとしてきており、その部分は詳しい。
ただ、そうなると何が中心原因なのか、その脳内機序は何か、という問いにストレートに回答されるわけではない(広く攫った記述ではあるが)。
また、論が行き来し、何のために、また自閉性スペクトラム障碍の���の部分との関係性を論じているかをはっきりさせないまま、ややごちゃごちゃに展開している印象はある。
とはいえ、200頁未満で、明確な原因論が不明な問題を広く論じる点は、それはそれで良しとせねばなるまい。
補足。
ここでも若干紹介される胎児期のテストステロン過剰暴露。未だ相関関係すら明示されているわけではないが、原因論に関して、今後の調査・研究・解明が気になるところだ。
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https://elib.maruzen.co.jp/elib/html/BookDetail/Id/3000057397
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心理学の教授が書いた発達障害の本ということで興味があり手に取った。あとがきに書いてあったが、筆者もこれまで自身の社会性について悩んでおり、この本を書くにあたってその問題に直面し苦悩したという。そのためか、なるべく公平に記するように意識しているように感じられる。全体的に事実の羅列が多く、実験を元に得られた事実を学術的に記載しておりややとっつきずらい。