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呼ぶ山 夢枕獏山岳小説集
著者 著者:夢枕 獏
山を愛し、自らも山に登ってきた著者が描く、山の臨場感と霊気溢れる小説群から厳選した8作品を収録。山で起こる幻想的な話、奇妙な話、恐ろしい話など山のあらゆる側面を切りとった...
呼ぶ山 夢枕獏山岳小説集
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呼ぶ山 夢枕獏山岳小説集 (角川文庫)
商品説明
山を愛し、自らも山に登ってきた著者が描く、山の臨場感と霊気溢れる小説群から厳選した8作品を収録。山で起こる幻想的な話、奇妙な話、恐ろしい話など山のあらゆる側面を切りとった、著者初の山岳小説集!
※本書は、2012年4月にメディアファクトリーより刊行された単行本『呼ぶ山 夢枕獏山岳短篇集』を改題、一部加筆の上、文庫化したものです。
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8話からなる短編集だが、いずれもが幻想的、奇妙、恐怖、妖しいといった不思議な雰囲気を漂わせている。
2016/11/08 12:05
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
8話からなる短編集だが、いずれもが幻想的、奇妙、恐怖、妖しいといった不思議な雰囲気を漂わせている。その雰囲気を何と表現しようかと考えていたら、どうも「猟奇的」=(奇怪・異常なものを捜し求めるさま。また、そういう気持ちを満足させるようなさま。)が最もシックリする気がしてきた。
例えば、第一話「深山幻想譚」では、これといった目的もなく山中泊してる「私」の前に、深夜、<気>を収集しているという怪しげな男がやってくる。男と<気>の話をし、実際に以前に収集した<気>を見せてもらったりしてるうちに、男は<気>を採集するところを見せてやるという。興味深く見ていると、何と自分の首が採集され、男の用意した瓶の中に入れられてしまったではないか。その時になって初めて、私は「2年前にこの場所で死んだ」ことを思い出すのであった。
第三話「山を生んだ男」は、ラフカディオ・ハーン「梅津忠兵衛の話」(『怪談・奇談』角川文庫)からヒントを得て、地球深部でのマグマの動きを山男の山行に重ね合わせたようなスケールの大きい、超幻想的話に仕上げられている。
第四話「ことろの首」は、そのものズバリ、宮沢賢治の『注文の多い料理店』を彷彿とさせる作品である。
第八話「歓喜月の孔雀舞」の主役である山で死んだ女性・小夜子と彼女と何か因縁のありそうな千々岩聡の郷里は、かの有名な柳田國男『遠野物語』(1910年)の舞台である、遠野である。小夜子に恋心を抱いていた“私”は、「私が死んだらこれを千々岩聡に渡してくれ」と言って渡されたアンモナイトの化石を渡しそびれている。その根底には、小夜子が生前に語った遠野に残される「魂月法」という呪法のことが妙に引っかかった為である。思い悩んだ挙句、“私”は「魂月法」とは何かを教えてもらうことを条件に千々岩聡にアンモナイトの化石を渡すことにする。満月の夜に「魂月法」が見れるという場所に行った“私”は、小夜子と千々岩聡とが嬉々として天に向かって昇っていく姿を目撃するのである。さて、この第八話「歓喜月の孔雀舞」は100ページという長い作品であり、序章、1~5章、終章の7章構成となっているが、その各章のタイトルは宮沢賢治の詩「原体剣舞連」の詩句を利用したという。
このように本作品は、明確に名前が出てきただけでも、ラフカディオ・ハーン、宮沢賢治、柳田國男という日本の地域に密着した伝奇、伝説を巧みに「山」と結びつけて創作された作品群ということらしい。何とも、若いころには実際に山小屋で働いた経験を有する著者ならではの作品と言えよう。