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投稿者:nano - この投稿者のレビュー一覧を見る
「犬の力」に続く話で、アート・ケラーとアダン・バレーラの麻薬戦争の話であったが、今回はさらにマスコミや地域民族なども絡んだ大がかりなものだった。新たな登場人物が現れるも、殺され、人の命の重さを十二分に伝えてくれる物語でした。そのような状況下にもかかわらず純情な恋愛が行われたりと全く目が離せませんでした。様々な人の思いがあった中でのラストバトルではドン・ウィンズロウの世界に完全に入り込んでしまい、一気に読んでしまいました。期待を裏切られたという感じでしたが、読んだ後の達成感はとても心地よかったです。
壮大な麻薬戦争絵巻完結
2016/12/20 16:49
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投稿者:katu - この投稿者のレビュー一覧を見る
壮大な麻薬戦争絵巻。やや冗長な面もあるが、読み応えは十分。主軸はアート・ケラー対アダン・バレーラだが、新聞社のパブロやアナたちの話が良かったね。結末はもちろん書かないが、『犬の力』から続いたこの話はこれにて決着なんだろうな。
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限りなくノンフィクションに近いとゆうか、随所にリアルもおり混ざってて、余計痛々しい。裏にある事柄を読み取らんとただの残虐な話になりかねん。壮絶すぎる。
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期待度はマックス。あの「犬の力」の続篇なのだから、当然だ。勇んで読み出したのだが、まったく思いもかけないことに上巻を読むのにえらく時間がかかり、なんと途中で投げ出しそうになってしまった。
いやいや、つまらなかったわけではない。断じてない。なんと言ったらいいか、エンジンがかかりそうになってはプスプス止まってしまうような感じで、物語の流れにうまくのっていけなかったのだ。メキシコの麻薬組織同士の相関図があまりに複雑で、なかなか頭に入らない。次々登場する人物の人生は皆たっぷりと濃く、読みとばしていくことができない。休む間もなく繰り出される凄惨な暴力、死、死、死…。
長くて複雑な話も、むごい話も、決して苦手なわけではないと思ってきたが、これはちょっとつらかった。たぶん、これが私たちの知らない「現実」を描いているからだろう。底なしの欲望と残虐さにまみれた悪人たちの姿にも震撼するが、最も胸に刺さるのは、そうした悪に巻き込まれていく人たちの恐怖と絶望だ。むき出しの暴力が日常となり、政府や警察もギャングと同じ(かそれ以上)に恐ろしい存在である社会で生きる…、その無力感が苦しい。
下巻に入ると物語はスピーディーに展開していくが、正義と悪はより混沌としていく。何が正しいことなのか、主人公ケラーにも答えはない。軍人である息子を殺されたイルマという女性が(彼女もまた報復のため殺されるのだが)、ケラーの手を取って語りかけた言葉が心に残った。
「アルトゥーロ、殺し返しても復讐にはならないよ。生きることで復讐するんだ」
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後編も一気読み。
前作「犬の力」も壮大なストーリーだったが、こちらはさらにスケールアップ。ここらも映画「ゴッドファーザー」の1と2の関係に似ている。
どこまでもリアルにメキシコ及びその周辺での麻薬戦争が信じられない規模で展開される様がリアルに描かれ、これが現実とはとても思えない凄惨な戦いが続く。そして、その戦いの渦に巻き込まれる人々の切ないドラマが幾重にも重なりながら展開される。
ケラーとアダンの40年!にわたる戦いはついに決着を見るが、この物語のラストは”カルテル”が今も存続し続けること、そしてそれは麻薬組織だけではなく、政府、売人、軍人、警察、官僚、政治家、武器商人、石油メジャー様々の人知を超えた複合体であることを知らしめて終わる。
この圧倒的な迫力の小説の前にはただただひれ伏すのみ。
映画化(テレビ化の方が良いかな?)を期待するが、果たしてこの世界を描けるプロデューサーがいるかどうか…。200億くらいかけて、10話合計10時間くらいのシリーズに出来たらいんだけど。
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戦争というのは通常報道されている軍隊やゲリラによる国レベルのものと考えるのが一般的だと思う。しかしここで取り上げられるのは麻薬戦争である。麻薬との戦争に巨額の資金や武器を投じながらも、アメリカが密輸された麻薬に高額の金銭を支払っている事実を見つめ、大統領に麻薬の合法化を陳情までしたドン・ウィンズロウの問題意識は、実際に麻薬カルテルの戦争に巻き込まれて亡くなったジャーナリストたち(4ページに渡る)に本書を献じていることでもわかる。
世の中が狂っている。麻薬カルテルも狂っている。それを追う捜査官も狂っている。ならその全貌をここで見せてやろうじゃないか。そういった気構えが作品に込められている。
無論、作者ウィンズロウにとって麻薬を題材にしたのは初めてのことではない。三人の若者を主人公にして麻薬を道具にした富と栄誉とその代償を痛みとともに描いた実に抒情詩的な作品『野蛮な奴ら』『キング・オブ・クール』のシリーズ二作は巨大カルテルに翻弄されつつ青春を投じてゆくエネルギーに満ちた作品であった。
そして何よりもDEA捜査官アート・ケラーと宿命の対決を余儀なくされる麻薬王アダン・バレーラの30年戦争を描いた『犬の力』である。本書は、一旦収束を見たかに思われた『犬の力』のその後の10年を描いた完結編なのである。あまりにも大作であるゆえに、『犬の力』にもう十分と感じた向きには、この作品に向き合うのにある種の覚悟が必要なくらいだ。
メキシコ麻薬戦争を題材とした現代の『戦争と平和』という言葉は間違ってはいないと思う。大量殺戮が日常となった国境の街フアレスを中心に、カルテルの戦争はセータ隊なる武装勢力による事実上の民間支配まで生み出してゆく。
かつて『ダブル・ボーダー』(ウォルター・ヒル監督/ニック・ノルティ、パワーズ・ブース主演)という映画で一大麻薬武装帝国を国境地帯に築いたアメリカ人とこの王国を破壊しに行くUS側の特殊部隊の戦争を見て、こんなことあるわけない、ヒル監督が指示したペキンパ監督の『ワイルドバンチ』へのオマージュ映画だ、くらいに思っていたのだが、それを圧倒する世界が、事実この21世紀に、ほぼ現在進行形のような形で小説に描写されるのだ。フィクションと称しながらほぼ事実に基づいた形で。
冷酷で機械的に殺戮と拷問に明け暮れるカルテル間戦争の狭間に、救いとなるのはジャーナリストや彼らを取り巻く勇気ある個人たちというチームの姿が見られる。彼らの命を賭けた取材、正義感、そして魂の強さは、本作のなかで白眉と言える部分だ。こうした民間の闘いはもちろん多くの犠牲を伴うが、屈しない精神がなければこの世には救いがない、そんなことをどうしても書きたかったのであろう作者の真情が嫌というほどわかる。
力と魂のこもった作者一世一代の大作である。ここのところ二作同時刊行された『報復』『失踪』に続けて、作家的才能を目いっぱい発揮しているかに見えるウィンズロウの現在。昔、青年探偵ニール・ケアリーのシリーズを出していた頃(あれはあれでぼくらを十分に魅了した)に比べると、まるで別の作家だ。スケールが一回りも二��りも大きくなり、視野が広がり、現代の預言者のような風格までついて来た。われらがドン・ウィンズロウはどこまで高く飛翔してゆくのだろう。
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本を持つ手が真っ赤に染まっていく錯覚に陥るほどの膨大な量の血が流れる。延々と繰り返される殺戮と虐殺。ウィンズロウは、いつ、どこで、誰が何人殺されたと丹念に書く。死者を積み重ね、カウントする。なぜ省くことなく、記録するのか。不毛の大地。対抗手段も持たず殺されていく人々。生きた証しは、犯され、焼き尽くされ、死者の無機質な数字へと変わり果て、地の底へと投げ捨てられる。一切の救いなどない無常の世界。誰が、一人ひとりの名を刻みつけるのか。ウィンズロウは、「麻薬戦争」で犠牲となったジャーナリストの名を本書の冒頭に置き、声無き市民の代弁者として記者の死を記す。類無き暗黒のクロニクル。この激烈なる警告を含んだ物語を真摯に受け止め、ウィンズロウの煮え滾る怒りを共有し、今現在も犠牲となっている人々に思いを馳せるべきだろう。
圧倒的な破壊力でウィンズロウの名を一気に高らしめた〝前篇〟「犬の力」は、麻薬カルテルが強大な権力を掌握するまでの抗争の年代記であり、クライム・ノベル/ノワールの新時代到来を宣言した記念碑的傑作だった。「個」に焦点を当て、成り上がるためには手段を選ばない者どもの狂気、麻薬産業の施しを受けつつ生きながらえる国家の有り様を、DEA捜査官アート・ケラーを縦軸、麻薬王アダン・バレーラを横軸にして、緊迫感溢れる劇的な展開で読ませた。その後篇となる「ザ・カルテル」は、社会的視野を更に拡げ、自国政府を遙かに超える冨と権力を手にしたカルテルの栄枯盛衰を生々しい描写で徹底的に記録し、ケラーとバレーラの最終的決着までを描き切る。
刃向かう者は一人残らず殲滅する。その暴力の噴出の凄まじさに圧倒される。前篇には少なからずあった「希望」の残滓も消え失せ、加熱する国家ぐるみの麻薬戦争には未来も無く、ただ虚無感のみが漂っていることを序盤で示す。バレーラ脱獄を知ったケラーは、何をしようとも無駄だという諦めのムードを断固拒否し、自らも暴力を行使しつつ、カルテル潰しに再び着手する。だが、立ちはだかる敵は、より力を増したバレーラのみならず、公然とメキシコを分割し所有する凶悪な暴力信奉者らであり、力への対抗は力でしかないことへの無力感に苛まれていく。激化する覇権争いに乗じてカルテル同士が潰し合う火種をまき続けるケラー。そんな中、非暴力で立ち向かう女性医師、言葉の力で変えていこうとするジャーナリストらとの交流が、孤独なケラーを変えていく。さらに、老いたバレーラは血統へのこだわり故に自滅への路を歩み始める。辿り着いた終幕の何ともいえない虚脱感を、結局は暴力でしか解決し得なかったことへのニヒリズムとみるか、全てを破壊したのちの再生への兆しと受けとめるかは、人それぞれであろう。
浅はかな杞憂かもしれないが、ウィンズロウの身が心配だ。「犬の力」を読み終えた時と同じ思いが去来する。10年の間隔を空けているとはいえ、前人未踏の地を開拓した凄まじい小説を二作も上梓して、完全燃焼してしまったのではないか。例えフィクションとはいえ、永年にわたるメキシコ/アメリカ両国の恥部ともいうべき麻薬問題と実在する巨大カルテルの罪過を抉り出して、生命の危険に曝されてはいないのか。登��人物は架空だが、主題とするカルテルの実態は、ほぼ事実に即している。ウィンズロウは、半世紀にわたる人々の血に染まった地獄絵図を俯瞰しつつ、敢然と地に降り立つ。そして、五感全てを研ぎ澄まして、無残な惨状を言葉に置き換えていく。
この壮大なる暗黒史は、ルポルタージュに迫る力強さを持ち、鬼気迫るウィンズロウのジャーナリスト精神と作家魂が昇華した超ド級のエンターテイメント大作である。
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麻薬戦争は、ついに一般市民やジャーナリストまで巻き込み、罪のない人たちが次々と惨殺されていく。この世界に救いはないのか。しかし、マリソルやアンを見ていると、それでも抗う人の姿に希望を感じる。
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ケラーとバレーラの年を重ねることによる関係性の変化、周囲の人、環境の変化、変わらず増々激化する麻薬戦争。ラストに向かい壮絶な殺戮の繰り返しが背景でながれるシーンのように物語が進み、一気に読まずにいられなかった。
犬の力と同様、それ以上かもしれない傑作。
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残酷さを競う様を記載しすぎて、ちょっと長すぎになってまった気がする。
前作の方がスピード感があった気が...
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私の評価基準
☆☆☆☆☆ 最高 すごくおもしろい ぜひおすすめ 保存版
☆☆☆☆ すごくおもしろい おすすめ 再読するかも
☆☆☆ おもしろい 気が向いたらどうぞ
☆☆ 普通 時間があれば
☆ つまらない もしくは趣味が合わない
2017.5.15読了
上巻に合わせて記載。
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メキシコの麻薬戦争を舞台にした作品。続編らしいが本書だけでも十分楽しめる。が、それよりこのような殺戮が現実に起こったことだと思うと本当に恐ろしい。
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前作のように少しだが救いのある終わり方ではなかった。最後まで激しかった。
主要な人物の生き方が絡み合っての最後の地で帰結は見事。
問題はこの狂った世界がほぼ事実に近いということ。
ちょっと調べただけでもいくつもの本作と同様の記事が見られるということ。
Z1が実在したとは。
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圧巻。
鳥肌と震えが治まらない手でひたすらページをめくった。
まさかのケラーとアダンの共闘とその結末に心震えるものの、それ以上に心で血の涙を滂沱と流した箇所は主に以下の3箇所。
1.ベラの内通の事実を突きつけられたルイス・アギラルが、家族の安全のために退いたとしても「誰もあなたを責めない」とケラーから諭されても、「私自身が責める」と即答するシーン(P.13)
2.フアレス谷から避難することを拒むエリカ・バイエスが、逃げることは恥ずべきことではないとケラーから諭されても、「わたし自身が思います」と即答するシーン(P.227)
3.パブロ・モーラの最期と「野生の少年」が投稿したメッセージ全文(P.512-519)
特に3.はつらすぎる。
パブロが凄惨に人体破壊されて嬲り殺された遺体の様子を、敢えてこの物語の中で最も精緻に描写するという救いのなさに対し、一市民である一人の弱者の高潔な魂が生み出した「声なき人々に代わって」という告発文は涙無しには読めない。何度でも。
この「声なき人々に代わって」は現在のこの国においてはもちろん、過去未来のあらゆる共同体においても読まれ続けるべきメッセージだと思う。
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犬の力からの
アートケラーとアダンバレーラとの戦い。
途中双方、間に様々な強大な敵もあわられるけど、
結局ケラーの勝ち。
ケラーも悟るように、カルテルが人を呼びあつめる。
終わらない世界。
チュイ、アダンの息子(実際は本当の血縁ではないけど)との戦いなんてのもあるかもしれない。
本当に分厚い本だけど、読めてしまうから不思議。
ドン・ウィンズロウの巧さ、翻訳が素晴らしいのだろう。
楽しかった。