紙の本
最果流青春小説
2016/03/08 21:54
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書「渦森今日子は宇宙に期待しない。」はその名の通り、宇宙人女子高生の渦森今日子が宇宙に期待せず、地球で高校生活を送る青春小説です。
物語は数人の高校生を軸に展開し、物語のテンポが良いのでスルッと読めます。地球人でも宇宙人でも、将来のことなんて分からないし、友達の何気ない発言にイライラするし、無性に今を楽しみたい。そんな当たり前のメッセージでも最果節に乗せると、ポップで切ない素直な小説になるところが面白かったです。
過度に甘い訳でもなく、かといって爽やかとも違う。アツい台詞が飛び出した瞬間に、急速冷凍。そんな表紙デザインのような変わった青春小説でした。
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女子高校生の中に宇宙人がいつの間にか自然に紛れ込むという漫画みたいな設定のシュール系コメディとでもいうべきか。4編ある話の中で毎話繰り広げられる同じやりとりに、3話目でだいぶ飽きてきたが、最終話で予想以上に面白かったし、最後まで読んで、このスタイルでキャラぶれずに書き通した作者に脱帽
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ジャケ買いした。越谷オサム『いとみち』『陽だまりの彼女』北野勇作『きつねのつき』などで表紙を手掛ける西島大介氏の表紙。イラストが好きで買ってるんだけど、本人の著作は『世界の終わりの魔法使い』くらいしか読んだことないのでなんとなく後ろめたい。
著者は詩人さんということだけど、詩って買ったことないからその辺はよく分からない。内容をちゃんと絡めた感想は気が向いたら改めて書く。
青春小説と分類されるものを読む度に、過去の自分が抱いていた様々な思いが蘇ってくる。力加減を知らずにとにかくがむしゃらだったこと。将来を憂いて布団の中で涙を流したこと。自分にシーリングを設けることを知らずに、いくらでも夢を見たこと。過度な自己嫌悪でどこまでも自分を追い詰めたこと。
そんな様々な想いが飛び交うなかで、この小説を読んで蘇るのは、「焦り」の感情。夏休みの宿題が終わらない、卒論が間に合わないかもしれない、という焦りではなく(それはそれで恐ろしい思い出だし、今でも嫌な夢シリーズの一翼を担っているけれど・・・)、その年齢で得るべき様々なものを取りこぼしているのではないかという不安や、そんな自分への不甲斐なさ、劣等感だ。
私が青春小説を読むのも、自身の青春時代にたくさんのものを取りこぼしたと考えてきたからだ。夕日が差し込んだオレンジ色の教室に大切な忘れ物を取りにいくような感覚。それはそれで大切なことだと思う。今なお抱える幼少の頃の傷を、いくつも治してきた。解決していなかった悩みに、いくつも決着をつけて、思い出として昇華してきた。
だが、そうした悩みや傷の周りには、常に焦燥感に押しつぶされそうになっている自分がいた。「私はどうなってしまうんだろう」という恐怖。それに突き動かされて前に進むこともあれば、蹲ってしまうこともあった。どちらにせよ、一所懸命考えていた。
結果として、何らかの答えに行き着く人もいるかもしれない。だけど、私の場合、途中で心が折れてしまい、そうして焦燥感の中に身を浸すことを止めてしまった。確かに、かなり危ない状態だったから、しかたなかった。ずっと全力で走り続けられるはずがなかった。知恵をつけるうちに、自分に諦めさせるだけの理屈をこしらえることができるようになった。大人になるってことはそういうことだっていう考えを、何かの主人公みたいに否定する度胸もなくなった。そうした自己防衛は結局のところ自己嫌悪を生み出すだけで、そんな自分を捨て去ることもできずに、死にかけの体に意味のない延命措置を施してきた。
そんな中、不安の中を必死でもがいていた自分に、否定しなくてよい過去の自分にようやく出会えたことが嬉しかった。大した成功体験もない中で、それでも自分を奮い立たせてくれるものがあることに気が付けた気がする。忘れていた昔の自分に申し訳ないと同時に、今ならしてやれることがあるのではないか、と思える。
自分を変えなければいけない境遇にある私にとって、一つの画期となる読書体験だったのかも知れないな、と感じた。
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おもしろかったー!青春だった!やはり、詩の集合体ってかんじだからか、読みやすい!!ハルヒのパロなのかなって感じた。京アニがアニメ化したら成功すると思う〜〜雰囲気にかなり谷川流先生み感じた
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宇宙人だって青春感じるってなんかいい。
若い文章の中にさりげなくちょいちょいイマドキにはわからん笑いのツボが…まじで大学受験する5秒前って❗️
律がかわいい。
そして宇宙よりも地球を選んでもらえるなんて、この世界もキラキラしてみえます。
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主人公は地球で女子高生をやっている宇宙人。でも普通に地球人と同じ生活をし、普通の高校生となんら変わらず友人との関係や進路について悩んだりしている。奇抜な世界設定や特殊能力が幅を効かせるのでもなく、いわゆるキャラクター小説でもない。誰もが思春期に持つ現状や将来に対する漠然とした不安を描きだすことに主眼を置いた青春小説である。ただ、会話文がコミカルで量も多く、地の文も大方が主人公の心の中のツッコミといった具合。なので、ライトノベルと普通の小説の中間くらいの位置付けか。
私はとても面白く読めた。「覚悟」についての主人公の気づきは私にとっても有益な学びであった。登場人物たちの希望進路はバラバラだが、どれもそれぞれ自分固有の価値観を反映していて面白い。個人個人を尊重する空気が物語には流れていて、それが気持ちいい。あとがきには「青春とは何か」ということに対する著者の考えが書かれていて、これが実に素晴らしい。私にはキラキラした青春なんてなかったし、青春とは何なんだろう?とずっと分からないでいたが、初めて納得できそうな答えに出会った。これは衝撃だった。物語はあとがきのための前菜だったのではないかとすら思える。小説の核にある想いが著者自らによって語られていて、読後の味わいを一段と深められるようになっている。
最後に少し客観的なレビュー。著者の感性の鋭さや言葉の展開力、選択眼は唯一無二だと思っているが、詩やブログに比べると本作ではその個性が薄まっている。しかし、それは小説という形式との相性の問題だろう。彼女の表現は、自分の中に潜む感情を自分のものとして短い文章という形に放出するとき最大限いきるのだと思う。長い文章に物語を構築し、創作人物を通した形で心情を表現するのは相性がベストではないのだ。とはいえ、彼女の感性や価値観は存分に反映されているし、詩に比べて小説の方が伝えたいことが分かりやすくなっているのはメリットである。最果タヒ入門用、もしくは彼女の世界観が好きな人にお勧めする。
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宇宙人の渦森今日子の女子高生な日々。
期待しない、ぽやぽやモラトリアムな日常。一応、地球への探査船に乗ってきたからには何かを調べてるんでしょうけど、そのうちに地球の生活が楽しくなったみたい。
もう一人の宇宙人・須磨さんがズレてて好きです。今日子は7年もいるし年齢も女子高生と同じだから溶け込んでるけど、須磨さんは来たばかり?っぽいですし年齢も3桁。かわいい。
夏合宿の展開は宇宙っぽい。乗ってきた探査船が7年間、今日子を待ち続けてたなんて…気の長い話だ。でも帰らなかったことで、今日子の進路は決まったし(NASAはたいへん)モラトリアムも終わり。
西島大介さんの絵でみんなわちゃわちゃしてたなぁ。
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私は、私であること、諦めないでいたい。
渦森今日子、17歳。女子高生で、アイスが好きな、宇宙人。最後で「え?」となったかもだけど、私も、私の友達(岬ちゃん、柚子ちゃん)も、そんなことは気にせず、部活動、体育祭、夏合宿、と毎日を突っ走る。でも、なんだろう。楽しいのに、面白いのに、もやもやする。私が女子高生だから? それとも、宇宙人だから? この“痛み”に、答えはあるの――? ポップで可愛い、青春小説の新地平。
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なんとなく手に取りましたが、まさかマジモンの宇宙人が主人公とは・・・。
でもあくまで普通の女子高生している宇宙人さんの地球人の高校生との日常ものでした。
内容はいつもの最果先生の詩に近い気もする・・・とりあえずサーティーワンは最強。
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nexレーベルなので手に取った初読み作家さん。宇宙人が普通に女子高生として宇宙探偵部に入っている設定。ライトでポップでテンポよくするする読める。面白かった。
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よくあるモラトリアム女子高生の青春物語だ。ただ、その女子高生が宇宙人であることを除けば。
宇宙人が主人公の日常系、とも言えるかも。主人公は、日本社会に溶け込んでいる宇宙人で、親友の何人かには正体を明かし、普通に暮らしている。その行動原理や感情の起伏は余りにも普通過ぎるのに、やっぱり宇宙人なのだ。
言葉の端々、考え方の枝葉に、ほんの少しの違和感を埋め込み、結果的にとんでもなくエッジの効いたキャラを生み出している。正直、他のキャラを圧倒している。言葉のテンポ、リズムも独特で楽しめる。
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女子高生青春系、かと思ったら主人公が宇宙人という特殊な設定。しかも日常に溶け込んでふつうの女子高生をしている。アイスが硬すぎて愚痴る宇宙人というのを初めて見ましたけど違和感はありませんでした。宇宙人だけど友人との関係や恋愛やふつうに進路に悩んだりしてておもしろかったです。最果先生らしいことばや節回しが軽快でリズミカルで心地よかったです。
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渋谷のジュンク堂で特集を組んでいた中原中也賞受賞の詩人、最果タヒの小説。
宇宙人が女子高生というとんでもない設定ながら、軽妙なテンポと会話で最後まで一気に読了させてくれた。
17歳はなにをしたいか?なにになりたいか?わからないまま、このままじゃだめだという焦りに追われている。
たしかに若い頃はそうだったが、いい歳になった今でも、同じ焦りを持っている。多分、死ぬまで同じなんだろうな。
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彼女たちは地球人だけど女子高生だから理屈が欠損していて、そうしてそれがかわいらしさになるギリギリの年齢だった。ああ、このまま大人になるとかわいいどころか痛々しいばばあになるだなんて、こうあうのって現代社会の闇よね。どうしてそんなにかわいさの定義が主語によって変わっていくの。罠っぽい。
今の自分にできること、叶えられるレベルの夢だけ見て、そうして目標をどんどん小さくしていく。身分相応なんて言葉で言ってしまえば利口に思えるけど、結局、夢を見ていないのは柚子ちゃんのほうだ。東京に出てどうするの。なんでもあるけど、でも、夢は売ってない。できる範囲で、可能なレベルで、努力が必要にならないように夢を見るのは一番、不自由に見えた。もし最高の能力があったら何になりたい?私は、柚子ちゃんがなりたいものはなんなのか、ただ友達だから知りたい。原宿に住んでなにしたい?どういう大人になりたい?ワクワクしながら話したかった。そうしたほうが楽しいって、絶対そう思うから。
夢は簡単に私たちを裏切って、たぶん、ほとんど叶わずに終わる。なんとなく、それはわかる。でも、それって結構どうだっていいことなんだね。決めちゃったらわかる、叶えるより、なにより、諦めないでいたいと思う。
私は、私であること、諦めないでいたい。
最後の夏だもんね。なにもかも、がんばりたいね。やりたいこと、諦めなくないこと、好きなもの。たとえ失敗したって、くじけたって、彼らは私にとって特別。それはきっと、変わらない。今がそれを保証してくれる。
2018.10.16
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十七歳の女子高生として友達と過ごす宇宙人の呑気な日常が、つらつらと喋るみたいな独特のポップさのとても個性的な文章で彩られていて、はじめは構えたけれどすぐに馴染んだ。秘密を知りながら気にせず受け入れている友達と、オカルトに憧れる部長、体育祭に夏合宿。良い意味で普通に過ごす独特の瑞々しさ。楽しかった。