商品説明
革命なんて、しゃらくせえ!
「昭和の妖怪」岸信介と対峙し、
「聖女」樺美智子の十字架を背負い、
「三代目山口組組長」田岡一雄と
「最後の黒幕」田中清玄の寵愛を受け、
「思想界の巨人」吉本隆明と共闘し、
「不随の病院王」徳田虎雄の参謀になった
全学連元委員長、47年の軌跡。
ノンフィクション作家・佐野眞一が北は紋別、南は沖縄まで足を運び、1984年に物故した60年安保のカリスマの心奥を描く。
「唐牛健太郎を書くことは私自身の過去を見つめ直す骨がらみの仕事だった」――著者3年ぶりの本格評伝
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紙の本
歴史が人を伝説にし、捨てる
2016/12/25 12:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:燕石 - この投稿者のレビュー一覧を見る
60年安保ブント系全学連で委員長を務め、華々しい「伝説」となった唐牛(かろうじ)健太郎の評伝。とかく、60年安保の対立構図を、当時の首相岸信介=右翼 対 全学連=左翼と単純化し勝ちだが、著者は、根本を米国駐留軍の力を借りない自国軍による防備を目指したナショナリスト岸信介と、当時のソ連に追随する日本共産党に反旗を翻したナショナリスト全学連の、「ナショナリスト同士の対立」と捉える。それゆえ、田中清玄等の右翼勢力が全学連に資金援助を行ったことも、ある意味必然だった。更には、経済界でも、レッドパージされた戦前のエスタブリッシュメント勢力が岸信介との結び付きて復活の兆しを見せ始めたことを背景に、これら旧勢力と、戦後の復興を目指して自信をつけつつあった新興勢力との対立が、あった。そして、彼らが、米国の軍事力の傘に入ることと引き換えに経済成長重視路線を志向し、岸内閣に替えて池田勇人内閣を誕生させ、高度経済成長を実現させるのだが、60年安保にも「すべての政治変動の背景には、必ず経済的な原理が働いている」と言える。こういった文脈の中で辿られる唐牛健太郎の人生の軌跡は、時代に押し上げられ、文字通り捨て去られ、忘れられた。そして、私生児という出自ゆえに、常に孤独であり、それゆえに人懐こく、男性・女性双方を魅了する好漢だった。橋本徹に対するヒステリックな誹謗中傷記事を書き、私を含め多くの佐野ファンを失望させ、ジャ-ナリストとしては葬り去られるはだった佐野眞一が、なぜ唐牛の評伝を書いたのか?その答えは、正に時代と真正面から向き合うことにより、もう一度歴史に誠実に立ち会うことを、佐野自身が宣言するために他ならないと、私には思える。