紙の本
吾輩は茶碗の話は奇想天外
2019/01/27 20:52
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて筒井康隆氏が自署「みだれ撃ち涜書ノート」の中で、田紳有楽を「いかにも私小説的といった装幀、造本、読み始めてみると、書きだしが私小説的」と読み進めて行くうちに、とんでもない破天荒な作品だと気づき、最後にはこんな無茶苦茶をいけしゃあしゃあとかける作者を羨ましく思っている。まさに、とんでもない作品で、吾輩は猫であるではなく、吾輩は茶碗であるなのだ。そして、骨董屋であると思われた主人は弥勒の化身だったりする。「空気頭」も、初めは私小説によくある看病物語かと思っていたら、話は糞尿を使った精力促進薬の製作物語になってしまった。とんでもない作家である
5人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:もくもく - この投稿者のレビュー一覧を見る
これ、変ですよ。ぜんぜんわかりません。まだ夢野久作のほうがわかるってくらいです。
川上弘美のエッセイ集『ゆっくりさよならをとなえる』にこれが紹介されていたので読んでみたのですがねえ。
けどまあ、理解しようなんて思わずに、文章のノリや、幻想世界の雰囲気を楽しめばいいんじゃないかなと思います。
読んでいて、伊藤若沖のあの幻想的で緻密な絵を思い出しました。
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なんだもー意味わかんない。完読するのしんどかった。最後まで分からない。この小説の世界がつかめない。でも愛しい中毒だ。
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イリュージョンとはこういうことか。
著者はお医者さんだったとのこと。
輪廻転生、生死のエッセンスが濃いのは職業によるものかどうなのか。
これから長く付き合っていきたい本。
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町田康みたい! というのが最初の感想。逆か。そして噂には聞いていたが、茶碗と金魚の●場面はすごい。このわけの分からなさ、でもそれこそが●の真実かも〜
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どんぶりやら湯飲みやらが己の私利私欲のままに動き回ってます。
最後、話が広がりすぎて笑った。
空気頭を読んで、私小説の面白さに気付いた(遅い)。
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川上弘美の本に出てきたので読んでみたら、面白かった。
焼き物が主人公でいろいろな冒険をする話。下手な人間よりも人間臭い焼き物たちのやりとりが笑える。
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田紳有楽はとにかく素晴らしい。
池に放られた茶碗は妖怪の様でいて人間臭い。
静物である筈の彼らは皆うるさい。
どれがイカモノでどれが本物なのかがわからなくなる。
それは空気頭にも同じことが言える。
著者自身の創作のスタンスもそうなんだろうか。
空想と現実が混同していく様子は、一体何が偽物で何が本当なのかが判らない。
しかし空想も現実と平行線上にあって、空想もまた現実なのだ。
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不思議な世界です。田神有楽はどこか祭典的なはじけっぷりがあります。アニミズム?というか。本気なのか冗談なのか、ニヤリとさせられました。空気頭は何だか暗くてびっくりしました。私小説ってこんな感じなんでしょうね…。
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田紳有楽は愉快な話だと思った。それに対し、空気頭は重い話だったように思う。空気頭では、『私』が自分の内面を理解しながらも、それに抗おうと必死な様が印象的だった。田紳有楽では、柿の蔕や滓見白が並外れた(飛行術や変身の術といった)目立つ能力を持っていたのに、グイ呑みは少々地味だったように感じた。個人的には弥勒菩薩の立ち位置が一番良かったかもしれない。
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焼き物になりたいという願望を持つ弥勒菩薩の主人公、その主人公が買った焼き物を池に沈め、その沈められた焼き物が生き物としての特性を獲得して己のルーツを語る「田紳有楽」、私小説「空気頭」の二編いり。
風景描写の美しさに圧倒された。そんなにたくさん書かれているわけじゃないんだけど、田紳有楽の一ページ目は本当に美しいと思う。
「空気頭」は中間、そのばかばかしさとまともに向き合うしかない空虚感というかそういうものが染みます。
巻末の作家紹介がすごくよかった。書かない文学修行。かっこいいな藤枝静男。他の作品も買おう。
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私小説を書く作家だけど、すごぐ変な本ですよ、と教えてもらって勢いで購入した本。
田紳有楽は、冒頭、話の脈絡がまったくつかめなくて、???の連続。
難しそうな本だと構えて読み始めたのに、これはSFか、ファンタジーなのか、おもしろいではないか!と新鮮だった。
部屋に戻るといきなり白シャツを着た男がいて、ひとしきり講釈をたれたら、池にボチャンと飛び込んでしまったりする。あと出目金と器の間に子どもが産まれたりもする。なんじゃそりゃ。
なんだかリズムが楽しくなる文章で、音読してみたくなるところあり。
空気頭は、転じてまさに、現実。なのにどことなく靄がかった世界の話のような気もしてしまうのはなんでだろう。
わかるってわけではないけれど、作者さんの明るくはない感情に若干共感するところがあるからかもしれない。
後を引く読み心地で、1週間前に読み終わったのに頭から離れない。なんてまとめていいのかわからない。
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[ 内容 ]
あくまで私小説に徹し、自己の真実を徹底して表現し、事実の奥底にある非現実の世界にまで探索を深め、人間の内面・外界の全域を含み込む、新境地を拓いた、“私”の求道者・藤枝静男の「私小説」を超えた独自世界。
芸術選奨『空気頭』、谷崎賞『田紳有楽』両受賞作を収録。
[ 目次 ]
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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【田紳有楽】
骨董屋の部屋を訪れた男が、自己流処世術を語り庭の池に飛び込むところから物語は始まる。
男は池に沈められている朝鮮生まれの抹茶茶碗の柿の蔕(ヘタ)。地下水脈を通って出歩いたり人に化けたりしている。
池の中には偽物陶器たちが埋められ、五十六億年後の弥勒説法の成仏永世を得るまでなんとかうまいことやりたいなあなどと思っている。
志野筒型グイ呑みは色気漂う金魚のC子との間に生命を超えた情欲を持ち卵を産卵させ、
モンゴルから来た丼鉢の丹波は触手を出して空を飛んだり柿の蔕と出し抜きあったり。
こんな物資を所有する人間たちだってただもんじゃない。自称『永生の運命を担ってこの世に出生し、釈迦の遺命によって兜率天に住し、五十六億七千万年後に末法の日本国に下向して龍果樹の元で成道したのち、如来となって衆生に説法すべき役目を負った慈氏弥勒菩薩の化身であるが~~~』、なんて大仰なこと言っているがこの世では老人性掻痒症(そうようしょう)に悩まされる骨董屋、
時節に合わせて姿を変える人間体の地蔵観音、
骨董屋の庭で待ち合わせする妙見菩薩北斗尊星王と大黒天の化身、
彼らはそれぞれにそれなりに五十六億年後の釈迦説法を待つ。
…なに~?五十六億年後には太陽が膨れ上がりブラックホールに地球も月も呑みこまれるから説法どころじゃないって?!
こうなったら唄って踊ろう。
骨笛に銅鑼、鐘に槌。
丼鉢は飛び回り、柿の蔕は飲んだくれ。
ププー、プププー
デンデンデデン、ドドン
ペイーッ
オム マ ニバトメ ホム
ペイーッ ペイーッ
「田紳有楽 田紳有楽」
【空気頭】
冒頭で著者は二つの私小説手法について語る。
ひとつは『自分の考えや生活を一分一厘も歪めることなく写していって、それを手掛かりとして、自分にもよく分からなかった自己を他と識別するというやり方で、つまり本来から言えば完全な独言で、他人の同感を期待せぬものである』
もうひとつは『材料としては自分の生活生活を用いるが、それに一応の決着をつけ、気持ちの上でも区切りをつけたうえで、わかりいいよに嘘を加えて組立てて、「こういう気持ちでもいいと思うが、どうだろうか」と人に同感を求めるために書くやり方である。』
そして著者は「自分は今まで後者で書いてきたが、前者のやり方で書こうと思う」として、自分の生活や心情を語る。
身内の醜さには怒りを感じる。
自分の妄執、憤怒、他者への無関心を語る。
多くの兄弟を結核で亡くし、妻も同じ病で長いこと入退院を繰り返している。
病の妻との日々、妻へ愛着を感じながらも妻の死を楽しく空想する。
果たして自分たちも夫婦は二世なのか。
…そこまでは自分の現実的な過去をシビアな自己分析ていたのだが、その後は文体も内容も一変します。
自分は親族から受け継いだ静的乱脈に悩まされていました。
病の妻以外の女の躰と交わり、女の幻に追われたり、そしてその肉体から逃げ出したりします。
そんな時は自分の考えた人口気頭装置を取り出します。皮下注射に空気を入れ、針を眼球の奥から視神経交叉部へ、そして脳下垂体まで届かせ抽出液を挿入し脳内に空気を送るのです。(←この辺体がムズムズしてきたのでちゃんと読めなかったので違ってるかも/-。-;)
この人口気頭装置の元は、人糞研究から考えられました。
人糞に関する科学実験、利用法、漢方効果、病気療法、飲食法、一通り試しました。(←この辺もちゃんと読むと変な臭いを感じそうで表面だけ読み~~/-。-;)
或る時自分の意識が空中に飛び、自分の躰を見下ろす経験をしました。それは糞尿からも女体からも解放された時だったのです…。
…いやいや、『自分の考えや生活を一分一厘も歪めることなく』と言って語ったのが糞尿生活に眼球から空気頭治療法って、どうなってるんだこれ(@@)
性欲や糞尿飲食や手術の描写に「これだから医者が作家になるとコワいんだよ~~(´д`)」となりながらも本から目が離せない。
いったい自分は何を読んだのだろう。全く読書と言うのは自分をとんでもない所へ連れて行く。
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何というか呆気にとられてしまった。現実と妄想がこんな絡み方をするなんて。冒頭に筆者の断り書きがあるけれど、そんなもの消し飛んでしまった。ただ、奥様の闘病の様子が凄まじく、胸が痛む。医者ならではの冷静で緻密な描写だからこそ、静かで冷たい悲しみがひたひたと染みてくるようだ。