紙の本
物語の基礎知識
2018/07/16 18:16
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投稿者:病身の孤独な読者 - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語論入門といったところ。もし本書で興味をもつことができたら、文学批評論の分野と言語研究などに入るのが良いと思われる。
電子書籍
読解に自信の無い人に
2023/08/22 09:24
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:こだ - この投稿者のレビュー一覧を見る
物語の表現技法について、小説やマンガやアニメや映画等、さまざまな物語を引用して述べられた本。物語を書きたい人にも有用だけれど、物語を、というか「文脈を読む」ということについて自信のない学生さんにお勧め。理論が言語化されていればわかりやすくなることもあると思うので、そういうタイプの人に。
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『基礎編』『応用編』の2部構成になった入門書。
前半で『物語論』について基本的なことを解りやすく述べ、後半では実際に作例を挙げて、『物語』の分析が行われる。
圧倒的に面白いのは後半の『応用編』。ごく最近のヒット映画やアニメから、ノーベル文学賞受賞作家、教科書に載っているような文豪の作品まで、様々なタイトルが挙げられる。後半部分だけで相当なブックガイドになるのではないか。
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プロップ 31の機能
物語の筋の展開に直接影響を及ぼす人物の行為
人物は機能に従属する存在、キャラクター性やその心理などはあまり重要なものではなく、何をするかという役割の方が大切(敵対者、贈与者などとその役割で呼ぶ)
vs. 近代小説では人物が「個人」として描かれるようになり、その心理も重点的に描かれることが多くなった。人物を1つの存在として描くようになった
昔話のように比較的単純な物語では、まだその個性は豊かではなかったので物語を展開させる行為が特に注目されることになった
クロード・ブレモン
物語の展開=可能性の論理
1行動が起こる前
2行動が進行中
3行動が終結
箱を渡されればそれが重要な役割を果たすし、銃が渡されればそれは放たれる
ロラン・バルト
物語は、「機能」と「指標」の組み合わせ
指標=物語の筋には関係しないが、人物のキャラクター性や雰囲気など、その他の状況を伝えるもののこと、時間的展開のない静的なもの
物語によって、機能を重視するものと、指標を重視するものがある。昔話はエンターテインメントでは、物語展開の方が重視されるのに対して、心理小説などでは、心の動きに焦点が当てれれる
二択を迫ることによって物語の筋を展開させるような機能=枢軸機能体
より副次的なもの=触媒
枢軸機能体のまとまり=シークエンス
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ナラトロジー:物語論
その昔、ウラジーミル・プロップについて知りたいと思ったことがあったので、本書で概略を把握できたのはよかった。
プロップの「31の機能」は、ロシアの魔法昔話という非常に限定的な対象に適用されるものであるが、物語のパターンの分析を最初に行ったという点で歴史的意義がある。
本書は理論編の第一部と分析編の第二部に分かれる。
日本語と他言語の違いなどが語られる第一部は面白く読めた。が、楽しみにしていた第二部は期待ほどではなかった。
『エヴァンゲリオン』『スラムダンク』『進撃の巨人』と、キャッチ―なタイトルが並んではいるが、正直客寄せパンダ感は否めない。
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物語構造を考えることは、世界に対する自分の立ち位置を考えること。…かも?
目から鱗だったのが物語の視点の問題について。
物語を作るときは視点の置き方を決めないといけないのだ。誰の視点で語るか。どの時点を起点にした視点で語るか。それと同時に物語に対してどんな距離感で語るか(ディエゲーシスとミメーシス)。
これを定めずに物語を作ろうとすると行き詰まる。というか困ってしまって語れないのだ(過去に小説書こうとして行き詰まった原因をようやく思い知る)。
普段の会話も同じだ。自分が話そうとする内容に対しどの立ち位置から語るか(客観的に語るのか、主観的に語るのか、両方を合わせながら語るのか)を決めないと話せないもんね。
というのが第一部の感想。
第二部は実際の作品分析。印象に残ったのは「この世界の片隅に」の距離をとることでエモーショナルな余韻を残す構造の分析。
あと文学史で出てくるような作品は、物語構造が発表当時センセーショナルだったのだなあということ。
物語に対して「構造」という分析視点を持たないで話の内容で捉えることになっちゃうのってないもったいない!魅力や面白さを理解しきれない。
本著を読んでそう感じた。
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完全な初級者向けとして書かれているけれども
用例の紹介の豊富さと、扱う理論の幅の広さは
今あるもののなかでは随一と言っていいのではないだろうか。
形態論、文体、構文、ナラティブの問題、展開などなど、
物語にまつわるものでいったら、あとは読者論くらいじゃないだろうか。
個人的に物語論の大事なところは
文章の技術と効果から純粋に物語をすくい出すところだと思ってる。
それは物語の物語性は、ほとんど人間性の基礎に根付いているからです。
ただの断言ではありますが、これに対しては物語に対する飢えが
少なくとも私に存在しているからそう言っています。
また、もっとも応用という意味でもすくいあげられた物語は有用です。
つまり、この本でも「シン・ゴジラ」や「この世界の片隅に」(漫画版)など
文章以外のメディア作品を扱えるのも、物語に固有のパラメータが存在するからです。
それにしても、各章立てごとに
複数の実例を挙げて説明していくのは、
著者自身の喜びがここにあることを証し立てているように思います。
本を書きたい人だけでなく、本の読み方の幅を広げてみたいと思う人にも
この著者の軽やかな紹介はきっと役に立つと思う。
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テクストによる語りの時間、速度、濃淡、視点等々、とっかかりよし。物語的現在について図示による整理要。後半の作品分析はやや蛇足。別の本にとっておいて本書ではもう少し広げたり(演劇・オペラ方向)、深めたり(信頼できない話者等)してもよかったと思うが。
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物語=動的な「機能」と静的な「指標」の組み合わせ(バルト)
物語のディスクール=プロップの形態分析をさらに細かく分類した理論(ジュネット)
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物語論の基礎をていねいに解説している本です。
前半は、プロップ、バルト、ジュネットらの仕事が紹介されています。伝統的な文学理論や物語論の背景にある哲学的な議論に踏み込むことは差し控え、物語を分析するための基本的な装置としての物語論を明快に解説しています。
後半は、じっさいに物語論の考えかたを用いて、さまざまな作品が解釈されています。とはいえ、こちらもあまりに難解な議論に流れることはなく、カフカ『田舎医者』、太宰治『ヴィヨンの妻』、ガルシア=マルケス『百年の孤独』といったよく知られている名作のほか、映画『シン・ゴジラ』やアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』、『魔法少女まどか☆マギカ』なども題材にとりあげられており、親しみやすい内容になっています。
物語論の入門書もいくつか刊行されていますが、本書はその基礎を明快に説明しており、読者に親切な入門書という意味ではとくにすぐれているのではないかと思います。
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本書は物語論(ナラトロジー)を紹介する本である。物語論とは、小説や映画などの文芸作品を読解する手法の一つで、内容よりも形式を重視し、物語の設計図を解き明かそうとすることに特徴がある。大学入試現代文の小説の読解方法に似ている、いや、私自身が習った方法が物語論に依拠している部分があるのかもしれないと感じた。テキストの文法や叙述の仕方に忠実に読解を進める点で、汎用性が高く機械的に適用するのにも向いている。だから、受験勉強にも有用だろう。高校時代に読みたかった・・・。
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琉球大学附属図書館OPAC
http://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB23428063
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読み終わった。
物語論にはもともと興味を持っており、大塚英志『ストーリーメーカー』でちゃんと触れた。今度は創作応用が前提ではない、普通の研究書・入門書としての物語論を読もうと思った。
はじめは橋本陽介『ナラトロジー入門』を読もうとしたが、何かの授業の参考書に指定されていたようで、図書館でなかなか借りられなかった。そんな中近くの公共図書館に行ったら、同じ作者が選書で物語論の入門書を書いていたので、この本を読む運びとなった。
やっぱり物語論は面白い。
普段何気なく触れている物語たちを分解するのは楽しいね。
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叙述のスピード(物語の時間)を決める要素として何があるか、またそれによってリアリティや臨場感がどのように変化するか、などが実例込みで説明されている。
この分類手法を使うと読者に対してこんな影響をこれくらい与えられる、という情報がたっぷり出てくるのを期待して後半の分析編を読んたが、あまりなかった印象。
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「第一部 理論編」では平易な言葉を用いて、物語論が生まれた経緯とその理論についての概説がされている。
「第二部 分析編」では外国文学やアニメ、映画といった多様な作品に対して、物語論の理論を用いた分析をしている。
前半の理論編は物語論の全体像を概観するのとができ、専門書へ踏み込む前の導入として優れていると思う。
後半の分析編では、文学作品に限らず人間が生みだしたものは基本的に物語として分析できることを示している。
本文引用
p258「物語論では、作者の意図が無視されているとよく言われる。しかしこれは誤解である。構造主義時代の物語論でも、無視されたのは『完全に作品を決定できる存在』としての作者である。作者の意図なるものを解読し、作り出すのは読者の側だと考えたのであって、まったく無視したのではない。」
p268「思うに物語というのは、人間の観念による構築物である。現実は物語的に把握され、物語は把握され、物語は把握された現実のように表象される。換言すれば、それは現実認識を抽象化し、普遍化したものである。現実は私たちの感情に作用するが、物語よ読み手の感情に作用する。それも、抽象化され、普遍化されている分、時には現実以上の作用をおよぼすのである。」