紙の本
耽美なる、退廃。
2016/04/16 17:40
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めたら勢いついてあっという間に読んでしまった。
あぁ、もったいない・・・もっと味わうべきだったか。
「狂乱へと向かう1920年代のドイツを舞台に、六人の男女が織りなす運命の輪舞」と
オビにあります。
では歴史ロマンなのか、といえばさにあらず。 1ページをめくっただけでその世界は反転し、記憶は虚構のかなたに舞い上がりつつまた地上に降り、誰かの願いが別の記憶を生み、「なにがほんとでほんとでないのか」について読者が考えるのをやめたころ、物語はその世界の仕掛けを明かす。
かなしくて美しい夢は、苦さの伴う事実に変わり、けれどそれでは説明のつかない部分も残る。
うわーっ、と読者を幻惑する物語(というか私自身が幻惑された読者)。
あー、もうこれは読まないと、わからない!
だって話の筋を話すとネタばれするもの!(2009年4月読了)
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退廃的で良かった。
ナターリャにはアメリカで幸せになって頂きたい。
蝋人形師、てめーは許さねえ。
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単行本も持っていますが、文庫も買いました。
解説に年表が載っていて、とても詳しいです。
皆川先生大好き。
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複数の登場人物の視点による短編から成る一つの物語。
解説の方が作ってくれた年表が、とても役立ちました。
舞台は、第一次大戦後のドイツ。
そんな混沌の時代に生きる、6人の男女。
それぞれの思惑は当然違うから、読んでいて混乱する。
久々に頭を使いました。
皆川博子は、やっぱり凄い。
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おどろおどろしく、細部までつまったストーリーにひきこまれました。
皆川博子ファンになったキッカケの1冊。
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果たしてこれはまったい幻想小説なのか、それとも小説の内なる史実を忠実に描写しているのか…?
特に読み始めの頃は、その構造の複雑さに多くの読者は戸惑うことだろうと思う。
別々のものにしか見えなかった物語たちがページを追うごとに徐々に繋がり、絡み合っていき、あたかも、観察者にいくつもの異なる顔を見せる多面体プリズムのような壮大な流れが誕生する。
そして、幻視描写であろうと思われていた荒唐無稽な出来事たちが、見事に理屈に適った事実として整合していく。
“雰囲気だけ”の幻想小説に決して収まることなく、隅々まで巧緻に計算しつくされた魅力あふれるストーリーにちゃんと仕立て上げる皆川博子氏の超絶技術には、いつものことながら舌を巻く。
選び抜かれた美しい日本語の語彙で紡がれる世界がまず蠱惑的で、それに加えてそんじょそこらのミステリーなど太刀打ちできないほどの、娯楽小説としての面白みも備えている。
「薔薇密室」、「聖餐城」などと同様に、本の中の舞台に浸りきることがとても心地よい。
と同時に、第一次世界大戦と第二次世界大戦の間、1920~30年代のドイツという国は一体どのような境遇にあったのか、という史実も物語から感得することができる。
最初の大戦に敗北し、不利な講和条約締結を経て、内戦、そしてナチスの台頭…。
退廃が蔓延る危うき状態ながらも、いろいろな可能性が花開く活況を呈した時代でもあった、ということがよく分かる。
蛇足ながら、瀬川裕司氏による文庫版の解説も素晴らしかった。
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6つの視点から描かれる1つの物語。
さまざまな視点から描かれているので最初は手探り状態。なのでなかなか読み進めづらかった。でも他の視点と重なっている部分が出てくると、物語の輪郭が見えてくる。
退廃的でほの暗く、それでいて激動的なストーリーが魅力的。
すべてを知ったあとで、もう一度読みたくなる作品。
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二大大戦の狭間の時代。
あまりに甘美で退廃的。
六人の語り手が織り成す物語は、最後にひとつの物語として完成します。
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大きい本を既に読んでたけど文庫購入。
幻想的な短編小説と、意味ありげな解説の繰り返しを、初めは手探りで読んでいくことになるんですが、お話の終盤、次第に全体像が見えだしてからのスピード感というか盛り上がりというか(読んでる自分の)
「これってこことつながって?」「ああっ!この人は」「このシーンは!」何度もページを繰りなおし、行ったりきたりして読んでしまいました。
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第1次世界大戦後のドイツを舞台にした、幻想小説。
それまで信じていたもの全てが壊れ、経済も立ち行かなくなった中で、それでも人は、幻想にすがってまで生きていこうとするのか。
1920年代のドイツは退廃的であったというが、結局それは八方ふさがりの中で逃げ場を求めた所以なのではないか。
ということを、美麗な文章と確かな構成力で訴えてきます。
主人公は、士官学校出で戦後ジゴロにまで身を落とした青年なのだけど、彼の死にたがってる姿はむしろ、生きようとあがいている姿のようにさえ思える。
もっと、これは色々に仕掛けがあるので、目の前で見てるものが確かものであるとはいえないのだけどね。
やっぱり、皆川博子はすごいです。
なんというか、退廃を描いていても、瑞々しいのがすごい。
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正直外国を舞台にした話は苦手(というかカタカナが多用されるのが苦手w)なのでどうしようかな、とも思ったが、前に読んだこの方の短編集の面白さを覚えていたので。
第二次大戦後のドイツが舞台となっていたせいで時代背景がわからず、カタカナも多く、第一章でまず一度読むのをやめようとして、でも読み続けて見ればなるほど、これは面白い。
構成自体が変わった形態をとっていたのもあとあと考えると震えるほどよくできていて、感動した。
前に短編を読んだ時同様、このひとの頭の中はどうなっているんだろうと思ってしまう。これだけ幻想的な、ある意味幻覚のような後味を残す小説は、すごい。
個人的にはアルトゥールとヨハンの関係、ヨハンとマティアスの関係、マティアスとツェツィリエの関係という3つの他の介在を許さないような深い関わり合いが好きだった。
しかし全く予備知識のない戦後のドイツの話に、まさかこれほど夢中になるとはなぁ。
作者のもつ知識量のおかげかもしれない。
■概略
第一次世界大戦に敗れたドイツ。
極端なインフレと共産主義との闘いで混迷するなか、退廃的な文化も爛熟を深めてゆく。
持とプロイセン貴族の士官で戦後はジゴロとして無為に生きるアルトゥール――彼を巡って紡がれた、視点の異なる6つの物語の中に、ナチス台頭直前の1920年代のドイツの幻影と現実が描かれる。
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再読。
錯綜する時間と、人の心。
一章、二章と読み進めるうちに、得体の知れない沼の中に入り込んでしまう感覚。
どれが現実で、どれが夢なのか分からなくなるのだ。
それでいて、第一次世界大戦前後の生々しくも凄惨な戦争や、庶民の日々の暮らしの描写は的確。
読者は当時のベルリンの倦みを孕んだ熱気に身を浸しながら、出てくる人物たちの愛と絶望に寄り沿う。
ここまで緻密に物語を組み立てる、その手腕にただただ感服。
すべての話の細部が、食み合うように絡み合い、一篇の豪奢な織物のような物語を紡ぎ上げている。
時代背景描写の重厚さ、人物描写の深遠さ、さらにはすべてが幻想とも取れる人物たちの喜怒哀楽の耽美さ。
みんな、誰かが誰かを熱烈に慕い、絡み合って果てていく。
その様は、意図的に繰り返される熱帯植物園の様子にも似ている。
淫らで、よじれて、闇が吹き出す。
ツェツィリエ切ねぇなあ~;;
アルトゥールが、あそこまでヨハンを恋い慕わなければ、これら絡み合った亜熱帯性植物の蔓のような呪縛は生まれなかったんでしょうかね……?
とはいえ、時代背景も細かく書かれているので、無垢な青年らが堕ちていくその様も納得できるところがスゴイのだ。
完璧です。
皆川先生、恐るべし。
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また違う雰囲気の話を読みたくなって。
六人の異なった視点から書かれた短編集……のように見えるけど、実は一人の青年を中心としたひとつの話、と言っていいと思う。
すごく幻想的ではあるんですけど、土台の物語がかっちり出来ているので破綻しないというか、その幻想に酔えなくても十分に楽しめる感じ。
この一話一話読み進むごとに、複雑だと思っていた(いや複雑なんですが)人間関係が見えてくる感じはさすがの一言です。
あと背景になっている1920年代のベルリンの描写が素晴らしい! やっぱり世界観て大事ですよね。
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登場人物一人一人に焦点を当てた章立て。短編+作者略歴で構成。
各章の情報・人物関係を自分の頭の中で少しずつ繋げていかないと主軸のストーリーがはっきり見えてこない。しかも、幻想と事実が入り混じったような部分が多くさらにやっかい。何度もページを戻りながら読みました。
さすが皆川さん、というような複雑な物語。
最後に解説者によって年表が作られているので解りやすい。
ヨハン・アイスラーは「薔薇密室」にも登場。
ユーデト&「刑吏の娘」は聖餐城から?それとも元ネタあるんでしょうか?
すべてツェツィリエの書いた「作品」。短編(太字)部分はフィクションも交じっている。
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ナチス台頭前夜の混乱のドイツ。複数の人物視点で語られる物語はよくありますが、こんなにも複雑に入り組んで、しかもミステリーかと錯覚するほど巧妙に仕組まれた構成は滅多にありません。読み進めるうちに、妙に抜け落ちた部分が見つかって嵌っていくパズルのような快感がありました。解説の「年表」が答え合わせともなり、親切です。やっぱり皆川さん、これも素晴らしかった。