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投稿者:穂高 - この投稿者のレビュー一覧を見る
鷺沢作品には、人生の一時期にしか経験できない青春を生きる様が自然に描かれている。描かれている世界は一見かっこいいけれども、登場人物達はそれぞれに悩みながら話は進む。でも作者はそれをとやかく言わない。ただそういう時期っていうものを透明(ピュア)な感覚で描く。
この本のテーマは「自分って何?」。それまで気にしなかった、気にしないでもすませられた「自分って何?」っていうことがあるとき自覚されて、得体の知れない不安となるんだよね。はっきりした答えはわからないけれども、漠然と未来にはその答えがありそう、だからなんとか折り合いをつけて大人になっていく、そういう展開の話が二編。
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「葉桜の日」と「果実の舟を川に流して」の二作。過去にどう向き合い、今をどう生きるか。二作に共通するテーマはこれだと僕は思った。「葉桜の日」では、自分の出生、いわば生まれ背負った宿命に対し、目をそむけながらも強気に生きる志賀さんが印象的だ。「果実〜」では、生きていく過程で生じたズレをどこかで引きずりながらも、陽気に生きようとする人達がたくましい。僕は過去を割り切って生きれるほど強いタイプではないので(笑)、この作品には非常に考えさせられる部分が多かった。それにしても、若くしてこれほど素晴らしい小説をお書きになった鷺沢さんはやはりすごいと改めて感じた。ご冥福をお祈りしたい。
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鷺沢さんの本。この作品は彼女が21歳、22歳のときに書いた短編が2作入っている。 解説で山田太一が言っているように、本当にすばらしい作家だ。若さを女性を感じさせない落ち着いたしっかりした作品。確かに。帰れぬ人々よりは微妙だが。でも、やっぱり落ち着いた素敵な小説を書く人だ。
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するする、と入っていけるんだけど、軽くないというか… 底辺の話だなと思います。この人の本、もっと読んでみたい。
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いいですねー。この人前、何読んだんだっけ。
割と昔の人なのに、時代も若さも性別も感じさせない、いい作家。
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鷺沢萠という夭折の作家のデビュー作。恐らく10代の頃の作品だと思うのだけれど、10代の女の子が書いたとは思えないほどの完成度。そして、信じられないほどの「静かな感性」。実は、彼女の作品では、この作品が一番好き。
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読始:2008,11,14
読了:2008,11,15
二編話が入ってるんですが共にさらっと読めてgood
表題の「葉桜の日」のラストはちょっと涙ぐむかも
両作品とも青春期の心の葛藤(というほど大袈裟ではないかもしれないが)、揺れ動く心情を匠に描いている
共に「僕は本当は誰なんだろう?」と自分の存在を問うのがテーマかなぁ
「葉桜の日」はまさにそれそのものがテーマ
「果実の舟を川に流して」は主人公の青年もそうだがそれを取り巻く人たちの様々な人生というかを描いきそれを通して何を思うかって感じかな
「海の鳥・空の魚」から読み始めた鷺沢恵さんの作品
これが一番よかったと思う
★3.4の★3で
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2作品入っている。
世間の暗い部分を切なく盛り込ませながら、それでも悲観的になりすぎていない部分に味がある。
私は、後半の「果実の船を川に流して」の方が好きだったが、前半の「葉桜の日」の「僕は、誰なんだ」と言うフレーズが非常に印象的だった。
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「葉桜の日」と「果実の舟を川に流して」の2作を収録。どちらも決して悪くはないけれども、例えば「ウェルカム・ホーム」だとかと比べるとやはり見劣りする感は否めない。個人的には「果実の舟を川に流して」のが好きでした。あのけだるい感じの雰囲気が好き。
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桜が散る頃になると、どうしてもこの小説のことを思い出してしまう。(鷺沢 萠さんが35歳で自殺してしまって、もうこの世にいないからかもしれないけれど・・・)
上智大学の学生だったころに「少年たちの終わらない夜」でデビュー。「帰れぬ人びと」「海の鳥・空の魚」「スタイリッシュ・キッズ」と続けて出版した後の、「葉桜の日」。これらのタイトルをみただけでも、いかに言葉のセンスのある人かわかりますでしょ?
「葉桜の日」には、「葉桜の日」のほかに、三島賞候補になった「果実の舟を川に流して」が入っています。この2作品の共通点は"親のいない"19、20歳の少年の眼を通して、普通の日本人やらサラリーマンには縁のない世界(もしかしたら底辺といってよいのかも)が描かれていること。
本作品以外で、泉鏡花賞受賞のほか、芥川賞候補に4度、野間文芸新人賞候補2度、なるほどの実力。
「果実の舟を川に流して」は彼女の最高傑作という人もいるほどの作品です。
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鷺沢さんが上智の学生のころに書かれた作品です。長老みさわさんのレビューを読んで読みたくなり手にとりました。私、鷺沢さんの作品はかなり読んでいるつもりだったのに、これは初読だったんですよ。しっかり後年のテーマが取り上げられていて、でも、ミステリー的要素も取り入れてある。登場人物たちの個性が立ち上がってくるところがうまいなぁ・・と感嘆しました。学生の書いたもので感動したのは、よしもとばななさんの「ムーンライトシャドウ」以来かなぁ。謎は謎で引っ張りながらもストンと解明、でも、その背景については読者に考える余地を与える・・・。改めて、惜しい人を亡くしたものだと思います。お綺麗な写真も載っていて、悲しかったです。
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短編二つ。表題作よりも「果実の舟を川に流して」の方がすきだった。
課題にあたって現代小説が読みたかったので借りた。最近全く読んでなかったから忘れ去ってたもんで…。選んだ理由は、現代作家には珍しく自殺したことを高校の国語便覧で見たのを覚えてたから。割と趣味が悪い。
表題作、在日二世外国人の悲哀。
果実~は順調に生きてきたエリートが、母が殺されることで転落して飲み屋で働く。道を外れた今とその仲間を受け入れながらも、密かに息づく「まとも」な人間への自負と嫉妬の描写が非常に鮮やか。主人公に、母が殺されたことについては仕方ない、というような諦めがあったのが印象的。
どちらの短編も個人にとっての国家の問題が絡んでいる。この人の根幹はここなのかな。
解説では女であることと若いことを武器にして語らないのは珍しいと。確かに…
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すごいなぁ。20歳や21歳で書いたとはとても思えない。10代で作家デビューして大きな賞を受賞する作家は今も昔もいるけれど、(読んでもいないのに言ってしまえば)著者の行動半径の5キロメートル以内位のよしなしごとを描いているものが多いと思う。社会の何がしかについてその著者の目線で描いたものが作品な訳だから、作品の内容が若々しくなるのはいわば当然のことなのだ。収録された2作品は、文庫解説の山田太一さんが原田宗典さんの言葉を引用して「肩の力が抜けている」と言わしめる、あるいみ「ろうたけた」風合いも感じられるほど。近年の作品の方がよっぽど若々しいかも。「ビューティフル・ネーム」や「ウェルカム・ホーム!」の根っこはデビュー当時から連綿と続いていたのですね。表題作「葉桜の日」は桜が六部咲きの頃から葉桜になるまでの数週間に主人公の身の回りに起こったことを綴った作品。主人公の青年はジョージと呼ばれながら“志賀さん”に育てられた両親のいない青年。“志賀さん”の秘書役だった明美さんの結婚式の帰り道から物語ははじまり、おじい、ロクさんと巡って、ジョージが自分の過去をなぞっていく話になり、葉桜の日に唐突に物語りは終わる。もう一編収録された「果実の舟を川に流して」は、横浜らしき町のバーに勤める健二とママ、そして常連の客たちを描く中で、ママの過去に触れる話。「私は誰?」「普通って何?」と問いかけながら「…人の生きていく方法や道はさまざまで、どれが最高ということはない。ただ、自分のめいっぱいに真実(ほんとう)で生きていればいい」というメッセージは最後の作品まで貫かれていたんだなぁ。
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<主な登場人物>
ジョージ…身寄りのいない、19歳。
志賀さん…ジョージの養母。女社長。
おやじ…志賀さんが父親のように慕う人物。
明美さん…かつてジョージと志賀さんと一緒に暮らしていた。
<あらすじ>
ジョージはずうっと志賀さんに拾われたと思っていた。
けれど、実は志賀さんが実母だった。
何故それなのに真実を言おうとしないのか?母の社会的な立場も影響していて…。
血の繋がりより、人としての繋がりを感じて―。
私の両親は、共に川崎の出身だ。
しかも作品で描かれている場所はまさに実家のすぐそばだと思われる位置にあり。
川崎という特殊な土地柄が志賀さんのような
人々を歴史的にみれば沢山いたことは事実だろう。
著者の作品は、著者の生い立ちからしてこういう人々のことは
書かずにはいられないのかもしれないが、やはり重苦しいものがある。
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言っても仕方ないこと、考えても仕方ないことは、生きていれば山ほどある。自分は何者なのか。若者特有の青臭い考えは葉桜のむせる若葉の季節によく似合う。
焦りや苛立ちを書かせたらピカイチの鷺沢萠が切り取る世界は、地続きで、バーのカウンターでたまたま隣り合わせた他人の身の上話に似た雰囲気がある。
当事者なのにどこか他人事。どうしようもない日々を生きていて、何が悪い。