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投稿者:テラちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
憧れの居酒屋チェーンに就職した健介は、本社で5年、基礎を学んだあと現場、即ち店長として配属される。が、ひどい現実にさらされて自殺。恋人の千秋は、彼の両親とともに社長の謝罪、死に至る経緯を求めて立ち上がる。実際にあった事件がヒントになっていることは参考文献からも分かるが、小説としても、直木賞作家らしくツボを押さえた筆力で読ませるし、泣かせもする。ただ、ラストシーンに向かっての展開は、矢張り難しいと、つくづく。
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20180328Mリクエスト
なんと辛い話。
自殺することがわかっていて、読み進めることはきつい。息苦しくなりながら、一気読み。
健ちゃんは、こんなレベルでは無い苦しさだったのでしょう。
外食産業、ブラック企業、自分に経験があるだけに、描かれている酷さが身にしみる。
村山由佳、本当にたくさんの引き出しのある作家さんですね。
恋愛系がひりつくほどいいと思ってましたが、こんな話も、グイグイ読ませる筆力。
次の作品も、楽しみです。
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過労自死。
その一言で思い浮かぶのはワタミの一件。そして、登場人物の一人がどうなっていくのかも、その言葉を目にした時点で想像はつきます。
なので、恋人同士のたまの休日デートのシーンが、とてもつらい。きらきらまぶしくて。その先に、確実に訪れる破局が、過労自死という出来事が。
なにより、そのきらきらしていると感じていた日常に、気づかないけれど、見過ごしてしまいがちだけど、着実に侵食してきているブラックの跡。
主人公の一人がそれに気づくのは、しらばっくれる企業相手に労災認定を勝ち取るための調査中。と同時に、ただただきらきらしてる、とだけ考えて読み進めていた自分も、同じだと気づく。
人は自分の見たいものしか見ない。
この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは関係ありません。
と書かれていますが、この作品を読んで何を思い浮かべるかは、いわずもがな。
夢も希望も人望もあり、真面目で責任感もある。そんな人ほど逃げ出せない呪い。そこから逃げ出す方法が自死でしかなかったというのはやるせない。
それでもまだ、「週休七日は幸せですか?」と言ってのける精神って、なにかね?そこだけ切り取った言葉なので、文脈はあるでしょうが。
なにかね?
『明日はきっといいぜ 未来はもっといいぜ』
文中に何度も引用される歌詞の一節。どんな気持ちで、歌って聞いていたのだろう。
希望の詩だったはず。将来を約束する詩だったはず。
それがいつの日か、重圧に聞こえていたんじゃあないだろうか。課せられるノルマのようになっていたんじゃないだろうか。呪いのようになっていたんじゃないだろうか。
「頑張って」「乗り越えられるよ」と、気楽に声をかけたのが、最後の言葉になってしまったことを悔やむように。根拠のない明るい言葉が、追い詰める原因になったんじゃないだろうか。
そんな後悔と罪悪感を拭い去ってくれるのが、ラストシーン。ありがとう。
明日が明るい日だと誰が決めたんだろう。
それでも、
明日はきっといいし、
未来もきっといい。
魂で行こうぜ。
風は西から吹いている。
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ブラック企業や過労死の問題はここ数年ずっと取り上げられてきているけどまああまり改善されているとは言い難い現実がある。読みながらとても辛かったし楽しめる小説ではないかもしれない。フィクションだけどノンフィクションとして受け取るべき内容だった。
わたしも一時期月100時間以上の残業を1年くらいしていて病みかけたことがあった。家にもなかなか帰れなかったりして、何もしてないのに勝手に涙が出てくるような状態になって初めて自分でヤバいと気付けて逃げたから良かったものの、そうなってもがんばってしまう人もいるのだろう。
死ぬくらいなら辞めればいい。確かにそうだけどそういう思考さえ働かなくなるくらいに病ませる企業に存在価値はない、って世論が動くにはまだかかるのか。
しかし村山先生の作風の幅には驚かされる。
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久しぶりに一気読みした小説。
続きが気になりどんどんページが進んだ。
村山由佳さんの文章だが、あまり作者が書いてこないパターンの小説だった。
その分村山由佳ファンとしては新鮮に読めた。
死においこまれていく描写は読んでてしんどいがページがどんどん進んでいった。
裁判に進んでいく描写も先の展開がどんどん気になるものだった。
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一気読みでした。読みやすいです。
つらいけど…
多々思うことあり。
今朝も過労自殺がニュースで取り上げられていた。恐らく身近にありうることなのかもしれない。 だから、
多くの人に読んでもらいたい本です。
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+++
大手居酒屋チェーン「山背」に就職し、繁盛店の店長となり、張り切って働いていた健介が、突然自ら命を絶ってしまった。大手食品メーカー「銀のさじ」に務める恋人の千秋は、自分を責めた――なぜ、彼の辛さを分かってあげられなかったのか。なぜ、彼からの「最後」の電話に心ない言葉を言ってしまったのか。悲しみにくれながらも、健介の自殺は「労災」ではないのか、その真相を突き止めることが健介のために、自分ができることではないか、と千秋は気づく。そして、やはり、息子の死の真相を知りたいと願う健介の両親と共に、大企業を相手に戦うことを誓う。小さな人間が秘めている「強さ」を描く、社会派エンターテインメント。
+++
過労死、ことに過労自殺に焦点を当てた物語である。現実に起こった出来事を下敷きにしているせいもあり、遺族の憤りや口惜しさがリアルに伝わってくる。過労自殺に至る以前の、健介と千秋の二人の関係が、あまりにもあたたかく、幸福に包まれて充実しているので、過重労働によるすれ違いや、気持ちのささくれ、実際に顔を合わせて話ができないことからくる誤解などがつぶさに見て取れて、胸が痛くなる。ずぶずぶとアリジゴクに囚われていくさまを、客観的に眺められるので、何度も押しとどめたい思いに駆られる。取り返しがつかなくなる前に何とかならなかったのか。誰しもがそう思うだろうが、本作を読む限り、それがものすごく難しいことも思い知らされ、愕然とさせられる。最終的には和解という決着に辿り着いたわけだが、それでも健介は戻ってこないのだということが、いっそうやりきれない思いにさせる。一気に読み進んだ一冊である。
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実際にあったブラック企業の過労自殺の問題をベースにしていることを承知の上で読み始めたのだが、健介が心身共に壊れていく姿が辛かった。後半は健介の名誉のために戦い続ける恋人千秋と健介の両親の強くて真っ直ぐな思いに心を打たれた。もし自分がこの立場だったら「山背」のような巨大ブラック企業相手に冷静に怒りの感情をコントロールしながら主張し続けることができるのだろうかと思うと全く自信がない。千秋の同僚や上司、健介の同期や店のバイトの子、弁護士などの協力が読者にとっても救いだった。被害者家族への風評被害などの描写がなかったが、実際はもっともっと大変な戦いであることは容易に想像できる。
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過労自殺の話。
現実にあるんでしょうね。
されど自殺して一番つらい思いをするのは遺族。
今働いてる会社は決して給料は高くないが休日もあり残業代もきちんといただいてるんでホワイトなんかな。
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特にここ1・2年、新作ごとにどんどん新しい引き出しを見せてくれる、村山由佳の最新刊は、恋人を過労自死で失った主人公の戦いの物語。
争いメインかと思いきや、恋人・健介が追い詰められて自ら死を選んでしまうまでにしっかりボリュームが取られていて、その分、主人公・千秋や両親の苦しさがリアルに伝わってきてしんどかったです。それとともに、ブラック企業・山背の腹の立つこと……!!腹わたが煮えくり返りながら一気読みです。
正直、協力者が多いのはちょっと都合が良過ぎるのではと思いましたが、これくらいのバランスでないと、辛すぎて読み切れなかったと思います。
奥田民生の曲と広島弁が利いてます。日曜劇場でドラマ化希望。
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カリスマ社長経営の大手居酒屋チェーンに努める健介。繁盛店の店長になるが、突然自殺する。きつい仕事。本部による吊るし上げ。ブラック企業。死の真相を知りたい恋人の千秋と健介の両親は大企業相手に戦う。前半は二人の関係、後半は、社長の謝罪を求め闘い抜く内容。カリスマといえども相手の身になり考えることができない、都合が悪いことは躱す、隠す、ブラックの実態、そしてその会社により心を壊されていく健介も丁寧に描いている。居酒屋側の対応には読んでて怒りばかりだけれど、最後で和解を申し入れる変化のところをもう少し詳しく書けていたらなあ。従業員であれ社長であれ管理職であれ働く人に読んで欲しい。健介のような方が身近にいたらうまく助言できるかとかも考えてしまいます。
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いやでも現実に起こった事件を連想してしまう。
読みどころは健介が自ら結論を出してしまう前半部分。経営陣に追い詰められていく健介の心理状態が克明に伝わり、読みながら動悸が止まらなくなる。
「あの会社は、いくらなんでも尽くし甲斐がなさ過ぎますよ。一生懸命になればなるほど、その気持ちをとことん利用されて、全部まとめて仇で返される感じがする」という麻紀のセリフに、ブラック企業の卑劣なやり口が集約されていると思う。
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フィクションなのに読んでて辛くなりました。
死を選ぶくらいなら辞めればいいのに…
誰もがそう思うでしょう。
しかし、人は追い詰められるとそんなシンプルなことさえ正しい判断が出来なくなるのかもしれません。
時間外労働だけに関わらず、理不尽な仕事をしている全ての人に読んでほしい本。
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これ、ワタミ、だよね?
労基に出す時点で、千秋ほどの優秀な方が弁護士にお願いすることを想定できないのは不思議。
最後、急展開で和解申し入れがあったのも不思議。千秋との、たったあれだけの会話で改心したの?
千秋が会社から圧力かけられたとき、それを軽くいなして終わり?現実なら、上司はもっと押さない?
…と、これらがマイナス1ポイント。
健介の過酷な勤務状況や「ドック入り」での生々しい会話などは、取材を重ねたんだろうな、と想像できる。
なにより、今、この時代のまん真ん中を小説にしてくれてありがとうございました!
おもしろかった!
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ブラック企業という言葉が定着して久しいですが、時折痛ましい事件が起きますね。過労で鬱になり自分から命を絶つ。昔であれば、ある程度の役職の中間管理職の人たちが主体だったような気がしますが、最近では新入社員や若手で発生しています。
落されて落されてやっとようやっと入れた企業なので、自分を追い込んで真面目に真面目に尽くしていった結果、逃げるのではなく命を絶つという最悪の展開になってしまうのでしょう。死ぬくらいなら辞めればというのは簡単。辞めたくなった時には両親や恋人や家族の顔が浮かびますよね、期待を裏切りたくない、ドロップアウトしたくないという心理はよく分かります。
この本では経営者に心酔して、愚直に頑張ってしまった若者が命を絶ちます。それを冷たく使い捨てにしようとする企業と、恋人、両親のタッグが見事粉砕する話です。そこまで話してしまっても構わない位最終的な着地点は読めています。でもそれでも、これでもかと精神的に痛め続けられる青年の姿が胸を刺し、くそったれな経営陣にいいようにされるところで胸が苦しくなります。
こんな思いをしている人たち沢山居るんだろうと思うと、この本の存在意義は大きいと思います。居酒屋や飲食店で働いている人たちにやさしくなれる事請け合いです。人間らしい扱いを受けられているように願うばかりです。
ちなみにずばりワタミモデルですので、ワタミと読み替えて読んでもいい位だと思います。