紙の本
読者の知らない新幹線の運転台
2014/08/17 21:37
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
以前、JR西日本の運転台から所定区間の運転について、実況中継のように記した新書があった。本書は東海道新幹線の東京、新大阪間を往復する際の様子、運転の様子を記述したものである。しかも、往路は0系新幹線、復路は最新のN700Aの運転台と、新旧取り混ぜての記述である。
0系はもう走っておらず、全てが消えてしまったが、昭和39年から走っている形式であった。一方でN700系はのぞみに代表される最新鋭の車両である。昭和39年から今年は50年を経ているわけで、信号系も運用系も様変わりして当然であろう。その対比がよくできており、大変興味深い新書である。
著者のにわあつしは、元東海道新幹線の運転士である。定年退職をした後、カメラを片手に写真家、レポーターとして活躍しているそうだ。それでも何といっても新幹線の元運転士が光る。東海道新幹線が走り始めてから今年で丁度50年である。半世紀も経ってしまった。0系のままではむしろおかしいのである。次々と技術的な課題を克服して、洗練された姿を見せて当然である。
それは往路、復路の描写を読めばすぐに分かる。乗客にとっては新幹線にどのような技術が使われているかは不可視である。しかし、当時の速度と現在を比較してみれば、保安技術にも相当の進歩が必要であろう。本書はそれを東京、新大阪を往復する際の運転台を通じて読者の前に明らかにしてくれる。
それにしても、流線型の車体は結構であるが、ペリカンのような車体はデザイン面から見ると、いかにも不格好である。あれは何とかならないのだろうか。欧州のように、機関車が牽引するのであれば、格好は機関車に依存するが、電車ならばもう少し全体のデザインに気を配るべきであろう。
もっとも、リニア車のようにスピードを追求した結果、デザインを工夫する余地がなくなるのも残念であるが、速度第一では仕方がなかろう。東京、新大阪間の運転台では、複数の運転士が乗務するので、運転士同士の会話の中に、運転士の勤務状況や、愚痴や不満なども聞けるかもしれない。
さすがに、元運転士だけあって運転台の描写の臨場感は満足のいくものであった。創業当時の車両と、最新の車両の比較も読者の知らないことが多い。鉄道ファンにとっては実に興味深い新書である。
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元運転士の著者が、新幹線の運転台に読者のあなたをご招待。
列車の運転士、添乗の運転士、車掌、ワゴンサービスのお姉さんなどなどいろんな人が運転台に登場し、楽しくしかし緻密に新幹線の運転が繰り広げられます。
東京から新大阪、行きは0系、帰りはN700Aで。車両の移り変わりだけでなく、会社や職場の雰囲気、運転という仕事そのものが時代によりどう変化してきたかも感じられる一冊。プロだから描ける展開、楽しめる一冊です。それにしてもやっぱりポッポ屋の会話のネタはいつの時代も変わらないなあ。
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新幹線の中で読みたかった。元運転士の著者が、新幹線の運転をしながら、運転技術、周りの景色、新幹線のこと、運転士たちのことを語る。私は鉄オタではない、が、プロフェッショナルな人の仕事の話は、知らないことも多く、何気なく接している鉄道の話なだけに、考えさせられる。これから新幹線に乗るとATCが効いているかどうか、運転士の腕が気にかかるだろう。
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鉄ちゃんではないけど、よく使う東海道新幹線のお話ってことでなんとなく気になって品川駅のブックエキスプレスで購入。
新幹線について知らないことって結構色々あるんだなぁ。
まず驚いたのが、実は月に一度は人身事故があるらしい。
在来線と違って気付いて停まっても2kmくらいは先に行ってしまう。なので当該列車は確認出来ないため、後続列車の運転士・車掌が行うらしい。確かに200km以上出てたら停まれないもんなぁ。
あと、京都〜新大阪の高架線は開業前に阪急に貸していたことがあるらしい。これもびっくり。
第1部と第2部で0系とN700系の運転席を紹介しているが、両者の間ではずいぶんと進化があったんだなぁと、当たり前だけど、感心。
ともあれ、雑学として面白かった。
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こんなに面白い本を鉄ちゃんだけに読ませておくのはもったいない。
元新幹線の運転士だった筆者が経験した新幹線の運転席からしか見ることのできない世界を、活き活きと、かつ素人にもわかりやすく、まるで実際に自分が運転士になってそこにいるような気分で読ませてくれる。
東京から新大阪への往路は元祖新幹線の0系に乗って、アナログ的運転感覚を楽しみ、そして新大阪から東京への復路は、新型のN700系にのって最新鋭の運転装置を経験させてくれる。
ゲーム”電車でGO!”でATC信号を受けてマスコンを動かしたことのある人なら、「ああ、あそこはこんなふうに動かしたら良かったんだと」わかるレベルの詳しさで、運転がわかったような気にさせてくれる。
もちろん、運転教本ではないので、運転席で交わされる雑談の形で電車の運転士業務、新幹線の運転士業務にまつわる小ネタもちりばめてあり、それがまた楽しい。
ぜひ、この本を持って東海道新幹線に乗ってみたい。そして、車窓の景色と照らし合わせて、運転士の気分になりたい。そして駅が近づいたら、こっそり「制限70」とかいいつつATCブレーキの効きを楽しんでみたい。
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元新幹線運転士が、あなたを運転台にご招待。まずは、35年前の東京駅から初代0系「ひかり」号で出発。懐かしのエピソードやウラ話を耳に傾けつつ、桜咲く東海道をご一緒に。往路は現在の新大阪駅より、最新型N700A「のぞみ」号で発信します。日本が誇るハイテク装備やプロフェッショナルから見た車両発達史など、初公開の話題も満載。どなた様も、お乗り遅れなさいませんように!(平成26年刊 文庫書き下ろし)
著者は、国鉄民営化直前まで、新幹線の運転士を勤めたという。退職後はライター。本書の0系部分は実体験を基に、700系部分は、取材を基に描かれているというが、元運転士ながらのリアリティーを感じる。まるで、新幹線を運転しているようで楽しい。また、業界人ならではの裏話も知ることが出来るのが嬉しい。
両者を比較すると、国鉄時代とJR時代では雰囲気が異なることに気づく。技術の進歩に伴い、合理化が進んでいるのを感じた。
鉄道ファンにオススメの1冊と言える。
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【Entertainment】東海道新幹線 運転席へようこそ/にわ あつし/20141012(77/251)
◆きっかけ
新幹線開業50周年の日経記事
◆感想
・元運転士の経験をとても活き活きと描写しており、とてもイメージが湧く。出来れば新幹線に乗車して読みたかった。残念ながらそれが叶わなかったので、近々是非乗車したい。
・50年という月日が長い。昔は運転士が二人一組だったし、車内セール嬢が運転席へ販売(?)しにきたり、熱海の花火大会を見る為に、東京から当地までは急ぎ、熱海駅ではノロノロ運転、その後名古屋まではスピードを上げ定時通り到着、等々、今からすると考えられない、おおらかな時代だったのだなと。
・新幹線そのものの技術が向上したこと、過密ダイヤであること、国鉄からJRへ、運転士が1人であること等々、効率化・合理化をしまくった点も0系とN700A系のギャップを通じて理解。その恩恵は時短という点で表れているが、その分得られなくなったものも多々あるのではないかと。
◆引用
なし
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新幹線の運転席では何が行はれてゐるのか、どのやうな勤務体系なのか、いかなるメムバアで構成されるのか、どんな会話がなされてゐるのか、わたくしども部外者が普段は知り得ないあれこれを、かつて東海道新幹線の運転士だつた著者が教へてくれる一冊であります。
まづ「新幹線の基礎知識」で、新幹線の歴史、しくみなどをコムパクトに講義してくれます。ご親切にも、興味がなければ飛ばしても良いと著者は述べますが、飛ばすのはもつたいない。短いしすぐ読めます。テツの人はご随意に。わたくしはテツではないのでしつかり目を通します。
その後いよいよ実際に運転する様子がドキュメント風に綴られるのでありますが、二部構成になつてゐます。
第1部は、「0系新幹線でゆく、東京-新大阪(昭和53年春の某日)」、第2部が「N700Aでゆく、新大阪-東京(平成25年春の某日)」であります。即ち、往路は最古参、復路は最新鋭の新幹線電車で我我読者を案内してくれるといふ訳ですな。
0系時代は、2名の乗務員が交代で運転。ゆとりがあります。更に便乗の乗務員もゐたりして、会話も弾むやうです。やつぱり人間ですからね、緊迫した精神状態を3時間10分も持続させるのは無理がありますからな。ワゴンサービスの女の子もやつてきて、中中賑やかであります。
読者のために、乗務員たちの若干不自然な会話の中で、色色なエピソオドを教へてくれます。子供たちへのサアビスで警笛を鳴らしたりとか、架線に凧が引つ掛かりやすいとか、マグロ(轢死体)への対応だとか、虫の死骸で前方の視界が悪くなるとか、花火大会をゆつくり見るためにその前後で時間をかせぐ運転士の話とか、直接運転士に苦情をぶつける乗客だとか、満員状態だとブレーキの効きが甘くなるとか、新幹線の線路を最初に走つたのは阪急電車であるとか、それはまあさまざまな話題を開陳するのです。
中でも事故、或は事故未遂に関する話はゾッとします。開業以来死亡事故を発生させてゐないなどと(正しくは三島駅で死亡事故が発生してゐる)喧伝してゐますが、一歩間違へれば大惨事...といふヒヤリハットは数多くあるのでした。
N700Aによる復路は、すでに著者が退社した後なので、現役運転士(望月氏)の視点から見た話になつてゐます。合理化による人員削減はこの世界にも及び、一人乗務は厳しさうです。しかし最新鋭のハイテク新幹線は、運転士も気分が良ささうであります。
そして読者も楽しい時間を共有でき、満足して本書を閉ぢるのでした。
http://genjigawa.blog.fc2.com/blog-entry-512.html
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自宅近くを走る東海道新幹線。昭和を代表する0系新幹線と平成を代表するN700Aの新幹線の運転席で繰り広げられるお話を対比するのが面白いです。「鉄」分に満ち溢れた本です。
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東海道新幹線は開業から50年間で約56億人が利用した。1日平均42万人が利用し、1日約400本が3分間隔で運行されている。これだけの安全性、時間的正確性、快適性を確保している乗り物は恐らく地球には他にないだろうし銀河系だって怪しいものだ。今更だがウイスキーでも傾けながら改めて新幹線の歴史を振り返ってみるのも悪くないでしょう。日本人てすごい!と誇らしくなること請け合い。きっと50年後にはリニア版が出版されているはず。僕は地球にはいないと思うけど。
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元・新幹線運転士による、東海道新幹線運転にまつわるよもやま話。往路は昭和50年代の0系、復路は最新型N700Aの運転台を舞台とした構成で、運転業務そのものへの興味もさることながら、往時と現在の環境の変化もうかがい知れて非常に面白いです。何せ、冒頭の運転台写真からして、0系には灰皿付いているんだから(驚)。
食堂車からコーヒーが運ばれてきたり、運輸指令に啖呵を切ったり、何より「ひかり」は2人乗務だった国鉄時代の新幹線。それに比べるとN700Aは運転室への入室を皮切りに何もかもがシステマティックだけど、30秒の遅れも許されない。なんとも世知辛いですが、新幹線に限らず、これが今の日本の世相なのでしょう。
でも多分、往時運転台で交わされていたのはこんなウンチク話ではなく、「今日、どこに飲みに行く?」なーんてたわいもない会話だったのでしょうねえ(笑)。
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自分が運転士になったような臨場感! 元新幹線運転士の著者の筆致が、私を運転台にいるような感覚にさせてくれた。0系では停止位置に止めるブレーキ操作にドキドキし、N700Aでは先行車の情報を得ながらマスコンのノッチ操作に気を配る煩わしさ。どちらも東京・新大阪間を下り・上りする情景を描くが、やはり0系に紙幅を割くのは著者の思い入れが強いからだろう。大阪万博に行くために0系に乗ったのが3歳くらいの時だったな~
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東海道新幹線は昭和39年に開業して以来50年、日本の大動脈を走ってきた。
新幹線も0系からN700Aという機種に変わり、速さや乗り心地、時間などが変わっている。
東海道新幹線元運転手の筆者が運転手時代にさかのぼり乗務したある日の東京から新大阪までを旅情や同乗運転手との会話を交え進めていく。
帰りは現代で0系を運転したことのある運転手と仮定して最新型に乗り新大阪から東京まで行く。
東海道新幹線の列車基礎知識も本文中で紹介がある。
東海道新幹線…実は僕は完乗したことがありません。
でも言えることは日本の大動脈。
その裏側でこんなことが起きているとは…
いまの新幹線に乗ってこの本を読むと一層面白いと思います。
新幹線の旅を楽しんでください。