魔術師の夜 上
著者 キャロル・オコンネル , 務台夏子
往年の名人もステージに立つ《マンハッタン・マジック・ホリデーズ》。伝説のマジシャン、マックス・キャンドルが遺した“失われたイリュージョン”が今、旧友オリバーによって演じら...
魔術師の夜 上
商品説明
往年の名人もステージに立つ《マンハッタン・マジック・ホリデーズ》。伝説のマジシャン、マックス・キャンドルが遺した“失われたイリュージョン”が今、旧友オリバーによって演じられようとしている。が、TVカメラと観客たちの前で、拘束された彼はクロスボウの矢に射抜かれた! マックスの従弟チャールズのもとに集う老マジシャンたちが胸に秘める第二次大戦下の出来事とは? その一人マラカイを狂気に駆り立てた、彼の妻ルイーザの死の真相は? マロリーを嘲笑うように、新たな罠を仕掛ける殺人鬼。つきまとうルイーザの幻影。いま直面しているのが彼女にとって最大の事件になるとは、マロリーはまだ知らない。
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キャシー・マロリーは、リスベット・サランデルを超えられるか?
2012/03/08 18:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:書子司 - この投稿者のレビュー一覧を見る
過酷な生い立ち、冷静で厳しく他人の思惑など歯牙にもかけない性格設定、ハッカーとして高い能力を持ちハッキングに罪の意識も持たず、調査対象の情報を集め自身の捜査に使う。良くも悪くも注目を集める見かけをしている……。と、主人公のキャシー・マロリーの人物像を書き出してくると…アレ!?なんか、どこかで見たような……。そう、ミレニアムの主人公リスベット・サランデルとなんかかぶっているような……。
シリーズ第1作「氷の天使」の登場時にはこれまでにないキャラクターで、新鮮な印象を持ったものだが、今回、本作の前に「ミレニアム2・3」を読んでしまうと、マロリーがリスベット・サランデルのカリカチュアにしか見えなかったのが残念。
物語は、伝説のマジシャンが残した“失われたイリュージョン”を、旧友が復活させて演じている途中、本当にクロスボウに射られてしまうことから始まる。事故と処理される中、マロリーだけが殺人と考え独断で捜査を始めるが、それは第2次世界大戦中のある女性の死と関わりがあり、その死も殺人の疑いが出てくる…。
というのだが、まず発端からして釈然としない。なぜマロリーは事故ではなく殺人と思ったのか。確かにそういう設定でないと物語が進まない、ということは理解できるが、読者としては「直感だから……」と語られても、納得できるものではないのだが……。さらに気になったのはハッキングの描写。単にデータベースに入って、などとされてもリアリティがいまいち伝わらない。確かに、ハッキングはストーリーに影響する部分ではないし、詳細に描写したからといって物語性が上がるわけではないのだが……。
さらに会話文では、ある場面ではクールそのものの語り口になっているのに、別の人物との会話ではごくごく普通の話し方になっていたりして、リアリティを損なっているよう感じられた。
巻末の解説には「第2次対戦の勇者たちにはさすがのマロリーも調子を狂わされて、普通の対応をしている」などと書かれていたが、「ミレニアム」における同じような状況での描写と比べるとその差は歴然で、地の文でのフォローでリスベット・サランデルのキャラクターをより際立たせていた。
リスベット・サランデルのキャラクター造形があまりに鮮烈で物語という世界の中でその存在感がリアルだったからだろうか、その言動にリアリティを感じられなかった。