- 販売開始日: 2018/10/18
- 出版社: 裳華房
- ISBN:978-4-7853-1571-9
具体例から学ぶ 多様体
著者 藤岡敦
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具体例から学ぶ 多様体
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商品説明
※この電子書籍は固定レイアウト型で配信されております。固定レイアウト型は文字だけを拡大することや、文字列のハイライト、検索、辞書の参照、引用などの機能が使用できません。
前半の第I部では、ユークリッド空間内の多様体となる図形を例に挙げながら、多様体の定義にいたるまでの背景を丁寧に述べた。後半の第II部では、多様体論に関する標準的な内容を一通り扱うとともに、やや発展的な内容である複素多様体・リーマン多様体・リー群・シンプレクティック多様体・ケーラー多様体・リー環についても、具体例を中心にあまり難しくならない程度に述べた。
◆本書の特徴◆
・全体のあらすじを見渡せるよう、冒頭に「本書に登場する多様体の具体例」と「全体の地図」を設けた。
・多様体を考える上で、微分積分・線形代数・集合と位相がどのように使われるのか丁寧に示した。また、群論・複素関数論に関する必要事項を本書の中で改めて述べた。
・ユークリッド空間内の曲線・曲面と一般の多様体との中間的な位置付けとなる径数付き部分多様体を解説し、一般的な多様体の定義にいたるまでのイメージをつかみやすくした。
・具体例を扱った例題や問題を解きながら読み進められるようにした。本文中の例題や章末の問題のすべてに詳細な解答を付けた。
目次
- 第I部 ユークリッド空間内の図形
- 1.数直線 R
- 2.複素数平面 C
- 3.単位円 S1
- 4.楕円 E
- 5.双曲線 H
- 6.単位球面 S2
- 7.固有2次曲面
- 第II部 多様体論の基礎
- 8.実射影空間 RPn
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具体から抽象へ, を意識した本
2020/03/24 17:03
6人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:類太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
実数論・位相空間論の復習から入るが, 既知のほうと思う. 群の入門も兼ねている.
同値関係と順序関係をまとめて二項関係の一種として定義しているのは違いがわかりやすいであろう.
複素平面Cの四則演算と両立するCの順序関係が存在しないことを示しているのは貴重である.
単位円S^1の章では立体射影の考えを強調し後の章にも自然につなげている. またS^1上の実数値連続関数が全射でも単射でもないことを周期性を使わず立体射影を用いて説明している.
図説がとても多く, 具体例を通して, 多様体の定義や様々な概念がゆったりと説明されている. 本書では豊富な具体例から多様体を学ぶことができる. 接束とその切断にも図説がある. 可換図式はイラスト付きなのはとても親切である.
座標変換については写像の制限を省略せずに厳密かつていねいに書いてある.
多様体の入門書では珍しく径数付き多様体を多様体の本論に入る直前に扱っており, 陰関数定理が局所的に多様体の例を与えることを明記している. これは非常によい工夫だと思う.
(体上の)線型空間の定義では加群の定義と重複しないようにするためか, 逆ベクトルの存在の代わりに「0a=0」を仮定している. これは
ベクトルx, yに対してx+z=yとなるベクトルzをyとxの差と定義しz=y−xと表す;
ベクトルaに対して, −a=(−1)a;
ベクトルx, yに対してy−x=y+(−x)
と定義すれば
0a=0 ⇒ a+(−a)=(1+(−1))a=0a=0
ゆえに−aはaの逆ベクトルとなる. また−aがaの逆ベクトルならば
0a=(1+(−1))a=a+(−a)=0
ゆえ「0a=0」と逆ベクトルの存在は上の定義をすれば同値となる. 体自身が本書の意味で線型空間であることの証明では逆ベクトルの存在を前提としており循環論法であるが, 著者の藤岡敦先生に尋ねたら, その通りであり線型代数を学んだ人を前提としている, との回答だった. また係数付き多様体については写像f:D→R^nとその像f(D)を同一視している. これから出る版では訂正されているだろうけど, 複素関数についての説明でローマンの定理(領域Dで連続な複素関数fがコーシー-リーマンの方程式を満たせばfはDで正則なこと)を紹介しているが連続性の仮定が抜けている.
とはいえ, 本書は具体例から学べるので多様体の理解が深まるいい本である. 数学は高度になると抽象論より具体例のほうがわかりにくいことがある. 既に多様体を学んだ人にもおすすめである.