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華族 近代日本貴族の虚像と実像
著者 著:小田部雄次
明治維新後、旧公卿・大名、維新功労者などから選ばれた華族。「皇室の藩屏」として、貴族院議員選出など多くの特権を享受した彼らは、近代日本の政治、経済、生活様式をリードした「...
華族 近代日本貴族の虚像と実像
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商品説明
明治維新後、旧公卿・大名、維新功労者などから選ばれた華族。「皇室の藩屏」として、貴族院議員選出など多くの特権を享受した彼らは、近代日本の政治、経済、生活様式をリードした「恵まれた」階級のはずだった。日清・日露戦争後、膨大な軍人や財界人を組み込み拡大を続けたが、多様な出自ゆえ基盤は脆く、敗戦とともに消滅する。本書は、七八年間に一〇一一家存在したその実像を明らかにする。巻末に詳細な「華族一覧」付き。
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紙の本
欧州の貴族と日本の貴族
2006/10/11 23:19
13人中、12人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:塩津計 - この投稿者のレビュー一覧を見る
欧州の貴族と日本の貴族はその成り立ちと性格が根本的に異なる。欧州の貴族は侍大将の成れの果てで、要するに軍事力で覇権を確立し財力を築いて何代にもわたって人々の上に君臨し続けた家系のことである。彼らの権威の基本は戦争に強いこと、喧嘩に強いことであり、それゆえ、彼らは武術に優れ率先して戦場で先頭に立った。何代にもわたる優秀なる遺伝子の掛け合わせの結果、欧州の貴族は平民に比べ背が高く体格もがっしりしていて本当に喧嘩に強そうな奴が多い。そして彼らは押しなべて教育に熱心である。欧州にはエリート校が数多くあるが、これは社会一般から人材を登用する装置というより貴族の子弟を立派な貴族に仕立て上げる階級の再生産装置といった趣が強いのである。対する日本の貴族は源実朝ではないが「紅旗征戎は我がことにあらず」と軍事に関わらないのを基本としていた。一般に日本では軍事力(武家)と権威(公家)と財力(商人)があたかも三権分立のごとくわけられていた。これは日本の社会を安定させたのかもしれないが、優れたリーダーを生むには適さない仕組みだったのではないか。日本の金持ちは子育てが下手だが、それにはこのあたり理由があると考えている。風流韻事にいそしみ軍事を軽蔑するような連中に社会を率いていくのは無理なのである。華族の多くがあっけなく没落していき、その痕跡は今や日本社会にはほとんど残っていないが、それを見て情けないと思うのは私だけではあるまい。なんとも情けない貴族を我々はもったものである。本書を読んで私はそう強く思った。
紙の本
興味深い記述がぎっしり詰まったお買い得本
2006/04/13 19:09
7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:越知 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近、皇室典範の改正、つまり皇位継承はあくまで男系でいくべきか、女系を認めるべきかという問題がマスコミを騒がせている。こういう議論が起こるのも、敗戦後に宮家を大幅に削減したり、華族制度を廃止したりしたことに原因の一端がある。なぜなら、皇位継承が男系で千年以上にわたって続いてきたのは、限られた数の皇族だけではなく、それを囲む宮家や、妃の供給源としての華族が存在したからであって、ほんの数家族の皇族だけを特権的な(なおかつ現代にあっては窮屈で制約の多いと感じられる)枠の中においておくのでは、皇位継承が短期間のうちに困難になるのは火を見るより明らかであったと言えるからだ。
無論、かつてのような実質的な特権を伴った華族を復活させろというのは時代錯誤であろう。しかし、ある種の伝統の維持や、倫理の師表としての貴族制度については、改めて考えてみる価値があると思われる。実際、ごりごりの保守派でなくとも、呉智英のように、革命が成就したら爵位を設立するべきだ、というような妙案(?)を公表している評論家もいるくらいだし、京都の冷泉家のように、名門意識故にこそ長い伝統保持に貢献してきた家系が実在することは、否定できない事実であるからだ。
前置きが長くなったが、明治以降の華族制度について1冊で分かる本が新書という入手しやすい形で上梓されたのは、時宜にかなったことと言えよう。小田部雄次氏の『華族』である。この本は、公侯伯子男の5段階の爵位が中国の『礼記』に起源を持つことや、江戸時代の公家と諸侯、および維新の功労者を中心とした叙爵の方法などから始まって、華族制度のあらましと歴史をきわめて分かりやすく説明してくれる。
華族というと文字通り華やかで贅沢な暮らしぶりを想像したくなるが、たしかに大富豪の華族も存在はしたものの、他方、貧乏で華族としての体面を維持できず、爵位を返上した華族もいて、その実態はかなり多様であったらしい。
軍隊と家族の関係も興味深い。西洋ではもともと貴族が率先して軍人となる伝統があり、近年ではフォークランド紛争時に英国軍艦に王子が乗り合わせていたのは有名な話だし、貴族制度がない米国でも軍経験者が大統領となる伝統が戦後しばらく続いたが、日本では華族に軍務が奨励されたものの、なかなかヨーロッパのようにはいかず、結局日清日露戦争で功労があった軍人に叙爵することで軍務のノブレス・オブリージュが実現したという記述を読むと、戦後日本の平和主義は案外、軟弱な公家系統の華族の伝統を受け継いでいるのかも知れない、などと想像したくなってしまうのだが、どんなものだろう。
また日韓併合によって大韓帝国の王族などが華族となったが、その詳しい実態については資料が十分ではなく、今なお不明の点が多いのだそうである。本書は、そうした制約の中で、しかし知られることが少ない朝鮮貴族についてもそれなりにページを割いていて貴重だ。
このほか、華族の令嬢や令夫人が雑誌の表紙に多く採用されたという、戦後マスコミの方向性にも通じる話や、戦後の華族制度廃止にあたっては米軍よりも国内での意向が強かったという指摘など、興味深い記述が次から次へと出てくる。しかも普通の新書本の2倍に相当する365ページという厚さでこの価格。お買い得と言うに躊躇しない本である。
紙の本
辞書的に使える
2020/11/15 15:38
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:In - この投稿者のレビュー一覧を見る
超国家主義というロクに定義のない言葉を使っている点や「創氏改名」の「創氏」と「改名」を混同して使っている点、近衛家が皇室から養子を貰って、そこから現在に至ることが書かれていない点など、マイナスの所もあるが、全体的には辞書的に使える