退職刑事1
著者 都筑道夫
かつては硬骨の刑事、今や恍惚の刑事になりかかった父親が、捜査一課の現職刑事である息子の家を頻々と訪れる。五人いる息子のうち、唯一同じ職業を選んだ末っ子から現場の匂いを感じ...
退職刑事1
商品説明
かつては硬骨の刑事、今や恍惚の刑事になりかかった父親が、捜査一課の現職刑事である息子の家を頻々と訪れる。五人いる息子のうち、唯一同じ職業を選んだ末っ子から現場の匂いを感じ取りたいのだろう。その息子が目下捜査中の事件について話を始めると、父親はあれこれと突っ込みを入れ、あげく真相を引き出してしまうのだった……。記念すべき第一作「写真うつりのよい女」をはじめ、推理の過程が秀逸な「ジャケット背広スーツ」など、七編を収録。国産の《安楽椅子探偵小説》定番中の定番として揺るぎない地位を占める、名シリーズ第一集。/【収録作】「写真うつりのよい女」/「妻妾同居」/「狂い小町」/「ジャケット背広スーツ」/「昨日の敵」/「理想的犯人像」/「壜づめの密室」/あとがき=都筑道夫/解説=法月綸太郎
目次
- 写真うつりのよい女
- 妻妾同居
- 狂い小町
- ジャケット背広スーツ
- 昨日の敵
- 理想的犯人像
- 壜づめの密室
- あとがき=都筑道夫
- 解説=法月綸太郎
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
小分け商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この商品の他ラインナップ
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
祝!復刊!!
2002/12/08 21:48
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ピエロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公は、書名のとおり定年退職をした元刑事。息子の現職の刑事のところにきては、いま関わっている事件のことを話させ、たちどころに真相を見つけ出してしまう。典型的な安楽椅子探偵ものの短編集です。
ページにして約40ページほどの短編が7作収録されていますが、どれもよくできていて、一見不可解な謎が著者の言うところの「論理のアクロバット」で、ものの見事に思ってもいないところに着地する。短編推理小説のお手本のようなものばかりが並んでいます。
が、この「論理のアクロバット」なるものがクセモノで、これをオオッ!と感心するか、強引・著者の一人よがりととるかで評価が変わってくるのではないでしょうか。私は大好きです。
著者の代表作に数えられているのですが、長いこと品切れ状態だったこのシリーズ、出版社は変わりましたが復刊されたこと、とてもうれしく思います。
有名でも絶賛されいても合わないものはあるのです。
2010/10/17 15:28
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミステリ作家として没後尚賞賛され続けている都筑道夫。名前だけは聞いていたけれど都筑作品を読むのはこれが初めて。ハジメマシテの作家さんだ。
本書のジャンルは安楽椅子探偵もの。捜査一課の現職刑事である息子の元を訪れた父親(退職刑事)が、息子から事件の概要を聞き出し、見事な推理で事件の真相を見抜くという短編集だ。
本書に収められている7編の初出はすべて1970年代前半のこと。昭和でいうと45年あたり――わたしが生まれる10年ほど前だ。作中に「地下鉄の初乗りが60円」というくだりが登場する。昭和生まれのわたしにも現実味のない貨幣価値である。
良くも悪くも昭和のかほりがぷんぷんする作品だった。登場する事件のどれもがいわゆる愛憎劇。決してどろどろに絡みに絡んだサスペンス…というわけではないのだけれど、なんだかなぁ…どうにもこうにも楽しめなかった。現代の感覚とは随分ずれているのだ。悪い言い方をすれば「古臭い」。
本書では事件の背後の設定を敢えて薄くしているように思える。都筑ミステリは純粋にトリックを楽しむ作品なのだろう。
そういう意味で、熱烈なミステリファンが大絶賛することは容易に理解できる。しかし…わたしはトリックに重きをおかない邪道なミステリ読みなので、やはりイマイチたのしめなかった。
大概の場合わたしは1冊読んでダメでももう数冊読んでみるようにしているのだけれど、都筑作品に関してはこれでもう、止めておくことにする。雰囲気や文章の癖などといった感覚的な問題ではなく、もっと本質的なところでわたしの好みとは外れているようだから。
でも一度は読んでみたかった著名なミステリ作家作品。これはこれでよかった!ということにする。
『退職刑事1』収録作品
・写真うつりのよい女
・妻妾同居
・狂い小町
・ジャケット背広スーツ
・昨日の敵
・理想的犯人像
・壜づめの密室
都筑道夫の安楽椅子探偵シリーズ
2020/06/11 21:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:honto好き - この投稿者のレビュー一覧を見る
退職刑事と息子の現職刑事の会話だけで事件の説明と推理が語られる純粋な安楽椅子探偵もの。
被害者と加害者の会話のちょっとした違和感から状況が反転する推理が展開される「写真うつりのよい女」、なぜ男は三着の上着を持っていたのかという謎が秀逸な「ジャケット上着スーツ」がおもしろかった。
難点は、聞き取ったデータから論理的に推理を組み立てるというよりは、データをもとに仮説を組み立てるだけに感じられ、著者が重視する「論理のアクロバット」とまではいえないのでは。というのは、論理の根拠がダブルミーニング一点に寄りかかているからだ。複数のデータの組み合わせにより、これしかないという理屈を構築するのが論理的な解決ではないのか。
まず謎の提示
2015/11/21 13:17
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のきなみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
がある。大概それは現役刑事である息子が持ってきてそれを退職した父親が聞いて解決する、というのがお約束の流れ。
息子が持ってくる謎はどれも摩訶不思議でだけどそれが解決されていくのはとても快感。
編集コメント
2002/10/18 20:49
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:東京創元社編集部 - この投稿者のレビュー一覧を見る
<安楽椅子>の名探偵は、古今東西いろいろな作品で活躍しています。創元推理文庫を見渡してみても、アイザック・アシモフ『黒後家蜘蛛の会』、バロネス・オルツィ『隅の老人の事件簿』、アガサ・クリスティ『ミス・マープルと十三の謎』、M・P・シール『プリンス・ザレスキーの事件簿』、ジェームズ・ヤッフェ『ママのクリスマス』、有栖川有栖『山伏地蔵坊の放浪』、黒崎緑『しゃべくり探偵』、天藤真『遠きに目ありて』……と枚挙にいとまがないくらいです。
今回創元推理文庫にお目見えとなった『退職刑事』は、<安楽椅子探偵小説>定番中の定番といっても過言ではないでしょう。
昔千里も今一里とか申しますが、どうしてどうして。元刑事の親父さんに、捜査一課の現職刑事である息子の五郎は時に相談を持ちかけ、時に口を滑らして、現在捜査している事件の話を始めます。ここかしこに突っ込みを入れながら聞いていた父親は、意表を衝いた着眼から事件の様相を一変させ、真相を提示してみせるのでした。
記念すべき第一作で、五郎は「わかりました。やっぱり、お父さんにはかなわない。降参ですよ」と頭を下げながら、内心「おだてておけば、おやじ、今後も役に立ちそうだ」と、してやったりの様子ですが、その後も親父さんの名推理に助けられること数知れず。硬骨の刑事だった親父さんにとっても、現在進行形の捜査話はこの上ない老化防止の妙薬なのかもしれません。高齢社会の前途に一条の光を投げかける可能性も秘めた(?)名シリーズなのです。