紙の本
なぜ、今、ミッテランなんだろう
2019/07/31 21:58
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投稿者:ふみちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ミッテランのフェルト帽が個性的な4人の人物に次々に渡っていく、うだつの上がらない会計士のダニエル・メルシエ、進展のない不倫を続ける作家志望で本屋志望のファニー・マルカン、才能を失ったように見える天才調香師のピエール・アスラン、そして名家の保守的な資産家のベルナール・ラヴァリエール、彼らがミッテランの帽子を手にしたとき全く違った人生が出現した。それにしても、なぜミッテランなのだろう、今のフランスはもう少しで極右の政治家が大統領になろうとしていたのに。フランス人は社会党の大統領を懐かしく思っているのだろうか。この小説には気取ったインテリが「私たちはテレビを見ないの」といって周りの人間より上だと勝手に思って優越感に浸るシーンが登場する。嫌な奴というのは万国共通のようだ
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帽子がつなぐ物語
2023/11/12 20:39
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投稿者:kisuke - この投稿者のレビュー一覧を見る
フランスのミッテラン大統領が忘れていった帽子を持って帰ってしまった男性が、それを機に変わり、人生が開けていく。帽子は次々と他の人の手に渡り、彼らに幸運をもたらしていく。
大人のためのおとぎ話ですが、実際有り得そうなところがとてもうまいな、と思いました。
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エピローグ
2022/02/03 17:31
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投稿者:owls - この投稿者のレビュー一覧を見る
評判が良いので読んでみました。帽子を手にとった人の人生がかわっていく様子にひきこまれました。最後のエピローグもいい!フランスの政治・文化にくわしければもっと楽しめたのでは、と思います。
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さらっと読めるフランス小説
歴代最高と言われるミッテラン大統領が、忘れてしまった帽子。それを手にする人全てを、幸せにする物語。
うだつの上がらない生活が、帽子を手に入れることで、少しの勇気と新しい世界を歓迎していく。
メッセージでもある、視点を少しを変えるだけで、良き方向へ進んでいくのが心地よい。
途出てくるワインや絵画が、実在しているので魅力的。ワイン好きなので、ブルゴーニュ産のプイィはぜひ飲んでみたい。
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80年代のパリを舞台にとった、往年のフランス映画を見ているような、小粋で洒落たコントになっている。近頃の小説は、どこの国のものを読んでも大差がなく、深刻で悲劇的、ネガティヴな印象を持つものが多い。時代が時代なので仕方がないこととは思うが、毎度毎度そんな話ばかり読んでいると気がくさくさしてくる。せめて本を読んでいるときくらい、クスッとしたり、元気を得たりしてみたいと思う、そんな人にお勧めの一篇。
ミッテランといえば、ある年代の人ならすぐ思い出すのが、元フランス大統領、フランソワ・ミッテランその人である。一度は選挙に破れるものの無事返り咲いて社会党政権を率いた世界のリーダーの一人だった。ルーブル美術館の前庭にガラスのピラミッドを作ったのも、新凱旋門を建てたのもミッテラン政権のときだった。これは、そのミッテランが大統領であった当時の物語。当然、帽子の持ち主のミッテランは大統領のことである。
昔話によく出てくる「呪宝」と呼ばれるものがある。樹々や鳥の話す声を聞くことができる「頭巾」(ききみみ頭巾)や、それを着ると姿が見えなくなる「蓑」(天狗の隠れ蓑)などがそうだ。力を持たない民衆のあこがれやはかない願望を託された、今ふうにいえば魔法のアイテム。この話の中では何の変哲もない黒いフェルトの帽子がそれにあたる。ただ一つ、それがそんじょそこらにある帽子とは帽子がちがう。裏の折り返しに金字でイニシャルが、F.M.と入れてある。ミッテラン大統領愛用の帽子である。
ブラッスリー、というのは元はザワークラウトなんぞをあてにビールを飲ませる店のことだったが、今では一流レストランやカフェも、ブラッスリーを名のる。予約を確認しているところから見て、この話に出てくるのは、かなり高級レストランだろう。なにしろ、隣の席で大統領が食事をしているというのだから。それにしても、SPもつけず、一般人と一緒に食事を楽しむとはさすがに左派の大統領だ。気さくさを宣伝する散歩に、SP で脇を固めるどこぞの首相とは大違いだ。
その大統領が店に置き忘れた帽子を手に入れたのが、ダニエル・メルシエ。ソジェテック社の社員である。人事問題でストレスを感じていた彼は新しい一歩を踏み出すためにこのブラッスリーを訪れ、この帽子に巡り会う。自分のもののような顔をして帽子を手にしたダニエルは意気揚々と我が家に帰る。その次の日からダニエルは人が変わったように会議で自分の意見を遠慮なく発表し始め、いつの間にかルーアン支社を任されるまでになる。
どうやら、この帽子はそれを手にする者の裡に秘められた潜在的な資質を表に出すため、背中をひと押しする役割を担っているようなのだ。ところが、ダニエルは大事な帽子をル・アーブル行きの列車の網棚に置き忘れてしまう。丁度降ってきた雨を除けるために、それを手にしたのがファニー・アルカン。本を読んだり書いたりするのが好きで作品を書きためている。現在は先行きの見えない既婚男性と不倫関係にある。
もうお分かりだと思うが、ファニーが帽子をかぶると、不倫相手は別の男のプレゼントだと勝手に思い込んで別れ話を始める。ファニーはファニーで��出て行った男に未練を感じることもなく、帽子と出会ってからの経緯を手持ちのノートに書きはじめる。やがてそれは一篇の小説となり、文学賞を受賞することになる。この調子で、帽子は次々とちがう人物の手に渡り、それぞれの人物の運命を変えてしまうことになる。
帽子を手にすることになるのは四人の人物で、あとの二人は香水の調香師と資産家のブルジョワである。天才的な調香師だったピエール・アスランはいくつかの名作を世に出したものの、ここのところは長いスランプに苦しんでいた。ところが、公園のベンチで二つの香水の薫りが混じりあった帽子を見つけてからは生活が一変する。道行く人の香水をあてるゲームもかつてのようにできるようになり、新作まで思いつく。
ブルジョア階級の夜会に退屈しきっていたヴェルナールは、ふだんなら聞き流していた会話にひっかかりを感じ、猛然と反論を始める。反動の人士が集まるその席では、大統領のことをミットランとわざと発音を替えてからかうのがならいだった。ところが、ブラッスリーでクロークが取り違えた帽子を渡されたヴェルナールは俄然ミッテラン擁護の論陣を張る。さらに翌朝、いつもなら右寄りのフィガロを買うのに、なんと左派のリベラシオンを買って帰る。
このヴェルナールの変貌ぶりが80年代フランスのブルジョア階級の暮らしと文化をカリカチュアライズしていて、アンディ・ウォーホルやバスキアまで登場するパーティーのドタバタ劇がとことん笑わせてくれる。さらに、アメリカのTVドラマ『ナイトライダー』まで登場するのはご愛敬だ。当時フランスではテレビのチャンネルが限られていて、特別なチャンネルに加入しないと見られない番組があったらしい。
エスプリがきいた軽いタッチで洒落のめしながらも、勢いのあった80年代フランスの人々の日常スケッチを通し、料理やワインの蘊蓄を傾けながらもさらりと流し、最後には水の都ヴェネチアのカフェ・フロリアンで、帽子が大統領のもとに帰るまでをノンシャランに描いていく。軽い気持ちで立ち寄った店で思わぬ拾い物をしたような気にさせてくれる上質のフランス製のコントである。
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ストーリーは、持ち主の変遷に伴い、幸運や不幸が舞い込んで来るという定型パターンの作品の亜種といった作品。
ただ、ぼく自身にワイン・香水・フランス料理などのフランス圏文化全般に関する深い造詣がないためか、特に面白い作品だとは思わなかった。
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アーティストや上流階級など、自分の知らない世界を見せてもらった。
おしゃれでさらっとしていて読みやすい。ちょっとしたきっかけから一歩踏み出せば自分の人生も変えられるかもしれないと、爽やかに背中を押してくれる本。
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フランス大統領のミッテランとブラッスリーで隣の席になった男は、ミッテランが忘れていった帽子を持ち帰ってしまう。その日から男の運が変わり、ヘッドハンティングされた。しかし幸運を運んできたミッテランの帽子を列車に忘れてしまう。次にその帽子を手にしたのは、恋人との密会に行く作家志望の女性だった。こうして、ミッテランの帽子は次々と人の手に渡っていくのだが、どの人にも新しい人生を開くきっかけを与えていく。
最後は、最初に帽子を持ち帰った男がミッテランの帽子を探し出すが、結局ミッテランに帽子を返しに行く。
帽子が繋ぐ人生の転機を迎えた人々。最後のオチもしゃれていてフランス文学らしさを感じる。
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ミッテラン大統領の帽子と、それを次々手にすることになった人たちのお話。心が温かくなった。最後の最後で意外なストーリーが出てきて、良い意味でやられた感。私はこういうお話し大好きです。
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パリのとあるブラッセリーにミッテラン大統領が置き忘れた帽子が運んだ幸せの話。
実在する人物とその持ち物をモチーフにしたフィクションが新鮮だった。
ミッテラン大統領はもちろん、80年代フランスの政治や社会、文化に関する知識があったらもっと楽しめそう。
ファニーとピエールのエピソードが好き。
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ミッテランの帽子を手に入れたことをきっかけにそれぞれ新たに進んでゆく人生。偶然の重なりではあるけれど、それが背中を押してくれたのだと思いたい。実在の人物や出来事を背景に気持ちよく動き、読後感が気持ちよかった。
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1980年代のフランスの社会の雰囲気が伝わってくる作品で、大人のお伽話といった感じ。たいへん面白かった。伝説の調香師や、元貴族達の上流階級の人達など、日本人としては馴染みのない登場人物の話が特に印象に残った。上流階級の人達の話を読んで、以前ちょっとフランスワインメーカー関連で仕事をした時に、この業界の人達には馴染めない、感覚が合わないと思ったのは、上流階級の人達が多かったせいだったんだなと思った。
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ミッテラン以外の登場人物も実在しているような感覚で読み進められた。高級な帽子をあつらえるとかフランス的で興味深い。元々の所持者のパワーを秘めた帽子が手に渡った人々の人生を後押ししていく。そんなアイテムが自分にも欲しくなる。ミッテランの名前自体は知っていたか人物をよく知らなかったので調べてみたら、なかなか波乱万丈な人物で。不倫で世間に袋叩きになる日本ではまず輩出されないタイプだと思う。
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手にすると不思議に自信がみなぎり、それまでのくすぶっていた生活に彩りを取り戻すことのできる大統領の帽子。
うっかり置き忘れ、意図的な決別、偶然の取り違えにより様々な人の手を渡っていく。
この手の大人の第六感ファンタジーで珍しい要素としては、帽子に執着し、追う者がいるということ。
たいていはあの力は何だったのだろうと余韻に浸るのが王道だろう。
ましてや。。。
最後のひねりはなかなかシュールで嫌いではない。
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登場人物が親しみをもてるキャラだし、価値観が変わる瞬間に立ち会えるのが嬉しい。
実際の歴史に合わせた時間軸というおまけもいい。