喪失を体験した人に
2019/06/16 22:06
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投稿者:MIC - この投稿者のレビュー一覧を見る
ひたすら白いものについて、エッセイ・・・というより詩に近い形で書かれていきます。
「死なないで、お願い」という言葉しか聞くことなしに亡くなった著者の姉。
白いものに、生と死を思い浮かべ続けます。
寂しさ、静かさ、悲しさ、でも透明な美しさ。
まるで、無声の白黒映画のカットを見続けているかのような感覚がします。
喪失感と、ずっとその先にある静けさ。
それは作者自身もまた持つものなのでしょう。
日本語訳も巧みなのですが、韓国語の原文の感覚は、もっと深いものがあるのだと想像します。
電子書籍で読んでしまいましたが、これは紙で読むべきでした。
雪の積もる日にでも、しんしんという静寂の音に包まれながら、独りでゆっくりと静かに。
白いものからの連想
2019/05/17 12:35
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投稿者:ぴむ太 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ハン・ガンのなかでは異色の作品。
ポーランドへ旅した語り手が、白いもののリストをつくり、ひとつひとつのモチーフから紡ぎだすように自身の家族にまつわる過去や、土地の記憶を想起していく。
詩的な文章で、短い断章を連ねるスタイル。
並べられた白いものたちは、誕生と死の物語を連想させる。
佐々木暁の装丁が、色と質のちがう白い紙を何種類も使っていてとてもきれいなので、紙の本を持っておきたい。
表紙のハングルは韓国語で「白」という意味。
白の中に浮かび上がる人生
2019/05/02 07:53
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投稿者:りー - この投稿者のレビュー一覧を見る
カニッツァ錯視という、無作為ないしは作為的に並べられた図象からありもしない輪郭を見出してしまうという目の錯覚がある。本書はまるでカニッツァ錯視の様に、白いものにまつわる散文詩を連ね、その断片からひとりの人物の…一人の人物の「喪失」を浮かび上がらせる様な不思議な小説である。一編一編を詩の様に愛しむもよし、輪郭の淡い全体像を思い描いて楽しむもよし、多面的な美しい言葉の集合体だった。電子で読んだのだけれど紙の本は紙の種類なんかにもこだわっているそうで、紙を扱う仕事をしている以上これは紙版も買わねばならん。
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
白いものをテーマにした短編作品集です。正直な感想としては、よくわからん。です。読み終ったあと、どういうこと?ってなった。
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透明で澄んでいて密度の濃い空気感の作品だなと思った。そして、美しい。読んでいるとその情景が浮かぶどころか、その中に引っ張り込まれる感じ。自分まで静まっていくようで、とても好きだと思った。韓国の方の作風としては少し意外に感じた。
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作家の母国語で「白い(ヒン)」は、生と死の寂しさをたたえた色であるという。ある年の夏をワルシャワで過ごした作家は、第二次大戦で破壊しつくされた白い石造りの建物の、その「白い」都市の運命と、生まれて2時間で息を引き取った姉の運命を重ね合せる。都市が人々の努力でみごと再生を果たしたように、姉の生もまた自らの生と体の内に蘇らせることができるのだと悟る。そしてすべての、白い(ヒン)ものたちのなかに姉の生を見出そうとする。祈る思いで…。
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大好物ハン・ガンです。 「白いもの」をテーマにした短い作品。彼女の体験を基にしたエッセイでもあるし、ときおり美しい詩のようにもなる。 産まれた二時間後に亡くなってしまい、顔も知らない自身の姉への思慕、「彼女が生きていたらきっと自分はこの世にいないんだ」という思いにもつながる死生観などが、静かに紡がれていく。姉を自分自身の中に憑依させるような感覚で、自分自身を漂白しようとしているようにも思えたり。 この人の文章は個人的に刺さりまくるので、もっと読みたかった。表紙もなんかかっこいいな。
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本の上のところがギザギザしてるのも好き。紙の色が違っていたり、文字の感じも所々違うのも好き。
ここに書いてあることばは死と記憶と、詩とアルバムのようだと思った。
美しい本でした。
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散文詩のようにも短編集のようにも見える形式だが、これは立派な長編小説。エピソードや独白の断片が時系列すら無作為と見える(実は精密な意図によって構成されている)順序で並べられるが、次第に主人公の全体像と心情と歴史が、むしろよほど明確に現われてくる。筆致はあるときは感情的にある時は冷徹に、死人のように綴っていくが、けしてセンチメンタルを煽ることなく、教条的ですらない。近いとしても谷川俊太郎ではなく、小川洋子ではなく、もちろんもっとも遠い相田みつをではない。
さらに今作は間違っても電子書籍などではなく、紙の本で読むべきだ。紙質を数種つかったその装丁は、当初タイトルを引用した「ベタ」作為的なあざとさをわずかながら感じたものだったが、グラデーションにするでもなく、章立てで変えることもなく、エピソードの無作為感そのままに何とも言えぬ表現を突き付けてくる。微妙な色合いとともにその手触りによる五感を使った読書が楽しめた。
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美しい本。これは電子本にはできない。
ザラザラとしたページ、すべすべとしたページ。
ページの色は白。いえ、生成り、白練り。
静謐という言葉が似合う本。
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登場人物のパーソナルな語りであるはずなのに、今ここに存在していない者や事へ思いを巡らせることで遥か彼方まで射程を延ばした物語になっていると感じました。言葉にするのが難しいものについて語っているのに、それが優しく詩情豊かに表現されていて凄い文学だと思います。
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白、白、白、白。
清らかで、どこか恐ろしさも内包し、無限に広がり、どこまでも無、そして美しい。
詩的な文と、写真。
しばし、白に取り込まれる。
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エッセーというより詩のような,あるいは「白いもの」に象徴される生まれてすぐに死んでしまった姉への哀悼歌のような佇まい.紙質を変えた装丁とか所々に挟まれた写真も静謐な印象を与える.素敵な本である.
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この本は電子書籍ではなく紙書籍で手に取るべき。5種類の白い紙で刷られている。韓国文学に馴染みが無かったが、これから馴染んでいきたいと思わせてくれる本だった。韓国人の精神性にもっと寄り添っていれば、この本に漂う詩情をもっと理解できたかもしれない。生まれて死んでいく人にまつわる白さについての断片的な言葉たちに引き込まれた。
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2019年4月27日図書館から借り出し。
やはりハン・ガンという人は小説家である前に詩人であることを再確認させられる素敵な本だった。
冒頭から「白いもの」について書こうとしたことを明らかにしてから書き始める。その「白いもの」は雪であったり、犬であったり、衣装であったりする。ソウルからワルシャワになったりと、おそらくは著者の実体験がそのまま読者のイメージを膨らまさてくれる言葉となって溢れてくる。残念ながら朝鮮(韓国)語ができないので、原書にあたることはできないが、斉藤真理子さんの日本語は柔らかくて、それでいて鋭い。
一番感心したのは用紙を変えて四層に別れた美しい造本と、Douglas Seoktという方の幻想的な写真、それに佐々木暁という方の装丁の丁寧な仕上げが、本としての完成度を高めている。
本好きにはたまらない一冊!